001.理想のダンジョンがないから、自分で作ってんだよ
気まぐれ投稿
大陸中の高難易度に設定されているダンジョンをいくつも制覇した『とある世界最強の賢者』は良いことを思いついたって表情でこう言いました。
『理想のダンジョンがなければ、自分で作ればいいんじゃね』と………………。
と言うことで、有言実行中だ。
土地の確保は余裕だったが、その後が想定外のことだらけなんだよ。
今日も今日とて想定外のことの対応をしなくてはならない。
ここは大陸極東にある海を越えてさらに東の人っ子ひとりいない…………いや、オレしかいない空飛ぶ島。
正確には4つの大きな島と複数の小島が連なった列島だが島としておくぞ。
現在地は、空飛ぶ島の中でも一番大きな島で、列島全体でもひとつしかとないと思われる最近出来たばかりのダンジョンが作った建物の中にいる。
「ライム、お迎えが来たら出かけてくるから、後は任せるぞ」
そう口にしたオレは『御鏡聖治』。
御鏡が姓で聖治が名前だ。
国によっては逆の場合があるし、姓が前にくる命名規則の国は珍しいんだよ。
オレが済んでいる世界では、大抵のヤツは説明しなくても分かってくれるんだけど、知らないと思って念のため一応説明したんだ。
なにせ…………こっちの世界では御鏡と言う姓は有名なんだ。
勇者と同じ姓なんだよ。
で、この姓が先祖代々続いてきたと言う話が本当なら、オレは勇者の末裔ってことになる。
でも、実際問題、勇者の末裔だからと言っても、こう言う話のネタにしかならない。
と言うことで、名前についてはこれくらいにしておくぞ。
じゃあ、次は…………身分だな。
身分的に言えば、現在はギルドマスター…………ギルマスだな。
そうギルマスだ。
うざったいほど言っておく、ギルマスだ。
ギルマスなんだよ。
とにかくギルマスだ。
呼び名なんて、望もうと、望まざるとに拘らず、見る人によって変わるんだよ。
だけど、『おじさん』とか言ったガキだけは絶対にゆるさん。
あ~~、とにかく呼び名についてはオレの感情的な問題だからスルーしてくれ、ギルマスと呼んでくれれば全く問題はない。
不敬罪とかでバッサリとかはしないから、安心してくれ。
そう言うことで、強制的に話題を変えてやるぜ。
オレのことより『なんのギルドか?』って聞きたいんだろ?
聞きたいのなら答えてやろう。
トレジャーハンターズギルドだ。
長い名前だろ?
だからギルドって呼んでるんだよ。
それだけじゃ分かんねぇだろ?
でだ。
まず、ギルドの定義から説明するぞ。
簡単に言うとギルドはダンジョンの管理者…………所有者?
とにかくそう言った輩が運営するダンジョンを飯の種にする組織の名称だ。
一応、ここから物理的に遠く離れたフルフラット帝国にトレジャーハンターズギルド本部と言うのがあって、トレジャーハンターズギルドマスターになるための支援をしてくれる。
もちろん、有償だぞ。
とにかく結構な額を持って行くんだよ。
正直、大きなお屋敷を10年間借りられるくらいの金は飛んだ。
これも夢のためだ。
仕方が無い。
あ~~、すまんすまん。
話が逸れたな。
でも、もう少し補足をしておくぞ。
オレたちギルドマスターが管理しているダンジョンについてだ。
ダンジョンとは成長する人工地下迷宮…………最近はダンジョンと呼ぶのが一般的だが、年寄りとかは人工地下迷宮を略して地下迷宮や迷宮とも呼んでいたりする。
また、どこからともなく現れたモンスターがはびこり、神秘や謎や宝が埋もれている危険な領域…………しかし、経済効果は凄まじい。
だから、権力者や金持ちはさらなる富を求めて、新しいダンジョンを作ろうと躍起になっている。
って、オレは違うぞ。
目的が違うからな。
『理想のダンジョンを作って攻略する』って言うのがオレの最終目的だ。
時間はいくらでもあるしな。
後、ここまでくれば説明はいらないと思うが、トレジャーハンターはダンジョン攻略で生計を立てているヤツらの総称だ。
じゃあ、続けるぞ。
ダンジョンを作るにはルールがある。
今回はそのルールの説明は省くが、金や力さえあればなんとかなるルールだ。
逆に言えば金や力がなければなんともならんからな。
別に隠す必要も無いが、説明しても意味ないだろ?
その代わり大きなお屋敷を10年借りられるくらいの金で得たダンジョンの作り方を説明してやろう。
非常に簡単だが素人が手を出すと危険だから真似するなよ。
ミントを地植えする方が安全なくらいだから絶対にだぞ。
まず、ダンジョンで極希にドロップするダンジョンシードを育てる。
育てると言っても、決まった大きさのプランターにダンジョンシードを植えて、魔力を与え続けるだけだ。
トレジャーハンターズギルド本部には育成キットも売っているし難しくはない。
そして、ダンジョンシードがダンジョンドアと呼ばれる大きさになるまで成長させる。
後は設置したい場所に根付かせるだけなんだが、これは土地との相性があるらしいから運の要素が絡んでくる。
実際オレも一度は失敗したからな。
と言う感じで、上手く根付かせることに成功すれば、晴れてギルドマスターになれるんだよ。
あと…………聞いた話なので、詳しくは知らないがダンジョンは植物の根っこのように成長していくらしい。
また、ダンジョンは人々を呼び込むかのように、ダンジョンの平面的な広さに比例した地表の土地に人が住んだり生活できるように建造物を作っていくんだよ。
今いる建物もそうだ。
ダンジョンを管理する人が仕事をしやすような建物になっている。
そうそう、体験しないと分からんと思うが、いつの間にか空き地に周囲に溶け込むような建造物が勝手に出来ているから結構驚くぞ。
後は…………ダンジョンの大きさと言うか広さになるのか?
まぁ、とにかく根付いたダンジョンドアは成長する。
単なるダンジョンの入り口、村、町、都市、そして、城郭都市まで成長した例もある。
当然、オレはさらに上を狙っている。
とにかく、巨大なダンジョンを作って理想的な攻略がしたいんだよ。
で、現状、オレが作ったダンジョンは、今いるトレジャーハンターズギルドのために作られたとしか思えない管理用建物付きダンジョンの入り口って感じなのかな?
でも、それは現状であって、大きさが確定するとダンジョンの中へ入ることが出来ると言うことなので、まだダンジョンの中へ入ることが出来ないと言うことは、ダンジョンは成長途中ってことだと思う。
この建物の周囲は、見た目上はダンジョンの大きさが確定したって感じの傾向が見られないので、そんな状況から判断するに…………これから村や町に成長する可能性が高いと思われる。
そうなってくれないと困るしな。
そんな感じなので、ギルドは開店休業中と言うか、開店準備中になるのか?
まぁ、ここまでは、そんなに珍しい話ではない。
ギルドマスターになったモノは大抵経験しているしな。
問題は、根付かずに設置に失敗したと思っていたダンジョンドアなんだよ。
結論から言うと、異世界に繋がった。
今から向かうところは、そう…………異世界だ。
その関係で今からお出かけなんだよ。
「仕方ないなぁ。お土産よろしく。食べたことのない大きいのがいいな」
そう返事をしたのはライム。
冒険者ギルドの受付嬢だ。
オレしかいない空飛ぶ島と言うのは間違っていないぞ。
元々は…………いや、今も昔も進化はしているが、スライムと呼ばれている魔物だ。
『人っ子ひとりいない』とも言ってただろ?
魔物は当然ノーカウントだ。
ちなみにライムを鑑定魔法で調べたら、今は擬態が得意なミミックスライムとなっている。
小さい頃から育てていたスライムが、一緒にダンジョンを攻略しているうちに、進化して知性を持ったって感じだ。
現在のライムの基本ステータスとトレジャーハンターになったモノだけが与えられる力である潜在ステータスは…………。
■基本ステータス□□□□□□□□□□□□□■
名前:ライム
種族:ミミックスライム
年齢:--歳
■潜在ステータス□□□□□□□□□□□□□■
レベル:99
クラス:魔王
HP:7003/7003
MP:17363/17363
攻撃力:18674
俊敏性:12276
防御力:9646
魔法力:31569
身体強化媒体:
精神強化媒体:
年齢と言う概念がないのか、年齢は不明だ。
能力を数倍強化する強化媒体を使わずにこれだから、敵対したくはないよな。
と言うことで、言われたとおり、お土産を準備しないといけない。
色々とツッコみたいと思うが、もうそろそろ約束の時間だから、勘弁してくれ。
ちなみにオレはこんな感じだ。
■基本ステータス□□□□□□□□□□□□□■
名前:御鏡聖治
種族:半エルフ
年齢:39歳
■潜在ステータス□□□□□□□□□□□□□■
レベル:255
職業:賢者
HP:36076/36076
MP:72754/72754
攻撃力:29815
俊敏性:60127
防御力:24846
魔法力:94580
身体強化媒体:白金
精神強化媒体:ダイヤモンド
カラン、カラン、カラーン
ドアベルが鳴った。
ようやく、お迎えが来たようだ。
次話、本日9時