表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/75

第2話:努力の果てに見えるもの

なんといいますか・・・色々設定が・・・。

ご不快に感じましたら、心よりの謝罪を。

ハンターは、大きく分けて二つの系統に分類される。


 魔力を操る「魔法系」、そして肉体を鍛え上げる「格闘系」。

 その中にも、剣士、ガンナー、召喚士、強化術士、支援術師……多種多様な専門職が存在する。


 雪菜は、魔法系よりの剣士だ。

 魔力の流れに剣術を重ね、攻防を織り交ぜた戦いを得意とする。


 一方――冬馬は、魔法を一切使えなかった。


 魔力の適性は「ゼロ」。

 オーラにはかろうじて目覚めたが、その素質は驚くほど平凡。平均値をほんの少し下回る程度の、何の変哲もない数値だった。

 それもまた、彼が長く最下層に留まっている理由のひとつだろう。


 だが――冬馬は諦めなかった。


 魔法が使えないなら、オーラを鍛えればいい。

 オーラの素質がないなら、体を鍛え上げればいい。


 誰にも知られぬ場所で、誰にも認められず、血が滲むという言葉すら生温く思えるほどの、狂気じみた鍛錬の日々。

 才能が無いと知った少年は、努力でそれをねじ伏せた。


 そして冬馬がその末に編み出した技が――

 《アクセラレーター》。


 自身の肉体能力と五感をオーラで強化する技術。

 一見すれば、ただの強化系。魔法系の基礎術として誰もが通る「身体強化魔法」の延長に過ぎない。


 周囲は言った。


「努力してまで、それかよ」

「魔法も使えない雑魚が、苦労して基本魔法を再発明?」

「くだらねぇ」


 だが、彼の《アクセラレーター》は、凡百のそれとは違った。


 それは――任意倍率での強化が可能だった。


 基礎使用時の強化率は1.5倍。そこから自らの意志で倍率を上げ、2倍、3倍へと段階的に出力を引き上げることができる。


 さらに、冬馬自身が成長すればするほど、《アクセラレーター》の効果も比例して上がる。

 まさに、彼の努力と連動して進化する技だった。


 現在の冬馬が扱える最大倍率は「三倍」。

 それ以上は、骨が軋み、筋繊維が裂け、命すら脅かす危険域に達する――はずだった。


 だが、その日。

 限界を、冬馬は越えた。


 都市の外れ。

 空を覆う巨大な影――《ガストワイバーン》。


 Bランク以上のハンター集団が必要とされる、危険度の高い亜竜種。

 今回の襲撃には、都市最大のハンターズ事務所『摩天楼』からもメンバーが派遣された。


 だが、タイミングが悪すぎた。

 近頃のモンスター活性化により、上位ハンターの多くは他地域へ出払っていた。


 即興の戦力では、亜竜種に対抗するにはあまりに心許ない。

 そのため、人手不足を補う形で、新人ハンターまでもが駆り出される異例の事態となった。


 雪菜が駆けつけたとき、すでに戦闘は始まっていた。


 その戦場で、誰よりも先に動いていた男の姿があった。


 ――冬馬だ。


 彼の戦いに、派手さは無い。

 しかしその立ち回りは、まさに老練の職人のように堅実だった。


 無理をせず、自分の身の丈を知り、同時に周囲への配慮を欠かさない。

 新人のフォローをさりげなく行いながら、確実に敵の攻撃を削いでいく。


 その姿を見て、雪菜は思わず小さく笑った。


「……全く、アイツは……」


 だが、状況は厳しさを増していった。


 ガストワイバーンは、それ単体でも脅威だが、周囲には取り巻きの小型飛竜も控えていた。

 新人ハンターたちは次第に疲弊し、反応速度も鈍っていく。


 雪菜の脳裏に嫌な予感が過る。


(マズい……この戦力じゃ、持たない……せめて、Bランクがあと数人でもいれば……!)


 その時だった。


 摩天楼所属の若き新人ハンターが、疲労で足を取られ、転倒した。


 すぐ目の前には、ワイバーンの影――!


 ――殺される!


「くっ……!」


 咄嗟に雪菜が飛び込む。だが、すでに魔力も、剣も限界だった。

 受け止めた一撃で、愛剣が砕けた。


(マズい……! このままじゃ……!)


 次の瞬間――。


 狂爪を振り下ろすワイバーンの前に、ひとりの男が立ちはだかる。


「……っ!」


 紅いオーラを纏ったその背中。

 その男の名を、誰よりも雪菜は知っていた。


 冬馬――彼の奥の手、《アクセラレーター・4倍》。


 限界を超えた出力。

 膨れ上がる筋肉。紅蓮のオーラが地面を焦がす。


「フォースアクセル!」


 右腕に装着した手甲で、冬馬はワイバーンの顎を真上に打ち抜いた。

 打撃によってブレスの詠唱が阻害され、口腔内で爆発が起こる。


 悲鳴を上げ、空へ逃れようとするワイバーン。


 だが――冬馬はそれを許さなかった。


 跳ぶ。


 地面を抉るほどの脚力で、冬馬はワイバーンの高度を超える。


「――喰らえ」


 拳に込めた全ての力。

 渾身のオーラ波動が、空中のワイバーンを直撃した。


 その巨体が、無残な音と共に地面へと墜ちる。


「今だ――!」


 冬馬の怒号が、戦場に響く。


「ツインマジック! エレメンタルソード!」


 雪菜の詠唱が重なる。

 折れた剣の柄に、雷と炎の刀身が宿る。魔法剣――双属性の刀。


 それに続き、摩天楼のメンバー、新人たち、そしてソロのハンターたちが、怒涛の如く攻撃を浴びせかけた。


 雄叫びと怒声が入り混じり、嵐のような斉撃がガストワイバーンの身を貫いた。


 亜竜の咆哮。

 そして――断末魔。


 ガストワイバーンは、地に伏した。


 戦場に、安堵と歓声が広がる。


「やった……!」「倒したぞ!」


 雪菜は辺りを見回し、すぐに彼の姿を探した。


 見つけた。


 地面に座り込んだ冬馬が、荒い息をつきながら、戦いの終わりを噛みしめていた。


 その姿を見て、雪菜は胸をなで下ろす。


(ほんと……昔から、そうだよ)


 彼女の脳裏に、かつての記憶が蘇る。


 ――努力だけで、ここまで来た男。

 誰よりも不器用で、誰よりも真っ直ぐな男。


 そして、その手を――


 いつか、もう一度、握り返したいと願った、たった一人の人だった。


雪菜は昔を思い出す。かつて、今と同じように冬馬に守られ、手を差し伸べてくれた時があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ