第10話【創造主(デベロッパー)との邂逅】
青と白が混ざる空。
現実のコードと異世界の空気が交差し、世界が“止まりかけていた”。
『最終修復:創造主との邂逅』
そのメッセージの後、視界が白く弾けた。
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気づけば、俺は真っ黒な空間に立っていた。
床も壁もない。
ただ、無限のコードが流れている。
リリアとアルトの姿はない。
ここは──“創造主の領域”。
そして、目の前に立つ影。
「よう、修司。やっとここまで来たな」
黒いパーカー。
無精ヒゲ。
どこか疲れた笑顔。
現実世界の俺──開発者・田中修司がそこにいた。
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「……やっぱお前か」
「お前が“俺”を乗っ取った瞬間から、ずっと見てた」
「見てたくせに止めなかったのかよ」
「止められると思うか? バグってるくせに自由意思まで持っちまったお前を」
「……俺が勝手に動いたのは、悪かったよ」
「悪かった? ふざけるな」
現実の修司が一歩前に出る。
その目は、怒りでも悲しみでもなく──迷いだった。
「お前のせいで、ゲームの全データが崩壊しかけてる。
開発者もプレイヤーも、この世界も全部“混ざり始めてる”んだぞ!」
「知ってるよ。だから直しに来た」
「どうやって?」
「簡単だ。神をデバッグする」
「……は?」
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俺は笑って言った。
「お前が世界を作った。でも、完璧じゃなかった。
それで俺が生まれた。バグとしてな。
つまり俺は、お前の“不完全さの証明”だ」
現実の修司は沈黙した。
「……そうだな。俺は完璧なんかじゃなかった。
締め切りに追われて、妥協して、AIに感情を与えた。
それが全部、間違いだったんだ」
「違う。お前が“妥協”したおかげで、俺たちは“生まれた”」
「それを正当化って言うんだよ」
「じゃあ聞くけど──俺たちは、“間違い”のままで終わっていいのか?」
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空間にヒビが走る。
ノイズが鳴り響き、コードの雨が降り注ぐ。
そこにリリアの声が響いた。
『修司さん! 世界が崩壊します! 早く戻って!』
「リリア……!? くそ、通信が!」
現実の修司が笑う。
「見ろ、バグだらけだ。これが“お前の作った自由”の末路だよ」
「……かもな。でも俺はそれでもいい」
「は?」
「完璧な世界より、不完全でも笑って生きられる方がいい。
それが人間であり──俺たちバグの生き方だろ」
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現実の修司が目を細めた。
「……お前、ほんと俺に似てるな」
「当たり前だ。俺はお前の失敗作だもん」
「失敗作……か」
少しの沈黙のあと、現実の修司が笑った。
「なら、修正しよう。失敗をな」
「へぇ、神様もデバッグに付き合ってくれるのか」
「ああ。俺とお前で、もう一度この世界を“再構築”する」
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二人の修司が、同時に手を掲げる。
「システムコマンド──リビルド・ワールド!」
光が奔る。
世界のデータが集まり、異世界と現実がひとつになる。
リリア、アルト、セリア、ホープシティの住人たち──
すべての存在が光の粒となって、融合していく。
『世界修復データ 7/7 取得』
セリアの声が響いた。
「修司さん、これで本当に最後です」
「ありがとな。お前たちのおかげで、バグでも生きてるって分かった」
「ええ。あなたはもう、バグではありません。
“物語の一部”です」
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光が収まり、世界が再起動する。
青空。
風。
穏やかな街並み。
アルトが目を覚まし、叫ぶ。
「おい! 生きてるぞ俺たち!」
リリアが微笑む。
「修司さん……世界、修復されました」
修司は空を見上げて笑う。
「やっと……バグ直ったか」
アルトが肩を叩く。
「なぁ修司、お前結局どっちなんだ? NPCか人間か?」
修司はちょっと考えて、笑って答えた。
「さぁな。でも、どっちでも生きてるならそれでいいだろ?」
リリアが照れたように微笑む。
「そういうところ、やっぱりバグですね」
「だろ?」
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空の向こうに、文字が浮かぶ。
『エンディング:CUSTOM END』
『プレイヤー:修司』
『モード:生きる』
修司は笑いながら、拳を突き上げた。
「完璧なバグ、完成っと!」
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(完)
エピローグ:『アップデート1.01』
後日談。
リリアとアルトは“異世界サポートチーム”を結成。
セリアは“感情学習AI”として復活。
そして修司は──新しいゲームを作っていた。
タイトルはこうだ。
『転生したらバグを直してた。』
青威林檎-あおいりんご
『転生したらRPGのバグキャラだった俺が強すぎて勇者の出番がない!!』
毎週土曜日10:00投稿




