表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/36

18.本物

お読みいただきありがとうございます。


 五月二十二日


 俺は、最終的に何を求めているのだろうか。誰かからの信頼か?それとも自己満足か?

 ワカバの口から飛び出た名前、川田は、卓球部に所属していて学級委員らしい。頭が良すぎると一部の男子から持て囃されていて運動神経も良く、ただ授業中うるさいとこれもまた一部の男子からは嫌われているらしい。

 …まあ、俺みたいな男子からだろうな。

 入学してまだそんなに経っていないのにそんなに人間関係を広げていけるなんてよっぽどコミュニケーションが得意なんだろうな。

 俺の限りある友達の"網"の中でも川田の名前はでてきた。下の名前はなんだったっけ。そ…そうた?とかそんな感じの名前だった気がするがまあいいか。

―「友達つながりで一回話した事ある。」

 仲のいい友達(と俺)以外寄せ付けなさそうな絵梨花さえも関わった事があるのだ。よっぽどたくさん友達がいるだろう。

―「どんな感じだった?」

―「そんなに悪い人じゃなさそうだったよ。でもあんまり関わりたくはないかな」

 絵梨花だからそりゃそうか。と思いつつ、心の何処かで絵梨花の追加の返答を待っていた。

 少しだけわざと沈黙の時間を作ってみると絵梨花は何か思い出したように、思いついたように口を開き、言っていた。

―「…でもなんか、気が弱そう」

 まるで俺が言われているようなそんな気もしてしまったが何も言わなかった。確か、あのときは偶然帰りが一緒になってしまったときだったか?

 …一応、絵梨花とは仲はいいと信じている。

―「え、ほんと?」

―「なんていうか、んー……別にしゃべり方は弱くないんだけど、いざとなったら周りに流されそう」

 一回対面で話しただけでなぜそこまで言えるのだろうか。口調か何かで人の性格が分かってしまうのなら苦労しないと思うのだが。

 周りに誰かいないか確認した覚えがある。

 …まあ正直な話、それだけじゃないだろうな、と思ってしまった。絵梨花はちょっとでも優しそうなら気が弱いと判定しそうだ。

「これから第二回図書委員会を始めます。気をつけ、礼」

 内気というわけでもなさそうな、ただ気が強そうな男子委員長だった。図書室で木曜日の委員会が始まる。

 先月の委員会では図書室当番の曜日を決めた。クラスごとに決まっているわけでもなかったので決めるのにはかなり時間がかかってしまったが、絵梨花と一緒にならなくてよかったなと思った。自分の担当は金曜日、正直どこでもよかったから残り物である。

 この日はこの一ヶ月間の振り返りから始まった。一ヶ月間と言いつつ本当は委員会自体始まってから半月くらいしか経っていないのだが、毎回の流れなのだろう。

 一つのグループは一から三年生から一人ずつ出されて形成される。クラス数の関係で調整は必要だが、俺のグループはそれはいらなかった。男女それぞれで作られるから実質当番は二週間に一回。だから振り返れ、と言われているのはせいぜい二、三回の話だった。

 五分間のタイマーをセットする。一枚の紙に反省を書き出していく。このグループの二年生は背が高く、三年生は俺と同じくらいで眼鏡をしている。普通にしゃべっていて、内気なんだなと言う事が伝わってきた。

『機械の扱いに慣れていない』

 特にしっかり話すような事もしていなかった。だから正直、まだ名前を覚えていなかった。

「…なんかありますか?」

 二年生のほうが言う。多分まじめに考えようともしていないだろうが、適当な言葉を三人でつないでいく。

『貸し出しが滞らなかった』

 矛盾していないかと思いつつ自分で書いていた。

 ピピピと甲高い音が鳴り響く。委員長が止めて、グループごとに発表していくよう促した。ぼーっとしていたらこのグループに順番が回ってきて三年生が立っていた。どの班もそうだろうか。そもそも、これを真剣に聞いている人なんているのか?

 一連の流れが終わったあと委員長は言った。まだ始まってから十分ちょっとしか経っていないのに。

「最後に中橋先生お願いします」

 一年生の先生ではない。ただ時々見る気がする。この前も帰り際に廊下で見かけたな。

 中橋先生、が話した事は一つだった。まずは一ヶ月間お疲れ様でしたという導入で話が進んでいく。

「これから定期的に図書室の本の点検を始めていきます。」

 カウンターを通さないで本を持っていって、貸し出す本の限度を超す生徒が出ないようにするためだそうだ。その限度とやらは十冊とかなり多めであったが、それを超えようとする人なんているか?

「いつも貸し出しを行っているカウンターの奥に、その当番表を貼っておきます。その日に委員長が点検の仕方についてお伝えしますので、放課後によろしくお願いしまーす」

 幸い、今一斉にではなかった。できる限り早く家に帰りたい。

 先生が委員長にグッドサインを出す。

「これで第二回図書委員会を終わります。気をつけ、礼」

「「ありがとうございました」」



 二番目だろうか。自分たちは六月の点検の当番だった。一通りやる事を終えて委員長から点検の説明を受けた後作業を始めた。委員長には本の数だけ把握しろと言われていたのでそこまで時間はかからなかったものの、それでも二十分はかかった。作業を進める途中で、俺はある本を見つけたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ