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異世界だんじょ……ン?攻略!? ギルマスのしゅき録  作者: 辛味亭
第1章、装備がなければ作れば良い
17/29

017.伊白とショッキング 後編

     キュル、キュル、キュル、キュル



 事故現場には野次馬が集まってきている。

 野次馬たちは挙ってラーマフォンの光っていない方の面をこちらに向けている。

 なんでだろう?

 まぁ、気にしてもしょうがない。



修復(リペアー)



 【修復(リペアー)】魔法は、物体の耐久力を元に戻す魔法だ。

 どんな物体でも耐久力があり、それを元に戻すだけで、新品の状態になる。

 普段からよく使っている魔法なんだが、発動しないんだ。

 いや、発動してはいるんだが、効果が現れない。

 魔法が使えないのは、伊白(いしろ)の兄はオレが無知だからと言ったっが…………原因はまだ分からない。

 しかし、術式をチューニングして極限まで効率化させることができるオレが無知だと言ったら、誰が無知じゃないと言うんだ?


 でも、今、原因を追及している時間はないな………………。

 仕方が無い、力業で解決しよう。



     キュル、キュル、キュル



伊白(いしろ)、こっちのキュルキュル五月蠅い車を動かすぞ」



 キュルキュル音と共に微妙に動く横から突っ込んで来た車を指差した。

 この車があると、突っ込まれた方の車の扉が開かないんだ。

 アイテムボックスに入れれば済むのだが、いくら能力の使用許可が出ているとは言え、野次馬も見ているし、これだけ大きい車が消えるのはマズいと判断したんだよ。



「ギルマス、まだ運転手がいるのでちょっと待ってください」

「分かった」



 真剣な表情を見せる伊白(いしろ)



     キュル、キュル、キュル、キュル、キュル、



「危ないから、早く車から出なさい」

「いやだ。いやだ。いやだ。俺は悪くない。俺は悪くない。俺は悪くないんだ。事故なんて起こしていない。事故なんて起こしていないんだよ。エンジンかかれよ。なんでエンジンがかからないんだよ。だからマニュアル車なんてイヤだったんだよ。くそオヤジめ」



 運転手のセリフに目を大きく開いた。

 耳にしたセリフに驚いたのだろう。



     キュル、キュル、キュル



 オレだって、驚いたぜ。

 なにせ、理解不能な意味不明なことを口にしているからな。

 まぁ、冷静に状況から判断すれば、事故を起こした直後なんでパニクっているとは思うがな。



「いいから、早く車から出なさい」

「いやだ。いやだ。いやだ……………………」

「どうした?」

「運転手が降りてきてくれなくて…………鍵もかかっているし」

「ガラスを割って、引きずり出せば良いか?」

「大丈夫です。ボクが開けます。ですから、引き摺り降ろすのをお願いして良いですか?」

「ああ、分かった」



 オレは、古武道とか言う武術を極めている一族の伊白(いしろ)がどう扉を開けるのか気になった。

 車のガラスに所々光っている伊白(いしろ)が映り込んでいる。

 こっちの世界ではこういうモノなんだろうか?



「――――――ブレイカー、スタンバイ、ターゲットロックオン。パワー全開、イィィィィナァァァァズゥゥゥゥマァァァァァァダァァァァブゥゥゥゥルゥパァァァァァァァンチィィ!!」



 意味のある言葉かどうか分からなかったので、最初の方のセリフは聞き逃してしまった。

 すぁたぁらい…………なんとかブレイカー?

 いや、似てるけど、微妙に違っている気がする。

 と言うか、こっちの世界は技を出すときに呪文みたいな詠唱がいるのか?

 異世界ギャップだ。

 もしかして…………古武道の同門だけの秘密かも知れないし、聞いて良いモノか分からないので、とりあえずは頭の片隅に記憶するだけに止めておこう。


 そんなセリフを吐きながら伊白(いしろ)は腕を交差した状態から、軽い左のパンチからの腰の入った右の力強いパンチを繰り出していた。

 上半身だけでなく下半身も使った綺麗なフォームだ。

 さすがだな。

 しかし…………顔が真っ赤なのは気合いを入れすぎたからか?



     パチンッ、パチンッ



 右のパンチに合わせたかのように聞き慣れない音が鳴った。

 あれ?

 寸止めしただけで、どこにも当たってないよな?



 ん?



 何故か鍛冶屋で嗅いだことのある鉄が焼けた匂いがする。

 それに、さっきまで五月蠅かった運転主席に座っていた男が気を失っている。


 魔法か?

 いや、こっちの世界には魔法がないと言っていた。

 もしかして、詠唱をすることで、物理的な攻撃に特殊な効果が現れるとか?


 って、それは魔法じゃないのか?


 うーん、理解に苦しむ。



「ギルマス、ドア開きました。運転手を引き摺り降ろして貰って良いですか?」



 今は考えるのを止めておこう、どの道、答えは聞かないと分からないしな。


 伊白(いしろ)がオレの方に向き買えると、伊白(いしろ)が言うとおりに車の扉が開いた。

 ギャラリーと言えば聞こえはいいが、野次馬たちの伊白(いしろ)を褒めているようなセリフが耳に入ってくる。

 ちょっと誇らしい気分だ。

 オレは、頼まれたので、運転手を引き摺り降ろして、ズボンの腰の辺りを握って、少し離れた場所に放置した。

 伊白(いしろ)以外の男を抱き抱えるなんて、絶対に無理だからな。


 時間が無いので次の行動に移る。

 すぐさま車がぶつかったところに戻った。



伊白(いしろ)、車を動かすぞ」



 言うが早いか、行動するが早いか………………、



     ずずずずずずずずずずずずずずずずずず



 これ以上壊れないように、ゆっくりと力を入れて、車を移動させた。



「さすがにギアが入っていると動かないと思うので、ギアをニュートラルに…………って動いちゃってますね」

「なんか、すまん」

「じゃあ、先に女性を助けましょう」

「了解だ」



 『さっきのは何だったんだ?』とか『おおすげー』とか『ニュートラルに入っていれば誰だってできるさ』とか伊白(いしろ)やオレのことを話している声が気にはなるが、今は伊白(いしろ)の判断や指示に従おう。



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