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異世界だんじょ……ン?攻略!? ギルマスのしゅき録  作者: 辛味亭
第1章、装備がなければ作れば良い
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026.突撃!隣の異世界ご飯の前準備 前編

「えっと、向こうの世界に行くんだよな?」

「そうじゃ、絶対行くのじゃ。今日こそ絶対に行くのじゃ」

「と言うことは、三河松平駐屯地みかわまつだいらちゅうとんちの出入りにこのIDがいるんじゃないのか?」

「そうですね。さすがにIDがないと出入りは難しいかもです」



 伊白(いしろ)がそう言うと、(さくら)紅葉(くれは)さん、(さくら)(もり)さんがIDを見せてきた。

 って、よくよく考えれば、当然持ってるよな。

 ()(はぎ)(がわ)と言う川に掛かっている(ころ)()(おお)(はし)を越えたところにある三河松平駐屯地みかわまつだいらちゅうとんちの西門から、株式会社トレジャーハンターズギルドのオフィスまで徒歩で20分程度。

 昨日は別々に来たが、大抵伊白(いしろ)と話ながら来ている。

 不用心と言えば、不用心だが、結構楽しい時間だ。


 さすがに(さくら)たちは歩いては来ないだろうが、三河松平駐屯地みかわまつだいらちゅうとんちまではヘリコプターで来て、そこからは何らかの手段でここにいているのだろう。

 ヘリコプター以外にも、ここへ来るための便利な移動手段があるのなら話は別だが、そんなのがあるのなら、最初からヘリコプターなんか使わないだろう。


 と言うことで、余計な心配だったかも知れない。



「それでは、ここでお暇させていただきます」



 そう寂しそうに別れの挨拶を告げたのは日之鳥(ひのとり)みかんさん。

 日之鳥(ひのとり)みかんさんは、唯一IDを見せてこなかった。

 つまり、IDを持っていないってことだ。


 オレが何とかできればいいが、さすがに軍の施設を出入りするためのIDだ。

 もちろん、それを自由にする権限はない。



「すまん。オレが何かできればいいんだが…………本当にすまん」

「いえ、いえ、できればご一緒したかったのですが…………(さくら)様の宿題の件もありますので…………」



 残念そうな表情でそんなこと言う日之鳥(ひのとり)みかんさん。

 何とかしてやりたいが、クラスが賢者のオレでもこれは無理だ。


 でも、やれることはある。

 いや、あったんだよ。

 そう………オレたちのやり取りをニヤニヤしている(さくら)に丸投げすることがな。



(さくら)……なんとかできないのか?」

「できるのじゃ」

「だから、なんとかしてやって欲しいんだ」

「だから、できるのじゃと言うておる」

「へ?」

「テレレレッテレー、パスポート、ビザ、在留カードオールインワンセット~~」

「ただのカードじゃねぇか」

「仕組みも一緒でデザインも寸分も代わらぬが、全く別のモノじゃぞ」

「いや、その説明で別のモノって言われても、納得も理解もできんぞ」

「それはラピュータ王の無知せいじゃ。それを人のせいにしちゃダメじゃぞ」



 こないだ聞いたセリフを伊白(いしろ)の兄の物真似でまた聞かされる羽目になるとは…………。



「そもそも、そっちの世界のカードがなぜここにある? おぬし…………ギルマス以外の異世界人が他におるとでも言いたいのか?」

「いや、そこまでは言っていない」

「これは、あおいグループの会長である伊白(いしろ)の姉がカードを元に作ったモノじゃ。取り急ぎじゃったから、禁じ手を使わせてしまったがな。」

「禁じ手?」

「あやつは、自分しか作れるモノは絶対に世の中に出回らせぬ。それはあやつのポリシーじゃ。もし自分しか作れるモノが世の中に出回って、生活する上で必要不可欠なモノになった後、作れるモノがいなくなったらどうなる? 生活が成り立たぬようになるじゃろ? もちろん、HP回復薬(ポーション)もしかりじゃぞ。って、話が少し横道にそれたな。つまりじゃ。現在このカードは作れるモノがあやつ一人しかおらぬが、『伊白(いしろ)も使いたがるじゃろ』との一言で無理を聞いて貰ったわけじゃ」

(さくら)ちゃん…………」

「そう言えば、カードを元に作ったと言っていたが、伊白(いしろ)の姉にカードを見せた記憶がないんだけど?」

「聞けば答えが返ってくるとでも? くくく、わらわは知っておるが、さすがにただではな…………。真技(まぎ)んとこの会長との約束…………協力して貰えるのなら教えてやっても良いのじゃがな…………」



 返答に困る。

 ただ(さくら)との会話で分かったのは、伊白(いしろ)の兄の存在については国のトップである(さくら)でも気を使っているってことだ。



「で、日之鳥(ひのとり)の小娘はどうするのじゃ? 行くのか行かぬのか? どっちにするのじゃ?」

「行かせて頂きたいです」

「ほれ、カードじゃ」

「このような貴重なモノありがとうございます」

「別に大したことはないのじゃ。所詮、カードはカードじゃ。1枚で使い回しもできるが不便じゃろ? ただし、今日一日だけじゃぞ。いくら異世界迷宮攻略対策本部の活動が本格的になったら関係者には配るつもりのモノじゃとは言っても、まだルールも決まっておらぬのじゃ。わらわの監視が行き届かぬところで、使われても困るからな」

「はい。それでも、(さくら)様ありがとうございます」

「分かった。分かったのじゃ。ギルマスも、これで良いのじゃろ?」

「ああ、(さくら)ありがとう」

「くくくく、貸しじゃからな。では、早速、返してもらうのじゃ」



 いきなり、貸しを返してくれと言われても、ちょっと不安だ。

 (さくら)のことだから、悪いようにはしてこないと思うのだが…………。




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