029.異世界人異世界に立つ!
桜守さん以外のみんなの転移門のアクティベートが終わった。
カードで触れるだけだしな。
その後、紅葉さんと桜守さんが料理の準備のためにと買い出しに行って戻ってきたところだ。
買い出ししてきた荷物は、桜守さんが持っていたが、さすがに女性が重い荷物を持っていると言う見た目が精神衛生上悪かったので、オレがアイテムボックスに収納しておいた。
そして、オレは転移門の説明を始めた。
「まず、行きたい場所のイメージする。文字でもいいし、風景でもいい。今だったら、異世界でもいいし、ラピュータ王国でも大丈夫だと思う。そんな感じでイメージできたら、転移門を見る。そうすると転移先の風景が見えると思う。オレの机が見えるな。この状態で転移門をくぐれば、転移先に行けるんだよ」
「見える見えるのじゃ。これでくぐればいいのか?」
「ああ、問題無い」
「ボクも行く~」
「私も失礼します」
「桜守さんも行きましょう」
紅葉さんは桜守さんと手を繋いで転移門をくぐっていった。
桜守さんは、転移門のアクティベートできなかったんだよ。
いくら精巧に出来ていたとしても、人工物だと言うことだ。
みんなが転移門をくぐったのを確認して、オレも転移門をくぐった。
「ギルマス、もう戻ってきた…………ありゃりゃ、人がたくさんいる」
「ああ、向こうの世界の人たちだ」
「へ~、あたしはライムだよ。スライムだけど、悪いスライムじゃないよ」
人間形態から、無害そうな球体っぽいスライムの姿に擬態した。
そう、無害だけど、無害そうなんだよ。
本来の姿って、粘体になるのかな?
クラスが魔王なんで雰囲気がおどろおどろしいんだよ。
だから、無害なんだけど、無害そうには見えないから、擬態して貰っていた方が周りには好印象を与えるんだ。
「桜じゃ」
「小官は榁町幕府国防陸軍中部方面軍三河松平駐屯地調査連隊特殊武器防護隊部、真技伊白2尉であります」
「私は日之鳥みかんと申します」
「ライム様、御鏡紅葉と申します。以後お見知りおきを……」
紅葉さんのセリフに反応をしたライムは、人間形態に戻った。
そして、オレに方に近付いて………………。
「御鏡? ギルマス、向こうで結婚したのか?」
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「たまたま、名字が一緒だったと言うか、遠い血縁だったらしいぞ」
「へぇ~。で、こっちはネコ獣人?」
「いや、普通の人種だ」
と言うか、伊白はなぜこのタイミングでネコ真似を?
それにしても、聞いてきたライムの反応が薄すぎる。
「ネコ獣人? ネコ獣人いるのか?」
「いるぞ。ここにはいないが、欲しいのなら買ってくるぞ」
「狩ってくる?」
「『狩ってくる』ではなくて、購入してくるだな」
「売っているのか?」
「ああ、獣人は子だくさんが多いから、親が面倒を見切れなくなると、売りに出すんだよ。ちなみにこっちの世界だと極々一般的な行動だぞ。需要も供給もあるからな。実際、売られた方が幸せな場合が多いんだよ。単純作業をやってくれる労働力やある程度鍛えればトレジャーハンターの斥候くらいにはなるからな。よく『猫の手を買いたい』って言うだろ?」
最後のこっちの世界ではよく言われているセリフを決め顔で言ってみた。
「言わない言わない」
「言わないのじゃ」
「聞いたことありません」
「言いませんね」
みんなトゲのある感じの声音だった。
そんなセリフに、オレは少しばかし表情を曇らせた。
もしかして、人身売買に対して否定派なのか?
確かに、こちらの世界でも少数派だが人身売買に対して否定的なヤツもいる。
考え方は、色々だし否定はしない。
「つかぬことを聞くが、みんな人身売買否定派なのか?」
直接的に聞いてみるた。
結果、こちらの世界だと商売として成り立っているというのに、向こうの世界では、人身売買は犯罪らしい。
犯罪と言っても一応商売か…………合法かそうでないかの差しか無い。
でも、合法で手っ取り早く労働力が欲しいと思ったら、買っちゃうよな?
「こっちの世界だと、労働力は雇うより、買った方が早いし、安いし、【契約】魔法で縛ることができて色々と安全なんだよ。これはごく一般的な考えで、今はライムが受付嬢の真似事をしていてくれているが、本格的にここを稼働させるためには、奴隷を買うことになると思う」
常識が違う世界…………当然、考え方も違う。
だから、オレは真剣な表情で正直に話した。
「色々と思うところがあるのじゃが、分かったのじゃ」
桜が代表して答えた。
神妙な顔をして…………口にしたようにやっぱり思うところがあるのだろう。
「で、ネコ獣人をいつ買ってくるのじゃ? わらわは早く見たいのじゃ」
いきなりテンションがあがった桜。
ちょっと桜の切り替えが早すぎてついていけないんですけど…………。




