始まり14 『お買いもの!お買いもの!』
「くぁ~、よく寝た。」
朝起きてみると、時間はよく分からないが外が明るいという事で、かなりよく寝た気がする。ベットがふわふわな事も、熟睡に繋がったんだろう。
「おねーちゃん?おはよう?」
半疑問形で聞かれても・・・。
「おはよう。ルナ。よく寝れた?」
「うん。」
「さて、着替えようか。」
「私、服無いよ?」
「え?無いの?」
「うん。」
・・・困ったなぁ。このまま、皇女様の前に出す訳にもいかないしなぁ。私の服は大きいし・・・。
「よし、買いに行こう!」
「・・・え?」
「女の子はお洒落しなきゃ、駄目だよ~。」
そう言って首に付いている奴隷の証である首輪に触れ、魔力を無理やり流し込み破壊した。
「・・・?えっ!?」
「女の子が首輪なんて駄目!こっちにしなさいな。」
そう言って、鞄の底の方からネックレスを取り出した。
「・・・ありがとう。」
心なしか、嬉しそうな顔をしている。それだけであげて良かったと思った。
「じゃあ、次は服ね!」
そう言って自分の服を手早く着るとルナを連れ出す。そして、隣の部屋のドアを蹴破った。
「ルナの服を買ってくるから、先に皇女様に会っててね。」
「お、おう?」
「じゃ。」
まだ起きて直ぐだったらしく寝ぼけかけていた兄貴を置いてずんずん進む。後ろで兄貴が
「このドアどうすんだよ・・・。」
とか呟いていたがスルーで行こう。
・ ・ ・
「うーん、何処がいいかなぁ。」
外に出て色々な所を回ること三十分結局服屋と思われる店は五軒ほどあった。
「・・・何処でもいいよ?」
「そっか、んじゃ、ここにしよう。」
目の前の店。名前は・・・フルールかな?に入ることにした
・ ・ ・
「これは如何?」
「・・・うーん、ちょっと派手すぎないですか?」
「そっかぁ、何色が好き?」
「・・・黒か白?」
「地味ね。」
「・・・酷いです。」
「まあ、そう拗ねないで。」
今は店内にて服の物色中である。服は、動きやすい服を上下二つと、スカート一つ、ワンピースもどき(以下ワンピース)を二つ買う積もりである。しかし、1時間かけ、殆ど決まったので、後はワンピース一つと上着を一つである。
「あ、これは?」
「・・・いいですね。」
眼がキラキラしている。こういう時は女の子だなぁと心底思ったのは秘密だ。
「よし、後はワンピースか。」
「・・・わんぴーす?」
「いや、こっちの話。じゃ、行こ。」
「・・・うん。」
・ ・ ・
「くぁ、いい天気だねぇ。」
「・・・こんなにノンビリしてて良いの?」
「何で?」
「・・・え?」
「あ、あそこに小物屋発見!行くよ!」
「・・・。」
「あ、おじちゃん、この店のお勧めの小物は?」
「お?穣ちゃん誰かにプレゼントかい?」
「あの子にね。」
「あの黒服の子かい?」
「そだよ~。」
「ほれ、黒服の穣ちゃんもおいで!」
「・・・。」
私に擦り寄って来て、隣からルナも頭を出す。目はやっぱりキラキラしている。
「あ、おじちゃん、これ如何?」
「いや、こっちじゃないか?」
「いや、でもこれも良いね。」
「其れならこれなんてどうだ?」
おっちゃんがそう言って見せてくれたのは白い腕輪だった。I●の白●の待機状態みたいだ。
「お、良いねぇ。其れなら私とおそろだ。」
そう言って袖をまくり手首を見せる。其処には白い腕輪と対の様に真っ黒な腕輪があった。
「・・・黒い。」
「それだけじゃねぇぞ、こりゃあ。」
「そりゃそうですよ。」
「穣ちゃん何なんだ?それは?」
「教えないです。でも、その腕輪は貰った!」
「毎度あり!又来いよ!」
「うん!」
そう言って、お店を出て、又歩き出す。
・ ・ ・
「お腹すかない?」
「・・・それよりいいの?」
「何が?」
「お城。」
「あ、忘れてた。」
「・・・。」
いやぁ、真面目に忘れてた。
ズドォン!
「な、何?」
「・・・あっち?」
「ルナ、ここに居て。」
「・・・おねえちゃんは如何するの?」
「見てくるだけ。大丈夫よ。」
そうして自分に風の浮遊魔法を掛ける。そして、飛び上がるとすぐ、音の正体が分かった。
「何よあれ・・・。」
真っ黒な体をした人型の何かが暴れている。あれは絶対人じゃあない。でか過ぎる。3m以上はあるかな、見ただけだけど。しかも体自体が真っ黒で、鎧を着てる訳じゃあない。どっちかと言うと鱗の様な物が光を反射してキラキラ光っている。頭で目立つのは赤い眼球。それ以外は全く何も無い。鼻も、口も、眉毛も、髪の毛も無い。なのに人型をしている。薄気味悪いやつだ。
「急いで戻った方がいいね。」
そうして着地すると、ルナを抱きかかえた。
「ルナ!捕まっててね。」
「え?」
問答無用で飛び上がる。お城に向かって飛んで行こう。