始まり9 『クソッタレ!女だと!ふざけるなぁ!』
「う、うぅ~ん。」
「あ、起きた?」
この子の顔を覗き込む宗也先輩。軽く不審者に見えるのは俺だけだろうか?
「むぅ、ここは?ってうわっ!」
いきなり飛び退かなくてもよくない?おかげで腕が痛いんだが。
「御前ら、誰だ!」
覚えてねぇのかよ!
「怖がらなくて良いのよ。」
「あ、あの時のおねぇちゃん。と、女の人。」
「俺は男だ!」
「如何したの~。」
相変わらずマイペースな・・・。
「あのね、この子がライ君を男だと認めないのよね。」
「女だと言い続けていると。」
「そういう事になるわ。」
「「え?違うの?」」
お~いもう一人ぃ~。
「あれ?奈菜さんに話してな「いいえ、すいませんね、本当はこいつ女なのに見栄を張って男の振りをしていたんですよ。全く、こいつもつまらない見栄を張るもんです。しかし純粋な少女と聡明な方には敵いませんね。」・・・。」
おい、この兄貴は何をほざいてんだ?
「ああ、良かった。」
「如何してですか?」
「いえ、この雷斗様、で宜しいんですよね?」
「何で知っているんですか?」
「いえ、話を聞いていて何と無く。」
「なるほど。いえ、ばれてしまったんだ本名を言いましょう。こいつは神埼瑠奈って言うんですよ。改めてお願いします。」
「おいっ!何いっ、フガッ!」
口を塞がれてしまった。しかも桃香先輩に・・・。裏切られた!
「では瑠奈様で。・・・瑠奈様の部屋には女物しか用意して無いんですよ。」
「何がですか?」
開放されたため、口を挟んでみる。
「衣服等、その他諸々です。」
「・・・。」
「有難う御座います。其処までして頂いて。」
「嘘付いちゃ駄目なんだよ~。」
黙れ。其処に居るちっこいの!何が言いたい!
「やっぱり女だったじゃないかぁ。」
・・・。
「じゃあ、とりあえずお部屋まで案内してもらって宜しいですか?」
「はい。其れではこっちです。」
後で覚えとけ!
・ ・ ・
「ここが瑠奈様のお部屋です。右隣が宗谷様、左隣が桃香様のお部屋となっております。何か困ったことが有ったらここの廊下を真っ直ぐ行った突き当りが私の部屋なので其処まで来てください。」
・・・、突き当りが見えないってどういう事?というかここまで来るのに歩いた道程すら覚えられないんですが・・・。
「見えねぇ・・・。」
桃香先輩も同じ事を思っているはずだ。どんだけ広いんだよ!この王宮は!
「あ、そういえば、ファミール様と王妃様が後で会いたいと仰っていましたが如何しますか?」
「う~ん。明日で良いですか?」
「分かりました今日の食事などは部屋に持って来ますね。」
「有難う御座います何から何まで。」
「いえいえ。では、また後で。」
・ ・ ・
「うわ~。広すぎる~。」
俺は自分の部屋に在ったベットにダイブしていた。
「しかしこのベットふわふわで気持ちいいなぁ。」
このベット、ここまで文化の水準が低い国でよく作れたな。と思った。勇者の記憶から拾った物の中でこの国の文化の水準についてもあったのを思い出しての考えだった。
「うわぁ。ほんとに女物しかないよ。」
ベットでゴロゴロしていて目に付いたクローゼットもどき(クローゼットに似ているが形や装飾、取っ手の感じから少し違うと判断した。)を開けて見ると、其処には、この国での標準的な女物の服、煌びやかなドレスみたいなもの、冒険者用の動きやすい服など多種多様だった。
「しかし、今考えるとよくこの格好で居られるなぁ。」
今俺が着ているのは学ランだった。因みに兄貴も同じく学ラン。桃香先輩はセーラー服だった。今時こんな格好をしなければならない様な学校は珍しいため、この世界に来る前も同じような視線に晒され続けていた為に慣れてしまっていて、こっちにとんで来てからもこの格好で居続けたのだ。
「しょうがない。んじゃ、着替えておくか。」
そう言って標準的な女物の服と、下の方にあったサラシを手に取り、とりあえず着てみる。サラシを付けてみたのは何となく気分的なものだ。ん?変態とか思った人手、挙げろ。今すぐ撃ち殺す!
「自分で見ても違和感が無いから怖いな。」
この国で鏡と同じ用途で使われている魔境石を見ながら呟いて、袖を持ちくるくる回って見たりした。
そんな感じの事をしてみて、また布団にダイブして10分(体内時計)程度過ぎた時にドアをノックする音がした。
「どうぞ。」
入ってきたのは何時もの二人だった。