第2話【村ごとロード失敗…】
「……なぁ、リリア。これ、夢ってことない?」
「ありません。現実です」
「現実で“セーブデータが吹っ飛んだ”とか、バグどころじゃねぇよ!?」
目の前に広がるのは、真っ白な地面。
いや、正確には“白いプレーンテクスチャ”──まだ描画されていない地形だ。
「まるで開発初期のマップだな……」
「あなたが村のデータを削除した結果です」
「いや〜、つい“F5キー”感覚でリセット押したらこれだよ」
「F5って何ですか?」
「いや……世界が壊れた原因、まさにそれだな」
⸻
リリアが宙に浮かび、指先を光らせた。
青い魔法陣──いや、“データ再構成プログラム”が展開される。
『マップ再生成中……』
『読み込み完了率:3%』
「おお、戻るのか!?」
「ええ。ただし、地形情報が欠損していますので──」
パッッ
出てきたのは、草。
一面の、草。
遠くまで、地平線の向こうまで、全部、草。
「……うん、やらかしたな」
「これは……草しか生えない世界です」
「ネットスラングでいう“草生える”どころじゃねぇ!」
⸻
遠くで何かが動いた。
丸っこい影。……モンスターか?
俺は身構えた。
「スライムか? よし、テストにはちょうどいい」
「待ってください、そのステータスでは──」
バシュンッ。
スライム、消滅。
草、100ヘクタールごと吹き飛ぶ。
地形、崩壊。
『エラー:地形データが存在しません』
「……リリア」
「はい」
「俺、歩くだけで地球滅ぼすタイプ?」
「はい。バグの象徴です」
「うん、もう笑うしかねぇな」
⸻
仕方なく、俺たちは“草原”──という名の真っ白な空間を歩く。
途中で“勇者アルト”のデータを発見した。
静止したまま、目がうつろ。
「こいつ、まだ生きてんのか?」
「フリーズしています。あなたの存在圏に入ると処理落ちします」
「存在圏って言い方がひどいな!?」
試しに話しかけてみる。
修司「おーい、勇者くん。生きてるかー?」
アルト「…………(カクカク)」
修司「ダメだ、FPS1以下」
リリア「あなたの声が干渉して、音声処理が落ちてます」
修司「喋ることすらバグ扱い!?」
⸻
「……あー、マジでどうすっかな」
「このままでは“物語の進行フラグ”が一切立ちません」
「つまり、この世界のストーリーが止まってるってことか」
リリアが無表情でうなずく。
「勇者は動かない、村は消えた、魔王イベントは未実装。まさに“停止した物語”です」
俺は空を見上げた。
雲がまたピクセルの欠片みたいにチラついている。
このままじゃ、世界が完全に壊れる。
「なぁリリア……この世界、どこまで壊れてるんだ?」
「おそらく、コード層の半分以上が欠損。ストーリーを起動するためのトリガーも削除されています」
「じゃあ、どうすりゃいい」
「──あなたが“物語の代わり”になるしかありません」
⸻
「俺が、物語?」
「はい。この世界は、あなたの行動をもとに自動修復を試みます。あなたが“勇者的行動”をとれば、世界は勇者ルートへ補完される可能性があります」
「つまり、俺がこの世界の勇者代行ってことか」
「理論上は、ですが……」
「おお、なんかちょっと熱い展開になってきたぞ」
「そのセリフの直後にバグを起こす確率:98%です」
「それ統計的根拠ある!?」
⸻
俺は笑いながら、草しかない世界に拳を突き上げた。
「上等だよ。どうせバグなら、世界を修正する最強のバグになってやる!」
その瞬間──
『イベント発生:勇者ルート再構築開始』
『警告:勇者存在の重複検知』
……あ。
勇者アルトが動いた。
顔を引きつらせながら、ゆっくり俺を指さす。
「お、おまえ……誰だ……?」
「あ、どうも。村を消したバグです」
「な、なんだってぇぇ!?」
⸻
地鳴り。
草が波打ち、空が赤く染まる。
勇者のデータが壊れた。
『エラー:勇者ステータスがマイナス値になりました』
「おいリリア! 勇者がレベル“−9999”って出てるんだけど!?」
「バグです」
「知ってるよ!!」
……こうして。
俺たちの“世界修正の旅”は、二話目にしてさらに壊れた。
⸻
(つづく)
青威林檎-あおいりんご
『転生したらRPGのバグキャラだった俺が強すぎて勇者の出番がない!!』
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