始まり11 『誰?』
ちょっと長めになりました。
まあ、特に変わらないかもしれないですが・・・w
「まず、この国での言葉についてですね。一応言葉は通じているので、元の世界と同じ言葉、もしくは、この貰った記憶の中で言葉を自然に学んだか、二通りあります。私は後者の方が可能性は高いと思っています。そして、文字。これは本でも借りない事には分かりませんが、読めるんじゃないかと思います。これも言葉と同じ理由ですね。次は戦闘に関してですね。身体は相当強化されてますよ。走ってみて分かりました。魔法はテイル(ドラゴンテイルの略称)と同じで、<スペル>を組み合わせて作ります。でも、ここでは<エンシェントスペル>と言うのも在るらしいですから学んで見たい所ですね。じゃ、質問のある人。」
「特に無ーし。」
「大丈夫ですわ。」
「これ以上で知りたいことは?」
「はーい、質問。」
「なに?」
「ここはテイルの王国で間違い無いんだな?」
「それは現実でしょうね。」
「分かった。」
「はい、他にはー?」
誰も声を上げない。
「無いみたいだね。じゃ、説明終わり。」
重苦しい沈黙が部屋を包む。二人は真剣に考え事をしている。俺は説明が終わって暇だ。そして、この少女も暇そうだ・・・。えっ?
「うわっ!」
「如何したの?て、えっ!?」
「・・・。」
其処の一人!反応無しかい!
「え、えーと・・・。何時から居たの?」
「・・・さっきから。」
「うーん、ごめんね、名前聞いてもいいかな?」
「・・・ルナール、ルナでいい。」
其処には、先程助けた少女、ルナールが居た。
トントン
「ん?如何したの?」
ルナに肩を叩かれた。
「座っていい?」
「いいよ。好きなところに座って。」
そう言うとルナは俺、いや私か。の膝の上に乗ってきた。
「・・・。」
なんか身長の問題もあって、すっぽりと嵌った。何か悔しいけど、まあ気にせずに。丁度いい所にあった頭をついでに撫でてやってみる。
「そういえば、ルナは何でこの部屋に来たの?」
頭を撫でてもらうのがルナは好きなようだ。気持ち良さそうに眼を細めながら答えてくれた。
「・・・最初は女の人の部屋に居た。で、ここは何処?って聞いたらお城だって教えてくれた。で、何でここに居るの?って聞いたら襲われていた私を助けてくれた人が今はここに住んでいるからって言ってた。最後に、お礼を言いたいって言ったらこの部屋に連れて来てくれた。・・・あの・・・。」
「どうしたの?」
喋りやすいように頭を撫でるのは既に止めている。
「・・・有難う御座いました。」
「私たちは人として当然の事をしたと思っているの。まあ、私たちの勝手とはいえ、だから、良いのよ、お礼なんて。」
「・・・でも。」
「じゃあさ、もっと私達の役に立つ事をして貰おうよ。」
私の提案、ナイスじゃん!
「・・・役に立つこと?」
「そう!私たちの質問にちょっと答えてくれれば良いよ。」
「・・・分かった。」
しかし、この子ってこんなに無口だったっけ?
「君の耳に付いてるそれって何?」
あ、そういえばそうだ。
「・・・これは私が獣人族の末裔である証拠。」
「獣人族かぁ~。」
「・・・そう。虎型だから猫みたいってよく言われる。」
「何で黒いのですか?」
「何が?」
「ほら、ルナちゃんの耳、黒くありませんか?」
「そう言えばそうだなぁ。」
「・・・これは・・・。」
「言いたく無いんなら言わなくて良いよ。」
「・・・いや、貴方達なら・・・。」
少しの間の静寂。
「・・・私のお母さんは獣人でした。」
彼女が静かに語りだした。
「・・・お母さんが暮らしていたのは獣人の村の中でも端の方に位置する森の中でした。そして、そんな所に篭った理由は、お母さんは元最強の12冒険者呼ばれた内の1人、アリー・フェルアで、もう騒がしいのはいやなの。と言っていてからだと思う。」
「ツッ!まさか、この世界であいつが母親をやっている?いや、結婚システムはゲーム内のシステムに有ったかも知れない。うん。確かあった。」
「・・・どうしたの?」
「いや、後で説明してあげるから、まずは全部話してくれ。」
「・・・分かった。・・・ある日、お母さんの住んでいた家の近くの色々なものが急に騒ぎ始めた。その根源を探すために森の奥に行って見たら、其処には男の人が血まみれで倒れていた。それが私のお父さん。その人を家まで連れて帰って、看病したんだって。でもね、お父さんは・・・魔族だったの。でもね、お父さんは、人間と魔族と亜人種が共存する世界を目指していたんだ。でも二人とも居なくなっちゃったんだ。だから二人を追って旅に出たの。でも。すぐに捕まって、奴隷として売られてしまったの。これでお仕舞い。」
・・・何ともまぁ変な巡り会わせだ。
「・・・お母さんについて何か知っているの?」
「・・・。前の世界では知り合いだった。私と桃香とお兄ちゃんと、あの人と、もう一人、龍人族のエルア・スロイル。この5人は同じギルドのメンバーで、私の名前はライル・エルトラスだった。」
「・・・!貴方がライル・・・。天秤宮のライルなの?」
「その呼び方馴れないんだけどなぁ。」
「・・・じゃあ二人は?」
「俺はアルザック・シュトローゼ。」
「私はエイル・スタージュン。」
「・・・獅子宮のアルザックに白羊宮のエイル、そして天秤宮のライル、天蝎宮のエルア。そして、処女宮と呼ばれたお母さん。その5人のギルドってもしかして・・・。」
「竜の牙だよ。」
「・・・まさかこんなところで会うとは思っても居なかった。」
「まさかあいつの子に出会うとは私たちも想定外だったよ。」
「・・・お母さんってどんな人だった?」
あいつか・・・あいつは・・・
「元気の塊のような奴だと最初は思ってた。」
「でも、あの方は。」
「誰よりも仲間思いの優しい人だった。そして。」
「「「アホだった」」」
「・・・。」
ごめんね、あいつがアホなのは否定しようの無い事実なんだ。
「・・・そっか、私もお母さんのようになりたい。」
「なれるさ、君なら。」
こうして夜は更けていくはずだった。