002.第一異世界人
気まぐれ投稿
「榁町幕府国防陸軍中部方面軍三河松平駐屯地調査連隊、真技伊白2尉入ります」
ギルドの建物内に入ってきたのは、真技伊白。
真技が姓で伊白が名前と言う、オレが産まれたところと同じ姓が前に来ると言う非常に珍しい命名規則の人種だ。
オレが一番最初にあった異世界人でもある。
なんでも国防軍に所属しているらしい。
で、その国防軍の敷地の一角にダンジョンドアが繋がったんだ。
ダンジョンドアをくぐったので、こっちの世界…………オレの感覚から言えば異世界側からはギルドの建物は見えるが触れることは出来ず、ダンジョンドアだけ触れることと開閉が出来ると言うことだ。
正直、よく分からない。
ダンジョン自体も活用する方法くらいしか分からないしな。
で、話を戻すと、ダンジョンドアを見つけた真技伊白がそのダンジョンドアをくぐってオレがいる世界にやって来た。
そして、オレたちは出会った。
真技伊白は、手入れが行き届いている黒髪の短髪で身長は140cmくらいで華奢でありながら軍人だけあって胸板も有り筋肉質でかなり鍛えているが中性的で凄くボーイッシュ…………って、ボーイッシュと言う言葉は失礼かも知れないが、とにかくかっこカワイイ感じがする少年…………いや、年齢は23歳と聞いているので、好青年と言っておこう。
オレが女だったら間違いなく惚れているだろう。
まぁ197cmの女に言い寄られたら困ると思うがな。
とにかくだ。
まだ数回しか会っていないが、真技伊白の人柄も結構気に入っているので、男同士だが変な意味ではなく惚れていると言っても過言ではない。
「なげぇよ。って、色々ツッコみたいが、ひとつ答えてくれ」
「少しは省略してるんですけど、やっぱ長いですよね。で、質問ですか? ボクが答えれることなら、全然構わないですよ~」
毎度のことながら脳天気だ。
でも、いつもと違うところがある。
そう服装だ。
いつもは軍服…………いや、今日も軍服を着ているんだろうが、雰囲気から察するにこれは礼服とか正装の類いだろう。
で、礼服や正装だから違うのでなく、いつもはズボンだが、今日はスカートを穿いているんだよ。
これが異世界ギャップと言うヤツなのか?
オレがいる世界では男はスカートをまず穿かない。
趣味で隠れて穿くヤツはいるだろうが、礼服や正装で穿くヤツなんて想像出来ない。
直接聞くのもあれなんで、失礼にならないように少し回りくどく、もしかした真技伊白が女性だったら良いなと言う淡い期待を隠しながら聞いてみる。
「こっちの世界では、男でもスカートを穿いたりするのか?」
オレの質問に一瞬キョトンといった感じの表情を魅せたが、穿いているスカートを指先で摘まみながら和やかに答えてきた。
「そうですね。ボクのお兄ちゃん…………じゃなくて、兄はよく穿いてますね。普段はそうでもないんですけど、仕事などで国や会社のお偉いさんと会うときは必須っぽいですね。仕事ん時はビシッときまっていて身内ながらも惚れ惚れしちゃいますね。えっと、スポンサー…………スポンサーで分かりますか? パトロンみたいなモノで、個人ではなく企業がパトロンになっている感じです。で、兄や姉にはそのスポンサーが結構な数ついていて、それもほとんどが有名ブランドだったりして、かなりお高めななのをタダで貰ったりしているらしいですよ。羨ましいです。それにタワマンのワンフロアを衣装部屋にしていますから、スカートに限らずお洒落な服なんかかなり数所有しているんじゃないですか? ボクもサイズがあえばお下がりが欲しいんだけど、下手に筋肉を使えちゃったので兄みたいにスマートじゃないって、何言わせるんですか!!」
淡い期待は…………残念だ。
オレは半エルフで真技伊白は人種、生きている時間が異なっている。
良い友人として過ごせれば充分じゃないか………………だけど残念だ。
でも、もしかしたら、オレが住んでいる世界と認識がちょっと違うのかも知れない。
僅かに残った淡い期待を込めて質問をする。
「すまん。すまん。で、悪いがもうひとつ確認したい。兄と言うのは男の兄弟ってことであってるよな?」
「何言っているんですか、男がどうとか聞かれて、それについて答えているんですから、当たり前じゃないですか~。さすがに世界が違っていても、これだけ話が通じるんだから、ある程度の言葉の意味は一緒だと思いますよ。それで聴きたいことはこれで大丈夫ですか? 今日は多少余裕はありますが、結構時間が厳しいんですからね。今日は朝廷が動く国事ですよ。遅れたりしたらって考えると、かなりヤバいです」
と言うこともあるさ。
気分を切り換えて行こう。
「朝廷…………まぁ、よく分からんが、国の偉いさんってことか? ただ、言っていることと違って全然余裕そうだねぇか」
「ちょっと違いますね。ギルマスが言うように国のお偉いさんはお偉いさんなんですが、そのお偉いさんたちが集まった集団…………組織ですね。実際、お偉いさんの集団とは言っても、小さい頃から知っている顔ぶれも多いですからね。ちょこっとの失敗なら見逃して貰えそうなので、多少は余裕があるんですよ。では、皇帝陛下行きましょうか」
些細なことだが、反応してしまった。
「真技、バッサリと斬られたいか? いくらなんでも流石に皇帝と呼ばれるような身分じゃねぇからな」
「じゃあ、国王陛下行きましょうか。立場的に国王陛下なら問題無いですよね? それと伊白でいいですよ。国防軍には身内が多いのは当然ですけど、真技を名乗っている親戚が多いし、あと、うち、養子縁組が多いので、苗字って自分のって感じがしないんです。あ、べ、別に家族の仲が悪いって訳じゃないですよ。逆にかなり良い方です。兄や姉なんかボクに甘々ですよ。ボクも兄や姉…………家族みんな大好きです。でも、呼ばれるのなら、名字じゃなくて、産まれてから変わっていない名前で呼んで貰えた方が嬉しいです」
「うぅ」
何この可愛い生き物は………………演技なのか素なのかは分からないが、見せてくる表情や仕草がオレのイケない感情を揺さぶってくる。。
平常心、平常心、平常心、平常心、平常心。
オレはノーマル、ノーマル、ノーマルなんだよ。
こっちの世界の男はみんなこうなのか?
オレはライムとのパーティしか組んだことはないが、噂では長期のダンジョンアタックには男娼のような役割をするメンバーを入れてパーティもあるらしい。
って、今考えることじゃないだろう。
き、気持ちを切り換えよう。
次話、本日15時