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第67話:「瘴気と銀光」

かなり期間が空いてしまいました!

申し訳ありません!

シャロンたちが見守るなか、冬馬から溢れ出していた銀色のオーラは次第に収束し、やがて完全に静まった。


鞠子が冬馬を用心深く観察しながら、低く呟く。


「……収まったな。試練が終わったのか?」


その問いに、シャロンが首を横に振る。


「分からないわ。……念のため、診てみましょう」


「……ああ、分かった」


短いやり取りを交わした二人は、冬馬のそばへ歩み寄り、様子を確かめようとした――その瞬間。


冬馬の身体から、どす黒いオーラが噴き上がった。


「きゃあっ!」


思わず悲鳴を上げ、シャロンは腕で顔を庇いながら後ずさる。


「くっ、この瘴気……! 冬馬を蝕んでいたものと同じか!」


鞠子も眉をしかめ、片手で口元を覆った。


吹き出した瘴気は瞬く間に病室を覆い尽くし、淀んだ空気が肌を刺す。

胸を締め付けるような重苦しさに、その場にいた全員が体調を崩し始めた。


鞠子が荒い呼吸の合間に呻く。


「な、何だ……これは……! これほどの瘴気が、冬馬の身体に潜んでいたというのか……!」


「そ、そんな……! ここまでとは……。いくら瘴気を除去しても良くならなかった理由が……これで……」


シャロンの顔も青ざめていた。

次第に視界が歪み、膝が震える。


ついに鞠子が膝をつき、床に手をついた。


(……なんてことだ。冬馬は……これに耐えていたのか……!)


その光景に続くように、シャロンや控えていたハンターたちも次々と膝をつき、呼吸を乱していく。

病室は瘴気に満たされ、このままでは皆、命を落としかねない。


だが――。


冬馬の身体から放たれていた瘴気が途絶え、次の瞬間。

銀色の光が奔流のごとく迸った。


「……っ!」


まるで天と地を引き裂くような輝き。

銀のオーラは黒い瘴気とせめぎ合い、火花を散らすように激しくぶつかり合った。


だが次第に、銀光が瘴気を押し返していく。

黒を塗り潰し、闇を祓い、病室を満たす淀みを消し去っていった。


やがて最後の一筋の瘴気が霧散すると同時に、銀の光が勝利を収めるように輝きを収束させた。


「助かった…いや、助けられた…か。……ふぅ……危なかったな」


鞠子がゆっくりと立ち上がり、大きく息を吐く。

その瞳には驚きと同時に、冬馬への敬意が宿っていた。


「信じられん……。あんなものに耐え続けていたなんてな」


シャロンも震える息を整え、冬馬の顔を覗き込む。


「冬馬……大丈夫……? え……?」


彼女は思わず声を詰まらせた。

冬馬の表情は穏やかで、安らかな寝顔を浮かべていたのだ。

呼吸は規則正しく、苦しげな様子は一切ない。


さらに、冬馬を蝕んでいたはずの瘴気は、完全に消え去っていた。

それどころか――。


「鞠子! 冬馬を見て!」


慌てた声に、鞠子も目を凝らす。


「……なんだと?」


彼女は愕然とした。

冬馬の中から感じ取れるオーラが、明らかに変質していたのだ。


ただ変わったのではない。

もともとのオーラに、新たな性質が宿ったかのように。


オーラとは、その人間の根幹そのもの。

一人につき、一種類が限界。

どれほどの天才であろうと、複数のオーラを併せ持つなど聞いたことがない。


「シャロン……これは……」


「……ええ。おそらく、試練に勝ったのよ。……冬馬」


二人はしばらく冬馬の様子を見守った。

もはや暴れる兆候はなく、状態は安定している。


控えのハンターたちには元の任務に戻るよう告げ、病室にはシャロンと鞠子だけが残った。

二人は冬馬のベッドを挟み、向かい合うように立つ。


鞠子はふと口を開いた。


「……私は興味が出てきたぞ。冬馬という男にな」


「……興味?」


「多くの者が、この男のために命を懸けている。特にお前と雪菜はな」


鋭い視線に、シャロンは頬を朱に染め、視線を逸らした。


「……そ、それは……」


「安心しろ。分かっている。私から雪菜に喋ったりはしない。少なくとも、彼女が女の身体に戻るまでは、知られるべきことじゃないだろうしな」


鞠子はそこで口元を緩め、思いついたように言った。


「何なら……お前と雪菜、二人まとめて冬馬に嫁いでしまえばいい」


「な、なにを言い出すのよ!? そ、そんなこと……っ!」


シャロンの声は次第に小さくなり、最後は消え入りそうだった。


鞠子は肩をすくめ、軽口を叩く。


「知っているだろう? クロスのせいで人口は大きく減った。だから成果を残したハンターには、一夫多妻が特例として認められている。もし冬馬が強くなれば……お前と雪菜、二人を迎えることも可能だ」


「私と雪菜が……二人とも……」


シャロンは呆然と呟いた。

制度の存在は知っていた。だが、それは自分とは無縁の話だと、どこかで思い込んでいた。


鞠子はさらに悪戯っぽく笑い、冗談めかして言う。


「……何なら私も、冬馬ハーレムに加えてもらうか」


「も、もう! 鞠子!」


シャロンが慌てて声を上げると、鞠子は声を立てて笑った。


「くくっ……ここは病室だぞ? 静かにしろ。……まあ、冗談だ。私はまだ、こいつのことをよく知らん」


そう言いつつ、鞠子は心の奥で呟く。


(……今はまだ、だがな。将来どうなるかは分からん。雪菜やシャロンがこれほど献身する冬馬という男……私も、知りたくなってきた)


だが、それは口にはせず、苦笑に変えて誤魔化した。


二人は再び、静かに眠る冬馬へと視線を向ける。

病室には、冬馬の穏やかな寝息だけが響いていた。


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