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第1話:交差の果てに生きる者たち

 この世界は、かつてのこの世界と、異世界とが融合してしまった場所だ。

 世界の崩壊とも再誕とも呼ばれたその大事件――「交差クロス」。

 それは突如として空に現れた巨大な門とともに始まった。混沌とした異世界が裂け目から流れ込み、現実は異質に侵されていった。


 大地は裂け、空には複数の月が浮かび、かつて存在しなかった生物――すなわち“モンスター”が、都市の周辺にも現れるようになった。

 だが、人類はただ蹂躙されるだけではなかった。

 交差の影響で、魔力やオーラと呼ばれる未知の力に目覚める者たちが現れた。

 彼らはその力をもってモンスターと戦い、討伐し、世界を守る者として「ハンター」と呼ばれるようになった。


 交差クロスによって、かつての都市、東京は壊滅的な被害を被った。

新たに建設された都市は『トウキョウ・ネクサス』


 ハンターは実力と功績に応じてランク分けされる。

 HからAまでの8段階、そして極限の強さと世界的功績を持つ者だけが辿り着ける“超越者”――Sランク。

 最下層のHランクは、駆け出しや学生、もしくは未熟な者たちの入り口であり、命を賭けるにはあまりに危うい立場だ。


 都市部には大小様々なハンターズ事務所が乱立し、依頼の仲介、ハンターの育成、モンスターへの対応などを担っている。

 その中でも最大級の影響力を誇るのが『摩天楼』。

 数多の精鋭を抱える超大手であり、テレビやネットでもたびたび取り上げられる、まさに憧れの象徴だった。


 だが、そんな華やかな世界の片隅に――まるで理に背を向けるように生きる男がいた。


 彼の名は、冬馬。

 現在Fランクのソロハンター。

 登録当初はHランクだったが、細々と依頼をこなすうちにFへと昇格。

 しかしそれ以上は一切変わらず、万年最下層の常連と化していた。


 ぶっきらぼうで無愛想。言葉少なで無骨。

 だがその実、お人好しで、誰よりも不器用に他人を助けてしまう男だった。

 実力が無いわけではない。

 だが、自らを誇示せず、評価も求めず、割に合わない依頼ばかりを淡々とこなす姿は、周囲の理解を超えていた。


「割に合わないなら、俺がやる。誰かがやらなきゃいけねぇなら、俺がやる」


 多くのハンターは、そんな冬馬を軽んじ、時にあざ笑う。

 ハンターの世界でモノを言うのは功績と数字。ランクという分かりやすい指標が、彼を過小評価させていた。


 だが、すべての者が彼を侮っているわけではなかった。


「冬馬さん! あの時は本当に助かりました!」


 そう声をかけたのは、Eランクハンターの青年――レン。

 年は十八、まだあどけなさの残る顔だが、最近ようやく安定して魔力を扱えるようになった若手だ。


「今、自分、ようやくEまで来れたんです。冬馬さんが教えてくれたあの技、ずっと練習してて……」


「あれは自己流だ。無理すんな。自分に合うやり方を見つけろ」


 ぶっきらぼうな言葉。

 だが、レンは満面の笑みで頭を下げる。


「ありがとうございます! 自分、もっと頑張ります!」


 そう言って駆けていく背中を見送り、冬馬はひとつだけ、小さく頷いた。


 ――少しずつ、だが確かに。

 彼の背中を見て育つ者たちが、確かに存在していた。


 そして、もう一人。

 冬馬を決して見捨てず、変わらぬ眼差しで見つめる者がいた。


 雪菜。Dランクハンター。

 都市部最大のハンターズ事務所『摩天楼』に所属。

 魔力に目覚めたことで長くしなやかな黒髪は蒼銀に染まり、鋭さと優雅さを併せ持つその姿に、男女問わずファンが多い。

 だがその彼女が、なぜかFランクの冬馬にだけ、特別な視線を向けていた。


「冬馬、もう一度だけ言うね。摩天楼に来てよ。ボクと組んで。……もう、何度目か分かんないけど」


「悪いな。オレはそういうの、向いてねぇ」


 素っ気ない返答。

 その言葉に、雪菜は少しだけ寂しそうな顔を見せたが、それでも強い瞳で見返す。


 周囲のハンターたちは言う。

 なぜ雪菜が、そんな底辺の男にこだわるのか。

 分からぬまま、嫉妬や苛立ちを冬馬にぶつける者すらいる。


 けれど、雪菜には分かっていた。

 この男が、どれだけの人を、どれだけの命を救ってきたのかを。


 その想いに、彼女はまだ名前をつけていない。

 ただ、それが“感謝”だけではないことは、すでに気づいていた。


 その時――遠くから、爆音と共に、地響きが伝わってきた。


「…モンスターか!」


 冬馬が振り返る。

 都市の外れ。空を舞う巨大な影。

 青灰色の鱗、鋭い翼、蛇のようにうねる尻尾。

 亜竜種――ガストワイバーン。


 モンスターの中でも、討伐にBランク以上の集団を必要とする強敵。


「避難誘導、頼む。雪菜」


「うん……! 冬馬、ボクもすぐ行くから!」


 風が巻き上がる。

 冬馬は静かに剣を抜き、地を蹴った。


 物語が、動き出す――。


語り部ミミズクと申します。

現在連載中の【月下に契る】ですが、まだ完結してないのに、新しい話に手を付けてしましました。

申し訳ありません。ワタクシ反省です…。

月下に契るですが、エンディングの大まかな形は出来上がって入るのですが、どうやってそのエンディングに繋げるか…。

そこで詰まってまして。

気晴らしに少し違う話を書いたのが、本作になります。

はい………申し訳ありません…。月下を完結させてからにするべきでしたよね。

ワタクシ猛省です。

でもでも!必ず【月下に契る】は完結させますので、暖かく見守ってくだされば。

本作【Hランクから始める相棒ハンター生活 〜ボクは強くなって、あの日の手を握り返す〜】は、ひとまず今書いてある数話分を投稿した後は、月下の方が終わるまでは放置するかもです。

月下に契るが終わったら、本格的にこちらを始めるかも。

あと、本作は手術によるTS要素が描写される予定なので、苦手な方や、不快に感じる方がいらっしゃいましたら、本当に申し訳ありません。

本作が、少しでも皆様の心に『何か』を残すことが出来たなら、ワタクシ嬉しく思います。

長文、失礼いたしました。

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