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第1巻 第4章 - 私たちがどうやって助かったかについて

序章

誰の人生にも、救いがないと思える瞬間が訪れる。しかし、まさにそのような瞬間——過去の瓦礫と知られざる影の間で、最も信じられない光への道が生まれるのだ。この章は、運命と絶望で結ばれた二人が、死の爪から逃れる術を見つけた物語である。足を引きずりながらも折れないマリーと、悲しみに心を凍らせたままのハインリヒ・ブラウフレイム博士が、救いとなるかもしれない謎…あるいは新たな罠に直面する。彼らの物語はここ、爆薬の匂いが息づく第五の島で始まる。


(著者からの小さな注釈:この章では、マリーとブラウフレイム博士がどうやって助かったかを語ります。)

場面:ブラウフレイム博士の家

マリーが少し足を引きずりながら博士に近づく。

マリー:

「ブラウフレイム博士、ちょっとこれ見てくれませんか、ポータルです。どうやって動くのか、博士ならわかるんじゃないですか?」

ハインリヒ(軽い苛立ちを込めて):

「マリー、私が科学者だからって何でも知ってるわけじゃないんだ。この仕組みなんてさっぱりわからない。解明するのに何週間もかかるよ。」

(一瞬の間。)

「それに、その間、どうやって君を隠すか考えないといけない。」

マリーは彼の肩に手を置き、いたずらっぽく笑って目をじっと見つめる。

マリー(言葉をわざと伸ばして遊ぶように):

「博士ブラウフレイム…あなたって、科・学・者でしょう?何だってできるじゃないですかぁ!」

反論を待たず、彼女は黙って装置を彼の手に押し付け、狡猾な笑みを浮かべ続ける。

ハインリヒは無言でポータルを見つめ、次にマリーを見る。またポータルに戻して、慎重に触り始め、くるくると回してみる。

突然、装置が「カチッ」と音を立て、短い電子音が鳴る:

「ピッ!」

ポータルが起動する。

ハインリヒはゆっくりとマリーに目を移す。彼女は言葉を発せず、ただ表情だけで「ほら、言ったでしょ!」と言わんばかりに見つめ返す。

博士は眉をひそめ、まるで自分の後頭部を見ようとするかのように目をぐるっと回し、ぶつぶつ呟きながらスリッパを擦って別の部屋へ去っていく。

ハインリヒ:

「くそっ、誰だよこんなクソみたいなステレオタイプを考えたのは…」

マリーは口を手で覆い、目を細めて静かに笑う。

後ほど。

博士が装置をいじっている間、マリーは部屋を見回すことにする。彼女はハインリヒの椅子に移り、 здоровую ногу(健康な足)に体重をかけて座り、机の上の紙を調べ始める。

ノートには解剖学のスケッチが描かれている:骨格、筋肉、静脈、病気のメモ。そばには奇妙な渦の写真が置かれている。

「これが博士の言ってたもの?」とマリーは写真を眺めながら思う。小さな渦もあれば、底なしのように巨大なものもある。

だが、マリーの目を引いたのはそれではない。机の隅に、古い木製フレームに入った写真がある。そこには幸せそうな家族が写っている:堂々とした男性、白いドレスを着た若い女性、そして8~9歳くらいの男の子と女の子の二人。

「これ…博士の家族?」とマリーは驚きながら思う。

突然、後ろからハインリヒの声がして、彼女はビクッと跳ねる。

ハインリヒ:

「私の家族だよ。」

「いつ近づいてきたの?足音も聞こえなかった…私、夢中になりすぎてた?」とマリーは呆然と思う。

マリー(自信なさげに):

「あ、うん…」

ハインリヒはベッドの端に腰掛け、床を見つめたまま話し始める。

ハインリヒ:

「海外へのクルーズに行くつもりだったんだ。当時は珍しいことだった。楽しく過ごしてたよ。水の滑り台に乗ったり、映画を見たり…」

(少し間を置く。)

「それから…爆発音が聞こえた。」

マリーは息を止めて聞き入る。

ハインリヒ(一点を見つめたまま続ける):

「船が海賊に襲われたんだ。人々はパニックになって走り回ったけど、逃げ場なんてなかった。救命ボートは足りなくてね。まるでネズミ捕りにかかったネズミのようだった。海賊たちは空に発砲して、みんなを一か所に集めようとしてた…」

(一瞬の間。)

「でもその時、誰も予想してなかったことが起きた。海の中から…何かが現れた。何だったのかわからない。巨大で、真っ黒で。目は血のように赤く、瞳は深淵みたいに黒かった。その生き物…俺たちを見ていた。」

ハインリヒの声が小さくなり、ほぼ囁きになる。

ハインリヒ:

「誰も動けなかった。海賊も、乗客も、船員も。全員が固まった。それは…恐怖じゃない。何か古いものだった。原始的な恐怖だ。」

(彼は拳を強く握りしめる。)

「その存在は俺たちの法も命もどうでもよかった。そいつにはただ一つの法則しかなかった——自然の法則。そしてそれは殺すことを命じてた。」

博士は深く息を吸う。

ハインリヒ:

「水の中から巨大な触手が飛び出してきた。それが船を…人ごと潰した。」

マリーは息を詰まらせ、涙を堪える。

ハインリヒ(ほぼ囁きで):

「俺たちは船の端にいた。燃料が爆発して燃え上がった衝撃波で海に投げ出された。それから——闇だ。」

一時停止。

ハインリヒ:

「波の音と、俺の上を這うカニで目が覚めた。

俺は一人だった。

この世に一人きりだ。

命より愛した家族がもういないって感じた。

親の心は決して間違えない。」

マリーは博士の話を聞きながらヒステリーを抑えきれず、美しい顔に涙が溢れる。

ハインリヒ:

「感情の嵐に飲み込まれた。

俺は泣き叫び、自分とこの世界を呪った。

何をすればいいかわからなくて、自殺しようと思った。

でも気付いたんだ。家族のために、俺は生きなきゃいけないって。」

「少しして、自分がどこかの島にいることがわかった。

奥へ進むと、機械や箱、銃を持った人間がたくさんいた。

引き返そうとしたら、顔に自動小銃の銃口を突きつけられた。

それで『オマール』っていう組織の奴隷になったんだ。」

「ここは彼らが占領した5番目の島だ。」

マリー(困惑と驚きで):

「待って、島って一つじゃないの?」

ハインリヒ:

「ああ。メインの島は9つあって、他に秘密の10番目の島がある。

10個だよ、オマール(ロブスター)の足の数と同じさ。

この組織は不死への道を探してる。だから『オマール』って名乗ってる。ロブスターは特別な酵素を作り出してテロメアを修復するから、ほとんど永遠に生きられるんだ。

俺は10番目以外、どの島にも行ったことがある。」

マリー:

「じゃあ、ここって爆薬だらけの実験場ってこと?」

ハインリヒ:

「その通りだ。」

長い沈黙。

マリー(囁くように):

「ごめんなさい…私のせいでこんなこと思い出させちゃって。」

ハインリヒは無言でティッシュを差し出し、温かい笑みを浮かべて言う。

ハインリヒ:

「大丈夫だよ、子猫ちゃん。もうとっくに受け入れてる。人生は終わりじゃない…始まりなんだ。」

二人は互いに微笑む。

突然、ドアを強く叩く音が響く。

マリーにはわからない言語で、荒々しい声が脅すように叫ぶ。

ハインリヒの顔が青ざめ、声が震える。

ハインリヒ:

「お、おお…やつらが来た…」

続く。


「サポートしてくれて、本当にありがとう!」

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