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9.入学

お読みいただきありがとうございます。

 

 四月八日

 

 俺は、周りの人間関係からその人を判断する性格だと思う。去年までのクラス替えなら、こいつとこいつのせいで雰囲気悪くなりそうだとか、あっているかは別として大体の予想はできたし、どこか期待感が大きかった。

 今年はどうだろう。昨日もらった生徒のクラス表を眺める。自分と同じ小学校の人数は四人。全員で三十人だから、割合的には少ない方。二日目、昨日はどことなく不安感があったが少しは拭えただろうか。

 二日目。もう少しでホームルームが始まる。あと五分。

 同じ小学校の人がいると言いつつ、ほぼ全員仲がいい人ではない。要するに、今俺は話す人がいない状態だ。新学期なんて、そんなものだろうか。

 しょうがない。俺は孤立を望んでいるわけではないが、フレンドリーさを望みもしないし、『人気者』になると面倒くさい。

 右も左も人がいる。後ろには絵梨花がいる。このクラスで唯一、仲が良かったことがある。

 要するに幼馴染ってやつだ。隣に住んでいるという理由だけで、近づけられてしまう。それが嫌だろうと嬉しかろうと、俺達が幼い場合、距離を調整するのは親だ。周りにも沢山家があったにもかかわらず、そんな関係性になったのはきっと俺と絵梨花が同い年というのと、もう一つは親同士気が合ったから。俺から望んだわけではない。絵梨花だって同じだろう。

 ...でも結局、こんな事をずっと考えていたらクラスメートの名前さえ覚えられずに一年間が終わるのではないか。そう思って再び名前の羅列に目を落とす。

 ツカダタイスケ。

 今の席は出席番号順。真後ろにいて、同じた行から始まっている。顔を見る限り、彼も彼で、今は俺と同じ立場だろうか。

 周りがわからない。

 ...俺は、周りの人間関係なんて知らなくてもその人を判断する性格だろうか。

 ため息を付きながら前を向く。

 ちょっと経てば、周りに親友ができるだろうか。

 きっとできるとすれば、その人は俺から見る限り欠点がなく、周りの環境もいい。言い換えれば、俺が安心して関われる人物。もしそうでなかったら友達止まり。

 その価値観が変わったなら、今の俺は未来に対して何を思うだろうか。

 でもそもそも―...これ以上考えるのはやめておこうか。

 脳内にこぼれた憶測を必死に拭き取る。そもそも、今俺にはこれという悩み事はない。それだけは確かだ。

 この学年にはハーフはいないらしく、平仮名の名前も少ない。目立つのは漢字ばかり。珍しい名前とか、ないだろうか。

 ...こういう状況でも、教室の隅で本を読んでいると目立つらしい。彼も周りに話に行くのが難しいのだろうか。名前は...

 ヨシダ...これはなんて読むんだ?

 右には半角のカタカナで読み方が集められている。ワカバ。これでそう読むのか。まあ、無理はないと思う。

 身長は普通。メガネはしておらず、きっとこの先も、席替えをしても端で静かにしているタイプだと思う。少なくとも、今後一年間は。いくら新学期二日目とはいえ、ここから急激に性格の路線変更をするのは難しいだろう。表面的なものでなくて、オーラそのものの話だ。

 ...でもきっと、彼も彼なりに友達という友達はできるだろうし、俺もそうだと思っている。どれだけ時間がかかろうと、何もないまま、起こらないまま、卒業してしまうなんて言う事はないはずだ。

 それが学校の中であろうと、外であろうと、だ。

 キーンコーンカーンコーン。

 一回目のコールが二回繰り返された後。先生が入ってきたのはそこから数秒経ってからだった。同時に、ホームルームが始まる。

 一、二時間目に、校則、学校生活の大まかな説明がされる。今日は四時間、午前授業。他にもなにか話していたと思うが、それらはすべて耳から通り抜けていった。

『みんなよろしく』

 地味に肌が焼けていて、背が高く若々しい男の先生。後で知ったが、保体でなくて理科の担当なのだそうだ。

 みんなという言葉が脳内で反響する。

 俺はこの先生と合うだろうか。でもそんな事を考えつつも、きっとこの先俺が深くこの先生と関わることはないのだと、わかっていた。

 俺は、周りの人間関係からその人を判断する性格だと思う。

 キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。

 チャイムぴったりにホームルームが終わる。これは初日だけなのか、それともこの先生がいわゆるそういう先生なのか。とりあえず、後者を望んでみる。

 椅子を引きずる音が響く。三秒位でなくなって、代わりに話し声が戻ってきた。この人たちは、同じ小学校つながりとか、中学校入学が誕生とすれば先天的なものみたいな、そういう関係性にあるのだろうか。もし端から端までそうなら、俺は少し安心する。

 人生スケールで見れば学校は練習試合のようなものだと、信じているから。

 

 

 委員会。いつ決めるのだろうか。誰もいなければ、図書委員になると思う。小学校の時のまま行けば、男女一人ずつになるだろう。別に女子が誰だからと言ってきっと俺は気にしない。

 何枚もプリントが配られて、それを自分たちでホチキス止めしたこの冊子。最後の方の一枚に、生徒会を含んだすべての委員会の説明が並べられていた。図書委員会は、上から...四番目。

『全校生徒が読書に親しめる学校へ!』

 正直な所、図書委員になりたいというのには小学校の時そうだったからという理由しかない。でも事実として、そんなに高い志を持ってまで入るような事もないし、浮くだけだろう。

 そんなに本気でやりたいなら、せめて、部活じゃないだろうか。

 ただ、部活に入るかどうかさえ迷っている。こんなんでいたら、もはや練習試合にもならないのではないだろうか。

 相手がいないので、一年後まで試合は延期。

 なにかしらに本気になってみたい。それくらいの気持ちはある。持ち合わせている。その気持ちのやりどころがわからず、結局足かせになっている気分だ。

 よくわからない欲求不満に駆られるのは、今のうちだけだろうか。そういう事にすれば、多少は軽くなると思う。

 逃げ、か?

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