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005.こんなの絶対おかしいよ

「ヘリコプターが…………あれ? あれ? あれ?」



 ピョンピョン跳ねたり、訳の分からないリアクションをしている。

 伊白(いしろ)のヤツ…………ワザとか?

 ワザとなのか?

 見えそうで見えないスカートの中…………これでワザとやっていないと言うのか?

 意味の分からない仕草が、オレの心の奥深くにある禁断の階段を1段ずつ減らしていく…………。



「どうしたんだ? ヘリコプターとやらがやって来たんだろ? 素直に喜べばいいじゃないか」

「そうなんですけど、そうじゃなくて…………予定通りにヘリコプターはやって来ているんだけど、聞き慣れた音なんで…………こんなの絶対おかしいよ」



 伊白(いしろ)は待合所の入り口を警備している軍人に何か知っているかと質問を投げかけるかのようなウルウルとした視線を送った。

 軍人が気まずそうに視線を外したのは偶然じゃないだろう。


 つまり、ここまでの伊白(いしろ)の反応が演技でなければ、伊白(いしろ)が預かり知れぬことが起こるってことだ。


 そうなるとオレにとってはよろしくないことが起こる可能性は高い。。

 これから国同士で友好を結ぼうとしているとは言え、一応ここは異世界。

 それなりに警戒はしていたが、もう少し警戒レベルを少し上げておかなければならない。



 一応、こんなことがあろうかと、異世界を渡れるかはテストをしていないが、転移アイテムを持って来ている。

 転移アイテムのテストをしてみたい気はするが、使わずに済んだ方が良い。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」



 いきなり奇声を上げた伊白(いしろ)

 その不可解さにオレの思考はフリーズした。

 伊白(いしろ)は待合所の扉を勢いよく開けると、待合所を飛び出して行ってしまった。



     バタン



 伊白(いしろ)が開け放った待合所の扉が音を立てて閉まった。



     カチ、コチ、カチ、コチ、カチ、コチ、カチ、コチ



 時間と思考が動き出す。


 軍人と二人っきり…………オレにそういう趣味はない…………と言い切れなくなっている自覚はあるが、今はそう言う話ではない。

 ハメていないのにハメられたのか…………ってそうじゃない。

 普通にハメられたのか?


 伊白(いしろ)のことを信用したいが、まだ信用し切れていない。



 軍人は命令は絶対。



 本当かどうかは知らないが、伊白(いしろ)はコネで入隊したと言っていた。

 『コネ入隊だから、経験不足でも分不相応な階級を付けられて楽な仕事でお給料が良いんですよ』…………そう言っていたのが本当なら、軍の上層部には組織の命令系統に関係なく伊白(いしろ)に命令出来るヤツがいると言うことだ。

 そうだとすると、ここ…………待合所に取り残されるのはマズい。

 魔法的な仕掛けはないように感じるが、オレに認識出来ない何らかの仕掛けがあっても不思議ではない。

 もし、ここでオレの能力やアイテムを無効化されていた場合、扉の鍵を掛けられるだけど、オレは何も出来ずに捕獲される可能性がある。

 オレは警戒しつつ、待合所を出ようと動き出す。



 それに合わせるように軍人が動き出した。

 待合所から外に出る気だ。



 『悪いな』…………そう思いながら、相手を身動きできなくしてからの、いつもの必勝パターンに持ち込む。



一時完全無力化(スタン)



 |目標を目の前の軍人に定めて《・・・・・・・・・・・・・》、いつも通りにオレがチューニングして|極限まで効率化させた術式・・・・・・・・・・・・を唱えた時と魔力が寸分違わない動きをするよう魔力を意のままに操り、術式も発動のトリガーとなる魔法名も口にしない最速の手段で魔法を行使できる完全無詠唱で魔法を放った。



 きまった(どや)。



 いつものように魔法が発動した…………そう、スッと魔力が体から消える感覚がうっとりするほど心地良い。

 この感覚はクセになりそう…………いや、とっくになっているな。


 うっかり伊白(いしろ)の脳天気さに騙されそうになったぜ。

 くっくっくっ世界最強の賢者のオレを出し抜こうとするなんて千年早い。


 身動きが取れなくなった軍人にドヤ顔を見せつけて………………あれ?

 軍人の歩みが止まっていない。

 そう、動きではなく、歩みなんだよ。

 動けなくなって倒れ込んでいるのなら納得ができる。

 しかし、普通に歩いているんだ。

 信じられるか?


 魔法の発動に失敗した?

 そんなはずはない。

 何百、何千、何万回も繰り返してきた必勝パターンなんだぞ。

 ミスるなんてありえない。

 こんなの絶対おかしい。


 もしかして、すでにこの部屋に魔法対策が施されているのか?

 いつ魔法が分析されたんだ?

 伊白(いしろ)に頼まれて、演習場でズゴォォォォンバゴォォォォンと盛大に魔法を放った時に分析されたのか?


 調子に乗ってたオレはマヌケだ。

 そんなマヌケであっさりと騙されたオレは無防備にこんな危険なところにのこのこやって来たってわけか………………。



     キィィィィィィィィィィィィィィィィィィ



 待合所の扉が開ききった。

 その扉は…………閉まらないように軍人が押さえてくれている。



真技(まぎ)2尉が騒がしくして、申し訳ないです」



 そう言うと、ぺこりと頭を下げてきた。

 あれ?



「ああ」



 とりあえず、答えて、待合所から出た。

 よく分かんないけど、こんなの絶対意味分かんないよ。


 とにかく、まだ騙されたと判断するには早すぎたようだ。



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