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第5話:「歪められた真実」

それから、さらに数年の歳月が過ぎた。

時代は現代。決意の日から十年もの時が経っていた。


冬馬と雪菜は、二十代前半に差しかかっていた。

かつて孤児院で飢えに耐えた子どもたちは、今や立派な若者となり、中にはハンターになって、キャリアを築き上げている者もいた。


そんなある日、雪菜に一通の通知が届く。

それは、ハンター協会本部からの公式な書簡だった。


「……昇級?」


信じられない思いで封を切る。

そこには、C級への昇格が正式に認められた旨が記されていた。

原因ははっきりしていた。先日の「ガストワイバーン討伐」——。

その戦いでの活躍が高く評価されたのだ。


「これなら冬馬も!」


思わず声が出る。

あの戦いにおいて、本当の功労者は——間違いなく、冬馬だった。

前衛が崩れ、パーティが壊滅しかけたそのとき、冬馬が自ら囮となり、ワイバーンの注意を引きつけた。

それがなければ、あの場にいた誰かが確実に命を落としていた。

雪菜も含めて——。


「絶対、冬馬も昇級してるはず……!」


雪菜は浮き足立つようにして、冬馬に会いに向かった。


だが——。


「……Fランク相当の依頼?」


目を疑った。

冬馬がいま受けている任務は、ゴブリンの巣掃討や街道警備といった、最低限の実績しか積めないFランク帯の任務だった。


「どういうこと……?」


混乱する。

あのガストワイバーン戦の功績を思えば、最低でもE。下手をすればDに昇格していてもおかしくない。

昇級どころか、報酬の加算すらされていないという事実に、背筋が冷えた。


(……誰かが、冬馬の功績を、意図的に抹消している?)


それは、雪菜が長年抱いていた違和感でもあった。

彼は、いつも誰かのために身体を張っていた。

馬鹿にする者も多かったが、その人柄や実直な働きを認めている者だって、確かに存在していた。


——なのに、いつも正当に評価されない。


疑念を拭いきれず、雪菜は密かに調査を始めた。

ギルドの受付嬢に話を持ちかけ、報告書の写しを得る。

彼女自身の立場を危うくすることは百も承知。

それでも写しを提供してくれたのは、彼女なりに思うところがあったのだろう。

十代前半から苦楽を共にしてきた、雪菜と冬馬の姿を、ずっと見守ってきてくれた人だった。


写しを持ち、宿に戻る。

誰にも気づかれぬよう慎重に場所を選び、扉を二重に施錠し、カーテンを閉めた後——

雪菜は息を呑みながら報告書に目を通した。


「……うそ……」


記載された最大功労者の名は——雪菜、ただ一人。

冬馬については「限定的な支援活動」と書かれていた。

まるで、ほとんど役に立たなかったかのように。


「……こんなはず、ない……!」


怒りとも悔しさともつかない感情が、胸の奥からこみ上げる。

誰かが、明確な意志を持って、冬馬の存在を貶めようとしている。

今回だけではない。今までも、ずっと——


(……ボクは、C級になった。これで、探れる範囲が広がる)


雪菜の瞳に、静かな炎が灯る。


これ以上、黙ってはいられない。

この不条理の正体を暴き、冬馬の真価を正しく示す。

そのためなら、何だってする。


「絶対に、突き止めてみせる。冬馬を……守るために」


この日から、雪菜は誰にも知られぬまま、極秘裏に行動を開始した。


その背には、幼い日に誓った“相棒”としての信念が、今も変わらず息づいていた。


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