表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/10

第3話【勇者がバグりました…】

「確認するけどリリア、勇者のレベルが“−9999”ってどういう状態?」

「簡単に言えば、存在の意味がマイナスです」

「存在の意味がマイナスって、哲学か!?」


勇者アルトは立ち上がっていた。

だがその姿は、もはや“勇者”というよりも、エラーの集合体だった。


髪はグリッチのようにノイズが走り、目は紫に点滅している。

口元からは「ピギ……ピギギギ……」という機械音。


「リリア、これってつまり──」

「はい。勇者がデータの負領域に落ち、別人格を生成しています」

「人格を生成!?」

「負の数の勇者、“ダークアルト”です」



ダークアルト「この世界……バグってるな」

修司「お前が言うな!!」


勇者はゆっくりと剣を抜いた。

いや、“剣だったもの”だ。

刃の部分がコードの断片になっていて、触れるとバグノイズが走る。


「俺は……勇者アルト。だが、マイナスに転じた存在。

すべての“チート”を無に帰す力を得た……」


リリアが青ざめた。

「チート無効化……!? この世界で唯一、あなたを倒せる存在です!」

「ちょ、マジで!?」

「おめでとうございます。ボス戦です」

「テンションの方向おかしくない!?」



ダークアルトが叫ぶ。

「バグの王、田中修司──! この世界の秩序のため、消滅してもらう!!」


「いや、俺ただの被害者なんだけど!?」


地面が割れ、真っ黒なコードが走る。

空は赤くノイズ化し、画面の端に“FPS: 2”が点滅。

戦闘開始──。



勇者の剣が俺に振り下ろされた。

俺は反射的に受け止める。

……指で。


バチィッ。

剣、砕けた。

世界、停止。


『警告:演算オーバーフロー』


「ちょっ……世界止まったんだけど!?」

「あなたの攻防値が高すぎて、演算処理が完了しません」

「リリア、つまりどうすれば!?」

「“ちょうどよく弱くなる”必要があります」

「俺にそんな器用な設定ないんだよ!!」



仕方なく、俺は新技を試す。


修司「スキル:デバッガーズ・ハンド!」


手をかざすと、視界にコードの束が浮かび上がった。

“勇者アルト”のデータコード。

そこに直接手を突っ込んで、バグ修正を試みる。


「おいアルト! お前、もともと正義感だけはあったろ!? 思い出せ!」

「……記録が……読めない……」

「なら俺が書き換えてやる!」



コードの中に「勇者=−9999」という行が見えた。

そこに上書きする。


 →「勇者=+1」


ピコンッ。

勇者の体が光に包まれる。

赤いノイズが晴れていく。


「……ここは……?」

アルトが正気に戻った。


「やった、戻ったのか!」

「はい。世界の処理も安定しました。……草のレンダリングも復帰しています」

「いや草どうでもいい!」



アルトは剣を見つめた。

「俺……何をしてたんだ……?」

「お前、負の数になって世界壊しかけたぞ」

「な、なんでそんな状態に!?」

「俺のせい」

「堂々と言うな!?」


リリアが淡々と説明する。

「あなたの存在値がマイナスになったのは、修司さんのデータ波長に引っ張られた結果です」

「波長!? 俺、Bluetoothかなんか!?」



アルトはため息をつき、剣を地面に突き立てた。

「……あのさ、俺たち、敵じゃないんだよな?」

「もちろん。俺はバグ直しに来た。お前は本来この世界の主人公だ」

「主人公……?」


その言葉に、アルトの目が少しだけ輝いた。


「なら、協力してくれアルト。世界を直す。

俺も、バグキャラなりに──“デバッグ勇者”として頑張る」


アルトが頷く。

リリアも珍しく微笑んだ。


「……ふふっ。チーム“バグ修正”の誕生ですね」

「名前ダサいけど気に入った!」



その瞬間──


『イベント発生:パーティ結成』

『エラー:役職重複 勇者×2』


「おいリリア、またバグってね?」

「はい。勇者が二人存在するのは想定外です」

「どっちかが勇者やめるとかできない?」

「できません」

「じゃあ、どっちかバグるな」

「その確率100%です」


世界が微妙に震えた。

……どうやら、次のバグが始まるらしい。



(つづく)

青威林檎-あおいりんご

『転生したらRPGのバグキャラだった俺が強すぎて勇者の出番がない!!』

毎週土曜日10:00投稿

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ