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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

婚約破棄された瞬間に世界をBL化するコントローラーを拾った令嬢の話

掲載日:2026/05/20

王家が主催する夜会。きらびやかな照明の下、集まった高位貴族たちの話し声やオーケストラの演奏が会場に響き渡っていた。


その中心で、私の婚約者であるカルマ殿下は、男爵令嬢のミルマの体にべったりと身を寄せていた


殿下は周囲の視線など気にする様子もなく、ミルマの腰に手を回して楽しげに笑っている。


「ああ、ミルマ、本当に可愛いな。この可憐な薔薇に比べ、あそこにいるミソラはどうだ? 地味で無愛想で、まったく可愛げがない。いつもあんな仏頂面で立っているのだから、見ているだけでこちらの気分まで冷めてしまうよ」


「まあ、カルマ様ったら。ミソラ様がお可哀想ですわ。でも、私はカルマ様のおそばにいられれば、それだけで幸せです。うふふ」


ミルマはか弱い悲劇のヒロインを演じて、殿下の胸にすり寄っていた。


カルマ殿下は完全に鼻の下を伸ばし、彼女がわざとやっている嘘の演技に、まったく気づいていない様子だった。


私はそれを少し離れた場所から、冷めた目で見つめていた。


きらびやかな夜会の喧騒も、二人の見苦しい姿も、私の心を動かすことはない。


(また始まった。あの男の身勝手さには、もう付き合いきれない。どうぞお好きなように)


心の底から呆れ果てていた私は、早くこの退屈なパーティーが終わってくれないかと願うばかりだった。


すると突然、オーケストラの演奏が止まり、カルマ殿下が急に私をビシッと指差し、大声で告げた。


「ミソラ・セレイユ! お前との婚約を破棄する! 私はミルマと真実の愛を見つけたのだ!」


騒がしかった会場が、一瞬でシーンと静まり返る。


集まった貴族たちの好奇の視線が一斉に私へと突き刺さるが、私は表情を一切変えず、ただ一言だけ返した。



「――承知いたしました」



その瞬間だった。

『ピキィィィン』と耳を突き刺すような電子音が頭の中に響き、周囲の景色が完全に止まった。


大声を張り上げたままのカルマ殿下も、勝ち誇った顔のミルマも、ひそひそ話をしようと口を開けた周囲の貴族たちも、全員が彫刻のようにその場で静止している。


その時、私の目の前に怪しげな光の画面ウィンドウが浮かび上がった。



『乙女ゲーム「オトメン」のトゥルーエンドを確認。世界をBLに発展させますか?』



      【はい】  【いいえ】



意味が分からない。

それと同時に、私のドレスの隠しポケットに、妙にずっしりとした重みが生まれた。取り出してみると、それは赤と白のプラスチックでできた、長方形の妙な箱だった。


十字の形をした黒い突起と、丸くて赤いふたつのボタンがついている。


私は試しに、その十字の突起を指でカチカチと動かしてみた。手元の動きに合わせて、目の前の画面にある【はい】と【いいえ】の枠が交互に光る。


(なるほど、これで選ぶのね)


仕組みを理解した私は、【はい】を選択し、赤いボタンを一つ押し込んだ。


心地よい音が響き、止まっていた世界が再び動き出す。





カルマ殿下は私に向かって、さらに意地悪な言葉を浴びせようと口を開いた。


「お前のような可愛げのない女は、今すぐこの国から追い出して――」


その時、私の手元にある箱の上方、何もない空間に新たな文字が浮き出た。



【選択肢:①ミソラに塩を振る ②隣にいる親友のレオ公爵子息の手を握り締めて愛を告白する】



周囲の貴族たちは、これから始まるであろう婚約破棄の激しい言い争いに注目していた。


私は堂々とその箱を構え、②を選択してボタンを押した。


すると突然、カルマ殿下の様子が明らかにおかしくなった。


ビクンと大きく体が跳ね上がり、顔を真っ赤にして冷や汗を流し始めたのだ。


殿下は必死に自分の体を止めようと力んでいるようだったが、その抵抗は虚しく打ち破られた。


そのまま殿下の右手がガタガタと激しく震え出し、隣に直立していた親友のレオ様の手を、両手で思いきりギュッと握りしめた。


「――で……殿下? 一体何を……」


困惑するレオ様の顔が、みるみるうちに赤くなっていく。


そして、殿下の口が勝手に動き出した。


「お、お前のその冷たい瞳、ゾクゾクするほど愛おしい……! 私と結婚してくれ、レオーーっ!!」


「えっ! 殿下、ついに私を受け入れてくださるのですか!?」


レオ様の目が、ものすごい熱量で輝いた。


彼は殿下の行動を見て、ついに想いが通じ合えたのだと完全に勘違いしたらしい。


「身分の壁や周囲の目があったため手を出せませんでしたが、私はずっと殿下のその美しいお顔をお慕い申し上げておりました! まさか両思いだったなんて、夢のようです!」


とんでもない告白が飛び出し、周囲の貴族たちが一斉にざわめき始める。


カルマ殿下の目が恐怖に涙ぐんでいるけれど、レオ様は完全に舞い上がって殿下の手を引き寄せていた。


貴族たちは私への関心を完全に失い、目の前で始まった予想外の男同士の騒動に釘付けになっていく。


「カ、カルマ様!? 何を仰るのですか!」


ミルマ男爵令嬢が、あまりの展開に焦って殿下の左腕にしがみついた。


すると、私の手元の箱が再びピカリと光る。



【選択肢:①ミルマを抱きしめる ②背後に控える、むさ苦しい「騎士団長」の胸にダイブする】



私は②を選択してボタンを押した。


「ミルマ、私はお前を――ぎゃあああああ!?」


カルマ殿下の体が、恐ろしい速度で後方へと弾け飛んだ。


しがみついていたミルマを力任せに振り払い、後ろに立っていた筋骨隆々の騎士団長に向かって、ものすごい勢いで頭から飛び込んだのだ。


体と体が激しくぶつかる凄まじい音が周囲に轟く。


「お、俺の愛を受け止めてくれ、騎士団長ぉぉぉ!」


殿下の絶叫が会場に響き渡る。

がっしりと殿下をキャッチした騎士団長は、顔を真っ赤に染めて感動に震えていた。


「殿下……! やはり貴方も、私のこの強靭な肉体を求めてくださっていたのですね! 私もずっと、そのお美しいお顔を我が物にしたくて我慢の限界だったのです! 今日という日をどれほど待ちわびたか!」


騎士団長までとんでもない本音を叫び出し、完全にスイッチが入ってしまったようだった。


さっきまでイチャイチャしていたミルマは、あまりの光景に顔を引きつらせて数歩後退した。


周囲の貴族たちも、目の前で繰り広げられるあまりにも異常な修羅場に、ただただ声も出せずに絶句している。


扇子を落とす令嬢や、グラスを落とす夜会の出席者など、会場内は声の出ない大パニックに包まれていた。


カルマ殿下は騎士団長の太い腕に抱かれながら、どうすることもできずに絶望の涙を流していた。


男たちに囲まれて完全に身動きが取れなくなった殿下が、縋るような目をこちらに向けてくる。



【選択肢:①正気に戻る ②「お前実は男だろ!?」と叫んでミルマのドレスを剥ぎ取る】



『カチッ』



一際光りだす選択肢を、私は迷わず選んだ。


「う、うわあああ! お前、実は男だろぉぉ!!」


殿下は騎士団長を突き飛ばし、狂ったようにミルマへ突撃した。


さらに、その美しいドレスを掴み、豪快に引っぺがした。



『ビリビリビリーーーッ!!』



派手な音を立てて裂けたドレスが、床に虚しく落ちる。


ドレスの下から現れたのは、令嬢の細腕とはまったく異なる、見事な細マッチョ体型の美少年の肉体だった。


胸パッドが床に虚しく転がる。これには、周囲の貴族たちも、開いた口が塞がらなかった。


そして、私は『フッ…』と冷ややかな笑みを浮かべる。


会場のあちこちで「男だったのか!?」「嘘だろ……」という驚愕の叫びが沸き起こり、いよいよ夜会会場は完全な大混乱に陥った。



「あら、バラされちゃった☆」



ミルマはテヘッと可愛くウインクした。


正体がバレても全く動じていない様子で、太い男の声で楽しそうに続けた。


「元々はカルマ殿下のお金目当てで近づいたんですけど、殿下が男色ならボクにもチャンスがありますね! これからは男同士、遠慮なく愛し合いましょう!」


その言葉を聞いたカルマ殿下は、ショックのあまり白目をむいた。





カルマ殿下は最後まで、これが私の手にある妙な箱の仕業だとは気づかなかった。


ただの恐ろしい呪いだと思い込んでいる。極限の恐怖と絶望の中、殿下は床を這いずり、冷ややかに箱を構える私を見上げて、泣き叫びながら縋りついてきた。


「ミソラ! ミソラ・セレイユ! 許してくれ、頼む! 助けてくれ! 私は呪われているんだ! 実は……実は私は、お前がずっと好きだったんだーーーっ!」


醜く涙と鼻水に塗れ、婚約を破棄したはずの私に必死に手を伸ばすカルマ殿下。


私は、手元にある箱の横についていた小さなスイッチを、パチッと静かに元の位置に戻した。


光っていた画面が消滅する。



「お幸せに、殿下」


「さあカルマ様。私たちの愛の巣へ行きましょう」「もう離しませんぞ、殿下」

「カルマ様ぁ、ボクもいまーす☆」


殿下から求められたと信じて疑わない公爵令息、騎士団長、そしてミルマ(男)の3人が、カルマ殿下をガッシリと拘束した。


逃れられない筋肉と魔力の包囲網だ。


3人は殿下をお神輿のように高く担ぎ上げ、夜会場の奥へと連れ去っていった。


「嫌だぁぁぁ! 離せぇぇぇ! ミソラぁぁぁーーーっ!!」


王都の夜会に、哀れな殿下の絶叫が響き渡る。


私は赤と白の箱をドレスのポケットにそっと仕舞い、集まった貴族たちに優雅に一礼すると、最高の気分のまま、夜会会場を後にしたのだった。






          (おわり)

【制作メモ】

本作は、作者が考案したプロット、設定、言葉遊びをベースに、AI(人工知能)と二人三脚で本文の執筆・調整を行って完成させました。


最後までお読みいただきありがとうございました!


画面の前に、新たなウィンドウが出現しました。

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