022.サンバードホールディングス株式会社からの相談 その1 前編
長いタイトルを変更しました。
初期案はこれですね。
「株式会社冒険者ギルドは異世界でも平常運転です」
「異世界」しか残っていないし「冒険者」要素は本文から消えてるし
「この状況説明して欲しいのですが?」
そう言ってきたのは、サンバードホールディングス株式会社、本社開発部部長の日之鳥みかんさん。
綺麗な明るく茶色いふわっとしたくせ毛とは思えないくせ毛のセミロングヘアで、身長は160cmあるかないかくらいだ。
伊白は定位置になりつつあるオレの隣にいる。
かなり微妙な距離感だ。
下手に動くと伊白に触れてしまう。
と言うか、なんでオレの服の裾を摘まんでいるんだ?
異世界の男同士ではこう言うのも当たり前の行動なのか?
オレもこの状況を説明して欲しいぞ。
「ただ単にブッキングしただけであろう。ここの窓口になっている真技んとこの紫音のヤツが、わらわに対してノーと言えずに予定を入れたってとこじゃろうな。わらわはおぬしたちが終わるのを待っておるから、要件があるのなら、早く済ませてくれればよいぞ。ほれ、早くせい。紅葉、お茶を頼む。高そうなヤツでな」
「はい、かしこまりました」
オレを挟んで伊白の反対側で、オレにもたれ掛かりながら座っているのは桜だ。
なぜ、ここにいるかって?
オレも知らん。
だって、オレと伊白が、朝9時ちょっと前に、株式会社トレジャーハンターズギルドのオフィスの中に入ったら、すでに桜がいたんだよ。
もちろん、紅葉さんと桜守さんもな。
ちなみに、あおい通商の社長が伊白の姉のひとりである次女の真技紫音さんで、その紫音さんが桜が言っていた通り、ここ株式会社トレジャーハンターズギルドの窓口になってくれているらしい。
「承知いたしました。しかしながら、我が社にとって大事な商談ですので、いくら桜様とは言え、部外者の方は遠慮していただけると嬉しいのですが…………」
「わらわは部外者ではないぞ。この会社の株式を持っておるからな。筆頭株主ってヤツじゃな。だから、遠慮せずに話すがよい」
株式?
筆頭株主?
何それ美味しいの?
そう言えば、この場所の名称に『株式』て言うのが入っていたな。
う~ん、よく分からん。
「では、桜様がお先に…………」
「わらわが先で良いのか? わらわの相談事は長くなるぞ、仏心を出して人命を優先したせいで世間が色々と騒いでおってな。ちぃーっとばかしのっぴきならない面倒なことになっておるからな」
「う゛っ」
「と言うわけで、見当もつかないほどの時間が掛かっても良いのなら、別にわらわが先でも良いぞ。どうせ早かれ遅かれ発表せねばならぬ内容じゃからな、ただ、わらわの一存だけでは決めかねる内容でな。そんな国家機密レベル6とか7とかの内容を日之鳥んとこの小娘は聞きたいのか? そんなに聞きたいのなら、聞かせてやらぬこともないがどうする?」
「では、私が先に…………。でも、その………先に商談をしたいのは山々なのですが、さすがに…………桜様の前では」
「なに? 国のトップの前で話せぬような商談じゃと? それは本当に商談か? もしかして我が国の経済を破壊に追いやるような悪巧みではあるまいな。紅葉……」
「ダメです」
「まだ、何も言っておらぬではないか」
「桜様のことですから、『国家反逆罪で捕まえよ』とか仰るに決まっておりますから、お止めいたしました。我々の一族相手なら冗談で済みますが、一般の方を相手にはお控えください。と言うか、いい加減慣れてくださいまし」
「べ、別に全てが冗談と言うわけでも無いのじゃがな。と言うか、慣れるためには、もうちょっと外の世界をじゃなぁ」
「無理です。その代わり、聖治様関連では融通を利かせているつもりですが? 納得いただけないのなら、そちらの方も…………」
「分かった。分かったのじゃ。今のままで良い。さて、ちと真面目にやるかのぉ…………日之鳥んとこの小娘よ」
「は、はい」
桜を纏っていた空気が張り詰めた雰囲気に変わった。
オレも背筋を伸ばしそうになったぞ。
「日之鳥んとこの小せがれが…………ちゃんと本名の不死鳥と呼んだ方がよいか?」
「いえ、小せがれの方が父も喜ぶかと思います」
「分かった。その日之鳥んとこの小せがれが考えそうなことを想像するに、わらわに恩を売るためによくわからん異世界迷宮攻略対策本部のスポンサーになったが、どうせなら払った金額に見合う見返りが欲しいと、で、たまたま、あおい通商の社長の真技紫音…………こやつ伊白の姉にここを紹介されて、ダメ元でもいいから、他のスポンサーを押さえて、どうやったら分配が多く貰えるかと言う相談をして来いと言われて、おぬしはこの地に前乗りして、昨日の事故にあったと、ここまででどこか間違っておるか?」
「いえ、概ね合っています」
「そうじゃろ。そうじゃろ。じゃが、ここからは日之鳥んとこの小せがれだけの思惑だけでなく、おぬしの思惑も入っておるはずじゃ。おぬし、今日鏡を見たか? おぬしの顔は欲に塗れておるぞ」
「そ、そんなことは………………」
「で、おぬし、今日ここへ何しに来たのじゃ?」
「だ、大事なしょ、商談を…………」
「ここはコンサルティング会社と分かっておって商談目的でここに来たのか? ここに自販機でも置くつもりか?」
「あ…………」
「うむ、確かに自販機はないと困るのじゃ。せっかくじゃ商談してやってもよいぞ。真技んとこの紫音には、異世界迷宮攻略対策本部に関しての相談がある場合はここへ案内せよ申しつけておったのじゃが…………『わらわのミス』か『真技んとこの紫音のミス』か分からんしの。ちなみに日之鳥んとこの小娘、おぬしはどう思う?」
こんなピリピリする空気の中、オレなんでここにいるの?
もしかして、オレ…………要らない子?




