18.新しい依頼
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一ヶ月後。
新居に引っ越して間もない家の中を、ヴェロニカは欠けているものや改善が必要な点がないかと見回していた。
先日の「自殺させられた」事件が起きた後、ヴェロニカはバートラムに頼んで以前のマンションを売り、ブルースカイ山麓の観光地の町に庭付きの一軒家を購入した。
霊に取り憑かれた事件はヴェロニカの評判に影響を与え、バンセット家の家業も彼女の助けを必要としていなかったので、このお嬢様にしばしの休息を取らせることにした。
しかし、ヴェロニカが霊払いを学びたいと望んでいることを知った両親は、そんな危険な領域に踏み込む必要はなく、お金で解決できることだからと一貫して反対した。
ヴェロニカは表向きには両親の要求を拒否しなかったが、内心では自分の意思を変えずに堅持していた。
家の実権を握るバートラムだけは何も言わず、妹に安全に気を付けるようにとだけ言い、必要なことがあれば知らせるようにと言った。
この間、サカルルからは連絡がなく、ヴェロニカも再び坂井真一を訪ねることはなかった。
この時間を利用して、彼女はリハビリとトレーニングに励んでいた。
また、既知の霊に関する知識をもとに様々な資料を探してみたが、坂井真一の独自理論以外には何も得られなかった。
これによりヴェロニカはますます好奇心が湧き、坂井真一に教えた師匠がどんな人物かを調べるのに多くの時間を費やしたが、十数年前の最終退院記録には特に何も記載されておらず、患者が自己認識の改善と安定した状態を理由に退院を許可されたというだけだった。
環境を確認し終え、特に問題がないことを確かめると、ここは彼女の要望に合った良い家であると認識し、その日の課題に取り掛かった。
部屋の中は柔らかな光に包まれ、大きな窓が半開きで、夏の熱風が吹き込んでくる。
ヴェロニカは涼しい服装で高い椅子に座り、足を組み、黒縁のメガネをかけて知的な雰囲気を醸し出していた。
机の上のノートパソコンで霊に関する資料を探しながら、坂井真一に関する調査報告を読み進めていた。
「退院、突然の自己回復、母親がこの病状に対する態度の変化、師匠がいるという話は聞いたことがなく、霊払いの能力を徐々に身につけた……確かに怪しい……」
「霊能界では無名で、最初にサカルルの問題を解決したのは、双樹寺の慧言住職が彼の両親に紹介したためだった。」
「事件が解決した後、サカルルは自ら彼のマネージャーを買って出て、以後八年にわたる協力が続いている。うん……彼の性格からして、確かに雑務を処理する人が必要だっただろう。」
彼の生涯の資料を詳細に分析した結果、ヴェロニカは二つの重要な人物に気づいた。
一つは双樹寺の住職慧言大師、もう一つは坂井真一の母親だ。
慧言大師は仏法に精通しているが、霊払いの能力があるとは聞いたことがなくて、どうして坂井真一を紹介してサカルルの問題を解決することになったのか。
そして、彼の母親の態度の変化が非常に大きく、最終的には精神治療を拒否するまでになって、この前後の差が大きすぎる。
坂井真一の母親については、許可を得ていないので自分から接触するのは難しいが、双樹寺には参拝してみることができる。
名高い仏寺に参拝することは不自然ではない。
突破口を見つけ、ヴェロニカは興奮して拳を握りしめた。
双樹寺の訪問を予定に組み込もうとしたその時、テーブルの上の携帯電話が鳴った。
「お嬢様、真一に新しい依頼が入りました。行きますか？」
電話の向こうの声はいつものサカルルのものとは違い、低く感じられたが、ヴェロニカは深く考えずに「時間と場所は？」と尋ねた。
「今晩7時、ロシキホテル。先に真一に伝えておきます。」
「わかった、時間通りに行く。」
「ヴェロニカ……」
めったに名前で呼ばれないので、ヴェロニカは少し違和感を覚え、「何？」と尋ねた。
「依頼のクライアントは三清道観の観主の紹介だ。真一と老いぼれは知り合いで、断れなかった。」
「でも、クライアントは金融界で力を持っていて、私では抑えきれない相手だ。真一は私に直接案件を担当させない。状況に注意して、彼とクライアントが衝突しないようにしてくれ。」
「……わかった。」
「ありがとう。」
「あなたが私を助けてくれるなら、私も助ける。別に大したことじゃない。」
電話の向こうで軽い笑い声が聞こえ、クライアントの身元と背景を簡単に説明した後、サカルルは電話を切った。
真剣な表情で考え込んだ後、ヴェロニカはバートラムに電話をかけた。
夜の6時40分、ヴェロニカはタクシーでロシキホテルに到着した。
あの事故以来、彼女はほとんど車を運転せず、東部郊外に住んでいるため、ジョエル市の中心部に戻るには早めに出発しないと渋滞で遅れることが多い。
時間を確認し、まだ早いことを知ると、ヴェロニカはホテルの入口で一人待っていた。
今日はフラットなランニングシューズを履き、軽装のトップスと動きやすいフィットしたジーンズを着て、上にカジュアルなライダースジャケットを羽織り、キャップで顔の大部分を隠していた。
彼女の独特のスタイルで、カジュアルながらもスタイリッシュで、決してラフすぎることはなかった。
ホテルを出入りする華やかな装いの客たちとは場違いな感じがしたが、ヴェロニカの高身長と目立つスタイル、そして落ち着いた自信に満ちた雰囲気は多くの人の目を引いた。
元々彼女に近づいて立ち退きを求めようとしていたドアマンも、少し躊躇してしまうほどだった。
何といっても、この高級ホテルでは特別な商売はしていないし、たとえそうであっても、こんなふうに堂々と入り口に立たせることはないのだ。
しかし、ヴェロニカが注目を浴びていたのは長くはなくて、さらにカジュアルな装いの人物が現れたからだ。
その人物の漆黒の髪は整えていないようで、あちこち跳ねていて、防風コートは長くはなかったが、それでも大きすぎてだらしなく見えた。
縮んでしまったのか、あるいは小さいサイズを買ったのか、ズボンの丈は八分丈、上着の襟には破れがあり、シャツは全く整えていなかった。
彼の顔は陰鬱な表情で、まるで「借金返せ」とでも書いてあるかのようだった。
「来たんだね。」
「うん。」
「車で来たの？」
「田舎のバスに乗って、終点で地下鉄に乗り換えて、そこから歩いてきた。」
ヴェロニカは一度も公共交通機関を利用したことがないので、一連の乗り換えの話は少し理解しにくかったが、研究して準備していたおかげでどう答えるべきか分かっていた。
「それは大変だったね。帰りは一緒にタクシーで帰ろう。」
「うん、学費だと思うことにする。」
霊に関する依頼は坂井真一にとっては良い収入源になるが、彼の奇妙な性格のために、サカルルは多くの依頼を断らざるを得なかった。
最長でほぼ一年間、仕事が全くなかったこともあり、バンセット家からの依頼でやっと収入があった。
坂井真一は自分の金銭状況にあまり関心がなく、全てをサカルルに任せていて、彼女が節約するようにと言えば、彼は倹約して暮らす。
今回のように乗り換えを繰り返して来たのも、ほぼ一年間収入がなかったからだ。
サカルルが「自由にお金を使っていい」と言うまでは、彼は無駄遣いをしない。
二人は並んでホテルに向かって歩き、迎えに来たスタッフにヴェロニカが依頼者の名前を告げると、多くの人々がひそかに注視する中、礼儀正しく華麗で壮大なホテルの中に案内された。
「私に霊払いを教えることを承諾してくれたの？」
「サカルルが、君が依頼人の問題を解決してくれると言ったんだ。解決できたら、教える。これは公正な取引だ。」
「最善を尽くす。」
確かに公平な取引だとヴェロニカは思い、その素直なやり取りが気に入った。
「うん、これからは君が依頼人と話をするんだ。何を話すべきかは覚えているはずだ。分からないことがあれば呼んでくれ。問題を見つけたら教えるよ。」
「分かった。」
自分の経験と約一ヶ月の準備のおかげで、ヴェロニカは坂井真一の霊払いの理論についてかなりの理解を深めていて、これ自体は彼女にとって難しいことではない。
問題は、依頼人がどれだけ厄介かどうかだ。
