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Ⅱ章 〘誉れ〙
雨は止んだが、風が時より強く吹いている。
集落の木造家屋は燃え、風のせいで周囲の植物まで炎が燃え広がっている。
種族たちの悲鳴があちこちから聞こえてくる。
周囲にはズタズタにされた種族たちの死体が散乱している。
鎧を身につけている。おそらく兵士だろう。
中心から折れた剣。先が壊れている杖。様々な武器も散乱していた。
嗅覚を尖らせる。
におう。
生きているものがまだいる。
火の煙の中から一人の種族が俺に向かって走ってきた。
ダークエルフの男。
後ろを向きながら慌てふためき走ってきた男が、正面を向いた。
俺と目が合う。
するとダークエルフの男は足を止め、腰を抜かし尻餅をついた。
絶望の表情で俺を見つめている。
「あぁ……あぁ……」
何も喋ることなく、ただただ意味もなく 悶えている。
その時、近くに一体の吸血鬼が飛び降りてきた。
ガーゴイル型の吸血鬼。感染した種族の吸血鬼とは違う。
俺より少し小さいぐらいか。想像していたよりもでかい。
吸血鬼が唾液をたらしながら口を大きく開け、咆哮と共に俺を威嚇してくる。
すぐさま吸血鬼へと飛びかかる。
吸血鬼の首に腕を回し、回転し暴れる 吸血鬼の首を思いっきり絞めていく。
吸血鬼が大きな翼をばたつかせ、飛び立とうと必死にもがき抵抗してくる。
周囲の木々や家屋に衝突し、壊れた破片が飛んでくる。
それでも腕を決して離さない。
タイミングを見計らい、もう一方の腕を吸血鬼の頭に回し、首を折る。
力の抜けた吸血鬼の亡骸を地面に捨てる。
図体の割に思ったより力がなく弱かった。
だがこれほど本気になって何かを殺したのは初めてだ。
あまり気持ちがいいものではない。
赤ん坊のように地面を這い、逃げようとしている ダークエルフの男の元へ向かう。
ダークエルフの男が俺の方へ振り向く。
「た、頼む……こ、殺さないでくれ……」
両腕で顔を覆い、怯えているダークエルフの男。
〘⇄〙「安心しろ。襲ったりしない。俺は助けに来たんだ」
「な、なに!?」
「どこへ行くつもりだった?」
「あぁ……きょ、教会だ」
「どこにある?」
「集落の南西だ。あぁ……そんな、俺たちを食べても美味しくない」
「教会へ案内しろ」
「い、嫌だ……」
〘⇄〙
「ここでお前を食ってもいい」
「わ、分かった……」
吸血鬼が2体飛び降りてくる。
「ああぁあ!!」
すぐさま吸血鬼へと飛びかかる。
暴れる吸血鬼の羽をもぎ取り、そのまま持ち上げ、頭から地面に落とし首をへし折る。「ああーー!? 助けてくれーー!!」
ダークエルフの男を襲おうとしている吸血鬼 へとすぐさま向かい飛びかかる。
吸血鬼の両肩を掴み、背骨に膝を強く押し当て、そのまま勢いよく吸血鬼の背骨をへし折る。
ぐったりとした吸血鬼の死体を地面へ捨てる。
「全ての吸血鬼を相手にするのは無理だ。さっさと行くぞ」
「あぁ……」
ダークエルフの男が立ち上がる。
俺の知っている種族とは違う。もっと力強い連中だと思っていたが、こんなにもろく弱いのか。
俺は今までこんな連中に怯えていたのか。
「な、なあ……い、行かないのか?」
「行く」
片手で肘を抑えるダークエルフの男についていく。
こんな連中に力を貸す意味なんてあるのか?
その後も降下して襲いくる吸血鬼を何体も倒していき、ダークエルフの男も死ぬことなく、無事に教会へと辿り着いた。
教会には吸血鬼が群がっている。
屋根、窓、ドア。
吸血鬼たちはどうしても中の種族たちを食いたいようだ。
「お前はあの小屋に隠れていろ」
ダークエルフの男は指示には従順だ。
腹の底から思いっきり咆哮を上げる。
教会の建物に群がっていた吸血鬼たちが一斉に俺の方を向き、翼で飛び立ち向かってくる。
お、思ったより多いな……。
最初に飛びかかってきた吸血鬼の顔面を殴る。
吸血鬼の脆い骨が砕ける感触が拳から伝わってくる。
次に飛びかかってきた吸血鬼の首元を掴み、地面に頭から落とす。
3体の吸血鬼が同時に襲ってきた。
左右の腕や後ろの首筋を思いっきり食いちぎろうとしてくる。
両腕を思いっきり中央へ。
それぞれの腕に食らいついている吸血鬼の頭をぶつけ倒す。
解放された両腕を使い、後ろの首筋に食らいついている吸血鬼の頭部を掴み、必死に抵抗する吸血鬼を首筋から離し、横へ思いっきり捻り、へし折る。
銀の剣やボルトの傷に比べれば、大したことのない痛みだ。
俺の中にある戦いの本能がくすぶっているのを感じる。
高揚感と共に思いっきり咆哮を放つ。
他の吸血鬼は宙で翼を羽ばたいたまま降りてこようとしない。
「どうした! もう終わりか!」
吸血鬼たちは翼は羽ばたき、どこかへ飛んで行ってしまった。




