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第6話【管理者aと虚無の城】

「なぁリリア、これ……本当に入って大丈夫なのか?」

「理論上は“存在しない空間”です。けど、あなたがバグキャラなら通れるはず」

「存在しない空間に通れる、って何の理論だよ!?」


俺たちは、“セーブデータの間”と呼ばれる古代遺跡──のような場所にいた。

壁一面に浮かぶ、青白い文字列。

『SAVE_01』『AUTO_SAVE』『DEBUG_ROOM』……。

まるで世界そのものが、セーブデータでできてるようだった。


アルトが腕を組む。

「しかし変なとこだな。時間の流れがない」

「ですね。ここでは、プレイヤーが“記録した瞬間”しか存在しないんです」

「えっ、それって……過去を覗けるってことか?」

「理論上は、はい」


リリアが端末を操作すると、壁の文字が切り替わった。


【ロード:旧バージョンデータ ver1.00】


風景が一瞬で変わった。

そこに映ったのは──俺自身だった。



白衣姿の俺が、パソコンの前で独り言をつぶやいている。


「NPCの行動ルーチン……ここ、もう少し自由度上げてみるか」

「あー、でもバグ出そうなんだよなぁ……」


アルトが驚いた顔をする。

「お、おい修司!? お前、二人いねぇか!?」

「俺も見えてる。けど……あれは、俺が転生する前の姿だ」

リリアが小声で補足した。

「この世界を作った“開発チーム”の一員……田中修司。あなた自身です」


俺は無言で、自分の“過去の姿”を見つめた。

画面の中の俺は、笑っていた。

だがその目の下には、深いクマが刻まれていた。


「もう少しだけ……あと少しで、この世界は完成する」

「バグが消えれば……誰かが、この物語を“ちゃんと終わらせて”くれるはずだから」


その瞬間、データが揺らいだ。



【ERROR:不正アクセス検知】

【強制ログアウト】


「おい! 何だ今の!?」

「誰かが……外部からこの空間に侵入してきています!」


壁の一角が赤く染まり、ノイズが走った。

そこから、黒いフードの人物が現れる。


顔は影に覆われ、声もノイズ混じりだ。


「……データの墓場に足を踏み入れるとは、バグにしては好奇心旺盛だな」


アルトが剣を構え、俺はリリアを庇った。

「お前、誰だ!?」


「俺か? 名乗るほどのもんじゃない。“パッチ管理者β”。」


リリアが目を見開く。

「管理者……!? この世界のデータを監視してる存在です!」

「つまり、システム側の人間ってことか」


「そうだ。お前たちみたいな“想定外”の存在を、削除するためにな」


黒フードが手を上げると、周囲のセーブデータが次々と崩壊していく。

『SAVE_01』『SAVE_02』──消えていくたび、空間が白く光った。


「やばい! 消されたら、この世界の過去も未来も失われる!」

「おいリリア、逃げるぞ!」


「逃げ場などない」


黒フードの目が、真紅に光る。

「削除開始──対象:田中修司」



その瞬間、俺の身体がバラバラにノイズ化した。

視界が崩れる。

音も、色も、すべてが混線していく。


(……やばい。俺、消されるのか?)


だが──その時、別の声が響いた。


『バックアップデータ確認──修司.ver0.1 起動』


光の中から現れたのは、もうひとりの俺。

ゲーム開発初期の、自信も不安も混ざった“昔の俺”だった。


「あの日の俺が作ったこの世界を、誰にも壊させねぇ」


二人の“修司”が並び立つ。

現在の俺が笑った。

「お前、コードのくせに熱いな」


「お前がそう作ったんだよ」



「スキル:リストア・ワールド!!!」


光が炸裂。

崩壊しかけたセーブデータが一気に復元される。

アルトが叫ぶ。

「よっしゃあ! やり返せ、修司!!」


リリアが補助魔法を展開。

「データ安定率、87%! いけます!」


俺と“過去の俺”が声を重ねる。


「お前はバグを消したい。でも俺は、バグの中に“奇跡”を見た!」

「だから──この世界は、まだ終わらせねぇ!」



轟音。

黒フードが弾かれ、ノイズの渦に飲み込まれていく。


「……これで……終わりではないぞ……」


その声を残して、管理者βは消滅した。



沈黙。

崩れた空間の中で、俺たちは息を整えた。


リリアが微笑む。

「修司さん……あなたの中には、本当に“もう一人の開発者”がいるんですね」

「まぁ、あいつは過去の俺だからな。……でも、悪くない再会だった」


空間の上に浮かぶログが点滅する。


『取得:世界修復データ 2/7』


俺は拳を握った。

「あと5つ……この世界を、ちゃんと直してみせる」


アルトが笑う。

「相変わらずめちゃくちゃな旅だな」

「だが、めちゃくちゃだからこそ面白い」



遠くの空に、赤い閃光が走った。


『魔王領にてシナリオ改変を検出』

『管理者α 起動』


リリアの表情が凍る。

「βが落ちた……ということは、次は──」

「上位管理者が動く、ってことか」


俺は空を見上げ、薄く笑った。


「バグvsシステムか……上等だ」



(つづく)

青威林檎-あおいりんご

『転生したらRPGのバグキャラだった俺が強すぎて勇者の出番がない!!』

毎週土曜日10:00投稿

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