始まり15 『ディフォート・アヴァロン?』
お城の正面の空中に到着。窓から乗り出してあっちを見ている人が多い部屋を選び、風を纏って突進。
「うぎゃあ!」
「な、何!」
「いってぇ」
などの声がしたが無視。
「瑠奈!」
「お兄ちゃん!」
「何が起きている?」
ラッキーな事に、ここで話をしていたようだ。って事は。
「あの人が王妃様?」
「あ、ああ、そうだが。」
「初にお目にかかります。私が今回の勇者、神埼瑠奈で御座います。どうぞ以後お見知り置きを。」
「硬い挨拶などは後でいい。今は現状の把握などの方が大切であろう?」
フッ、この人はもしかしたらこの国で一番気を付けなければならない人かもしれないな。
「はい、では、現状を報告します。」
黒い化け物について話して行く内に殆どの人の顔が青ざめていった。
・ ・ ・
「というわけで、早くしないと町の被害は拡がる一方だと思われます。」
「皆さん?大丈夫ですか?」
何かやばそうだなぁ。とか思っていたら、王妃様の隣にいるお爺ちゃんが話し出した。
「それは、SS級に指定されている魔族、ディフォート・アヴァロンです。強大すぎる力とその敵味方関係なく攻撃する様な奴ですから魔族の幹部には成れませんが 力だけで言ったら幹部以上です。」
「質問いいですか?」
解らぬ時は質問するべきだよね。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥なんて言うもんね。
「どうぞ?」
「SS級って何ですか?」
「ああ、そうですよね、説明しなきゃですよね。冒険者ギルドは分かりますか?」
「まあ、一応は。」
「其処で定められた強さの基準です。F,E,D,C,B,A,S,SSと八段階に分かれています。SSランクの冒険者は世界で3人しかいないそうです。まあ、SSの上のSS+とかSSSが有るなんて噂もありますけどね。」
「なるほど、つまりあれは普通の人間じゃ倒せないと言う訳だな。」
「そう言う事になります。」
「私が行きます。」
「「え?」」
私とお兄ちゃんの声が重なる。
「あの怪物は町を壊し、人を殺しています。私が行かなければさらに人が死にます。私は、人が死んで行くのを黙って見ていられるほど強くありません。人を見捨てて生き残ってしまったら私は、死んだも同然です。手の届く所に有る命すら救えない、そんなの耐えられない。だから私は行きます。」
髪をクシャクシャと適当に掻いてみる。ああ、熱血で正義感を持ってる人だね相変わらず。あの時もそうだった。でもね、それはね・・・。
「本当に行くのか?」
「何を言われようと行きます。」
私の仕事だ。
「いや、駄目だよ。私が行く。」
「「?」」
「それは勇者として召喚された私の仕事だろう?」
「え?でも・・・。」
「賢者である貴方が死んだらどうやってこの国を支えて行くの?」
「いや、それは。」
「何を言っても無駄だよ。私が行くって言ったんだ。譲らないよ。」
「相変わらず頑固ね、貴方は。」
「そうかもしれない。」
そうだね、私は、頑固で、我侭で、駄目な子だ。だからこそ、自分で出来ることが有るなら・・・。
「お兄ちゃん。」
「なんだ?」
「この国の城には勇者専用の武器があるよね?」
「ああ、あるよ。」
「王妃様。」
「何だ?」
「その勇者の武器、貸していただけないでしょうか?」
「よい、それは元々勇者の為に創られた物じゃ。もって行くがよい。」
「有難う御座います。」
「んじゃ、ちょっと待ってろ。」
「分かった。」
ん?何か袖を引っ張られてる感じがする?
「お姉ちゃん。」
ああ、ルナか。
「なに?ルナ?」
「・・・行っちゃうの?」
「うん、行ってくるね。」
「・・・信じてる。」
「任せておきなさい。」
そして天馬を装備する。
「瑠奈、ほれっ。」
投げられた二振りの剣を空中で抜き放つ。
「オッケー。行ってきます。」
加速魔法と、特殊な魔法を自分に掛け、静かに浮かび上がり、空を蹴った。
空を蹴ると言うのは奇妙な感覚で、ゼリーを踏んだような感じだ。
先ほどの標的に近づく。
先ほどは気付か無かったがその黒い奴は黒い剣を持っていた。しかも、剣は2mは優に超している。そして、その剣を振りかぶった瞬間、其処に向けておもいっきり剣を振って生み出した衝撃波をぶつけた。すると、少し周囲が暗くなった気がするのは気のせいだろう。
どちらにせよ、こっちに気が向いたようだ。有り難いことで。
さて、こっから如何するかなぁ。