023.サンバードホールディングス株式会社からの相談 その1 中編
「申し訳ございませんでした」
もしかして、これがD・O・G・E・Z・A?
マジで土下座?
すげー。
勇者が奥さんたちの前でしていたとかしていないとかの言い伝えは知っている。
最上級の謝罪スタイルとか何とかかんとか…………とにかく言い伝えは本当だったんだ。
でも、ご先祖さんがこれをしていたかと言うと…………かなり複雑な気分だ。
「別に謝る必要は無い。ただの言葉遊びじゃ」
「し、しかしながら…………」
「わらわが良いと言っているのだから良いのじゃ」
「は、はい、申し訳ございません」
「だから、謝る必要なないといっておるじゃろ」
「は、はい」
「まぁ、その代わり、もう少し言葉遊びに付き合って貰うぞ」
「う゛っ」
怖い。
マジで怖い。
異世界の人種は怖いぞ。
土下座を見て感動している場合では無かった。
伊白も怖がっているのかも知れない。
だって、オレの服の裾では無く、腕にしがみ付いているんだぜ。
やばい、やばい、軍人だけあって胸板があると思ったが、異世界人の筋肉ってこんなに柔らかいのか?
それに伊白からいつもの良い匂いがする。
ちょっと役得…………でも怖いモノは怖い。
「日之鳥の小娘…………確か三女の『みかん』じゃったな」
「ひゃい」
少しうわずった声で返事をしている日之鳥みかんさん。
「わらわの記憶が正しければ………………」
「本社開発部部長です」
紅葉さんがさりげなくフォローを入れる。
桜が紅葉さんに視線を向けると、紅葉さんはドヤ顔で返していた。
「そうそう、そうじゃ、そうじゃ、本社開発部部長じゃ。で、その本社開発部部長様が、コンサルティング会社にどのような商談をしに来たと言うのじゃ? 答えれるのなら答えてみよ」
答えても、黙っていても結果は変わらない気がする。
で、日之鳥みかんさんは沈黙で答える方を選んだ。
「まあ良い。この程度のこと、わらわじゃなくとも予測はつく。どうせ、HP回復薬の製造方法を教えてくれとか、それがダメなら独占販売させてくれと言うところじゃろ? 違うか?」
「申し訳ございませんでした」
「だから、別に謝る必要は無い。ただの言葉遊びじゃと言っておるじゃろ」
「し、しかし…………」
「くどい。むしろ、ここからが本番じゃ」
「う゛っ」
口角を上げる桜…………もしかして、部屋の温度が下がった?
『えあこん』とか言うのが、部屋の温度を自動で調整してくるとか言っていたので、その『えあこん』が室温を下げたのかも知れないな。
「で、ギルマスと伊白はなぜ、こっち側で座っておるのじゃ? 『ここからが本番じゃ』と言ったじゃろ?」
オレと伊白は目を見合わせた。
そして、同時に首を傾げた。
意味が分からない。
「桜様、さすがにそれだけじゃお二人とも理解出来ないかと…………」
紅葉さんがフォローしてくれた。
「はあ…………しょうがないのぉ。じゃあ、尋ねるぞ。ギルマス。『HP回復薬の製造方法を教えてくれ』と言われたら、どう答える?」
桜の聞き方から判断するに、納得はできないが『ノー』と答えるのが正解だろう。
知性でも理性でもそれは分かる。
「別に隠すようなことじゃないし、普通に教えるぞ」
そう、オレはウソが吐けないのだ。
力の代償だから仕方が無い。
「素直じゃな。…………何をニヤけておる。別に褒めているわけではないぞ。で、伊白はギルマスの答えを聞いて、どう思った?」
「ギルマスがそう言うのなら、そうなのかなって…………」
「と言うことじゃ。これで、向こう側に行く理由が分かったじゃろ?」
「いや全然」
「うんうん」
「桜様…………」
「紅葉さん。大丈夫です。理解はできていませんが、桜的には非常にまずいことをオレがしでかすところだったってことでしょう。だから、桜の言う通りにしますので…………な、伊白」
「ギルマスがそう言うのなら…………」
「素直じゃな。…………って、今度は褒めておるのに…………まあ良い。では、次は日之鳥の小娘に問うぞ。聞いての通り、わらわがここにおらなんだら、おぬしが言う商談が成功しておったわけじゃが、そうなった場合、HP回復薬をいくらで販売するつもりじゃ?」
「そ、それは…………」
「四肢欠損を治すことのできるHP回復薬。いくらでも出すモノがおるじゃろうな」
「おい桜、さすがにHP回復薬では四肢欠損までは無理だぞ。そこまでヒドいと霊薬を使わないと治らんぞ」
「ギルマス」
「あ…………」
「くくくく、まだ上があるらしいぞ。よかったのお、日之鳥の小娘よ」
霊薬は素材集めが大変だし、作れる人材も少ない、もし買うとなるとかなりの金額になると思われる。
その霊薬とは違って、素材が集めやすく、薬草に魔力を込めるだけで作れて、流通量が非常に多いHP回復薬はかなりお安い。
買取価格が一定で金策でよく使われるアイテムだから、在庫が多いんだよ。
だから、こちらの世界では、そこまで重要なアイテムだとは認識していなかった。
つまりだ。
向こうの世界からこっちの世界に大量に余っているHP回復薬を持ち込んで販売すれば、一財産以上の利益が出るってことだろう。
くくく、これは笑いが止まらないぜ。
って、それを桜がするなってことだろう。
オレにはどこまで影響が出るかは想像も出来ないが、それこそ経済を破壊するほどのことかも知れない。
「さて、SNSを賑やかせておるこやつの正体…………近日中に大々的に発表するつもりじゃが…………ギルマス、問題無いな?」
「ああ、桜に任せた。悪いようにはしないんだろ?」
「うむ、確かに、悪いようにはせぬ………………ここは、『任されました』と答えるべきじゃったか?」
「さ、桜ちゃん!?」
焦って顔を真っ赤にする伊白。
まぁ、人に真似されるのは、なんとなく小っ恥ずかしいからな。
「くくくく、日之鳥の小娘も薄々気付いておると思うが、何を隠そう、こやつ、御鏡聖治は異世界人じゃったのじゃ」
しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん
「はい、そうではないかと想定はしておりました」
「つ、つまらんのぉ。おい、ギルマス、他に持ちネタはないのか?」
「持ちネタと言われてもだな…………」
「しょうがないヤツじゃ。仕方がない。では、わらわが、ん、ん…………あ、あ、ん、ん」
喉の調子でも悪いのか?
こういう時は、効くんだよな、早めのHP回復薬。




