003.国名きまったよ
あ、そうそう、呼び名だ。
呼び名をどうするかだ。
真技のことを、提案通り、伊白と呼ぶのはいい。
問題なのはオレの呼び名だ。
伊白が言うように、国王陛下でも全く問題無いんだよ。
立場的な意味ならな。
オレが住む世界では、世界は地域ごとに別れていて、それぞれに地域主と言う存在が地域を管理するための地域コアを守っている。
地域主を倒すと地域コアと倒した後に再生する地域主の所有者となることができるのと地域の命名権を得ることができる。
そして、地域を命名することで地域の所有者となれるんだ。
地域の中には区域が含まれているが、その説明は別の機会にしておくぞ。
で、どう言うことかというと、オレは大きなダンジョンを作るための手段のひとつとして地域主を倒している。
地域コアと地域主である赤龍王と3匹の地域主の所有者となっているんだ、
だから、地域の名前…………現実的には国の名前になるのかな?
それを命名することで地域で一番偉い人になることができる…………つまり、王様と呼ばれてもおかしくは無い立場なんだよ。
「で、国王陛下…………」
「落ち着かねぇから、ギルマスでいい」
「分かりました。では、ギルマス、国名は決まりましたか?………………だんまりって言うことは、まだ、命名していないってことですね。国名なんて、さっさと決めちゃいましょうよ」
「そう言うの苦手なんだよ」
「じゃあ、ボクが決めちゃって良いですか? 国名を決めることができるなんて、こんなチャンス滅多にないですし、ボクが決めちゃいますよ。それでも良いですか? 今日の行事は朝廷も動いているから、ここで国名が決まっていないってなったら、ボクの首が物理的に飛んじゃうんですから良いですよね?」
そう言うと、てへへって感じの笑顔を魅せてきた。
これをノーと返事が出来るヤツっているのか?
「分かった。分かった。伊白に任せるよ」
伊白と呼ばれて、ちょっとニヤける伊白。
出会って数日だが、男か女か関係なく人柄では惚れてはいる。
これは間違いない。
だから、オレはノーマルだ。
理路整然ではないが、感情に矛盾があってもオレはノーマルだ。
「えっと、地域…………でしたっけ? その地域って特徴とかありますか? 一言で言い例えることができる特徴とかあればいいんですけど…………」
「空飛ぶ島だな」
「ぷっ…………失敬。………………国王陛下…………国名はラピュータではどうでしょうか?(キリッ)」
プルプルとニヤけるのを我慢しているのが丸分かりだ。
そんな表情を見てスッと頭が冷える。
やっぱりオレはノーマルで間違いないな。
「おい」
「ラピュータ王国…………ラピュータ王…………ぷっ」
マイナスな感情が膨れ上がる。
憎さ余って可愛さ爆上げ………………って違う。
怒りたいんだけど、怒れないんだよ。
調子が狂う。
憎まれ口でも言っておかないとやってられないぜ。
「おい、バッサリと斬られたいか?」
「すいません。すいません。すいません」
「言い訳があるのなら40秒間だけ聞いてやる」
「ひっひっふぅ、ひっひっふぅ…………落ち着きました。それでは、国王陛下…………説明させていただきます。この世界では小さい子に聴かせる童話の中にラピュータと呼ばれる空飛ぶ島の話があってですね。小さい頃、母がその話を面白おかしく聴かせてくれたのを思い出してしまったんですよ。本当にすいませんでした。実家に帰ったら、母をキツく叱っておきますので、どうかお許しください」
「分かった。分かった。今回は許す。だから、母親とは仲良くやれ」
なんかモヤモヤするし、大人気なかったので、ちょっと頭を冷やす。
種族的な寿命を考えればオレの方が子供なんだが、実年齢では伊白よりオレの方が年上だしな。
大人の対応だ。
「国王陛下の寛大な心に感謝いたします」
「で、実際ラピュータと言う名前はどうなんだ?」
ほんの少し気になるので最終確認のために聞いておく。
「そうですね。こっちの世界では空飛ぶ島と言えばラピュータとラピュータと言えば空飛ぶ島というくらい認知されていて、まだ未定ですが、異世界に通じていることを国民に告知する時に、架空の国が本当にあったと話題性もあるので、良い名前かと思います…………デス。」
「おい、なんで最後が片言なんだよ。分かった。分かった。国名はそれでいい。でも、今後、国名の由来を聞かれたりしたら、今日のことを事細かく話してやる」
今度はこっちが少しニヤついた表情を見せてやった。
「それと、伊白…………公の場は仕方が無いが、オレのことはギルマスと呼んでくれ」
ギルマスくらいならまだ良いが、それ以上の身分だと周囲に知られたら厄介事が増えたりして面倒だからな。
「分かりました。了解です。ギルマス♪ 双方の呼び名がきまったってことで、これからはメインイベントの話です。今日は、国家承認、政府承認、交戦団体承認、信任状捧呈式など、行事が目白押しなんですから、がんばっていきまっしょい」
「なんだよ、そのがんばっていきまっしょいってヤツは…………」
思わず笑みがこぼれた。
国同士はどうなるかは未知数だが、こんな関係が結べれば…………と思った。
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