11.荒廃鬼楼（三）
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太陽が沈み、残照の橙赤色の光が西南区に降り注ぎ、視界は次第に闇に包まれていく。
カラスと黄昏は、まるで別の世界の到来を象徴しているかのようだ。
リジチャンは、ちょうど上司の命令を完了し、四人の部下を連れて廃棄された荒廃鬼楼のアジトに戻ろうとしていたが、遠くから六、七台の車が停まり、見知らぬ人々が集まっているのを発見した。
全員が筋骨隆々で、武器を携帯しているようで、彼は警戒心を抱いた。
「おい、ヘイミェン、ちょっと見てこい。注意しろよ、あいつら見覚えがある気がする。」
呼ばれた肌の黒い男はすぐに向かった。
彼は近所の住民を装って偶然通りかかったかのようにして、これらの外来者を一通り観察し、それから素早く近くに戻ってボスと合流した。
「チャンニキ、あいつらは前回美女を助けに来た金持ち連中みたいです。しかも今回は新しい特徴的な美女も一緒にいます。もしかしてまた前みたいに、うっかり中に入って気絶するんじゃないですかね。そしたら僕たちが……」
「やめろ、余計なことを考えるな。」
ヘイミェンの卑猥な発言を遮り、リジチャンは少し苛立ちを感じ，部下は知らないが、彼自身はよく分かっている。
以前、依頼を受けて携帯電話を六階に放置したとき、テレビのスターよりも美しい女性が入ってきて気絶しているのを見たとき、皆が心を躍らせた。
雇い主も自由に処置してよいと言ったが、手を出す前に多くの屈強な男たちが駆け込んできて彼女を連れ去った。
その銃を持った練達の場面は、リジチャンを少し怖がらせた。
彼はホンフイメンの支部の担当者だけで、毎日法律のギリギリを渡り歩いているが、実際に銃に触れることはそう簡単ではなく、最近ようやく上司の恩恵で銃を手に入れたばかりだった。
だから屈強な男たちが皆武器を持っているのを見ると、彼はすぐに相手が厄介な人物だと理解した。
後に関係を使って調査したところ、気絶した美女はある程度の名声を持つ商業家族であるバンセット家の小公女だと分かり、元の雇い主は既に逃亡し、その後は良い結末ではなかったと聞いた。
「あいつらに手を出すな！小門から入るぞ。ヘイミェン、後で他の者にも伝えてくれ。金持ちの坊ちゃんやお嬢ちゃんが探検ごっこをするなら好きにさせておけ。関わらずに衝突を避けるんだ、分かったか！」
「了解。」
「分かりました。」
「こんな美しい女を逃すなんて、本当に惜しいな。」
部下たちは次々と了承の返事をしたが、嘆きと未練の声は止まらなかった。
彼らは毎日殺し合いや脅迫、盗みや誘拐を行い、上司の命令に従うために多くのストレスを積み重ねていて、目の前に完璧な発散対象があるのに、見逃すのは本当に悔しい。
実は彼らだけでなく、リジチャンも非常に不満だった。
なぜ金持ちが自分の領土で好き勝手できるのか、なぜ金持ちは外出するときに大勢の護衛や美女を連れているのか、なぜ自分はそんな金持ちから逃げなければならないのか！
「実際のところ、荒廃鬼楼の中で何が起きても誰にも分からないんじゃないか？」
突然、軽い言葉が騒がしい声の中に紛れ込んできた。
リジチャンは突然振り返り、怒りの目で「誰だ？俺の言うことを聞かずに騒ぎを起こすつもりか！」と叫んだ。
四人の部下は互いに顔を見合わせ、誰も自分ではないと首を振った。
誰も認めないのを見て、リジチャンも何も言わず、冷たい笑みを浮かべて自ら荒廃鬼楼の側の小門へと向かった。
四人の部下はそれを見て笑い、互いに理解し合った。
チャンニキも実際にはあの金持ちや美女に何か忘れられない経験をさせたいと思っているのだ。
彼らが密かに計画を立て、美女に小さな驚きを与える方法を考えていたとき、誰も気づかなかった。
彼らの目の奥には、微かに赤く光るものがあった。
そして、夕日が沈み、影の中に五人が映し出された。
小門に入ると、リジチャンは部下たちの挨拶を聞き、一人の男と一人の女が既に荒廃鬼楼に入っていると報告を受けた。
外の金持ちは事前に挨拶に来ており、ホンフイメンの人々に彼らを邪魔しないよう頼んでいて、金額が良かったので、留守番の責任者は一旦了承した。
しかしリジチャンは気にしなかった。
金持ちがここに来ることに、なぜか違和感を覚え、心が落ち着かない奇妙な衝動があった。
考えた末、彼は一人で隠れた場所に行き、携帯電話を取り出して一本の電話をかけた。
「もしもし、ボス、俺です。前に報告したバンセット家がまた荒廃鬼楼に来ました。部下の話ではあの小公女が男を連れてきたらしいです。彼らが最近の計画に気づいたんじゃないかと心配なんですが、警察は最近何か動きがありますか？」
「……はい……はい、それでどうすればいいですか？」
「彼らを始末する！？でも……事が大きくなったら、ホンフイメンや俺たちはどうなるんですか？それにあなたの計画にも影響が出るのでは？もう一人の金融家の件もまだ半ばですよ……」
「……分かりました、あなたが本気でやるからには考えがあるのでしょう。ホンフイメンはもちろん問題ありません。我々はそのために存在するのですから、その後は誰かに罪をかぶせ、兄弟たちを一時的に散らして隠れるように手配します。金融家の件は他の支部に任せます。」
「もちろんです！お任せください！」
外でこっそり盗み聞きしていた部下たちは、大きな仕事が来ることを知り、しかも美女が楽しめると知って、顔に抑えきれない興奮の表情を浮かべ、後の艶めかしい展開を夢見始めた！
陽光と月陰が交替する逢魔時、廃棄された荒廃鬼楼はすでに闇に包まれ、そこにはただ、人間の心の中に潜む蠢動があるのみ。
誰も気づいていないが、リジチャンの携帯には、最初から最後まで繰り返し流れる使われない番号の答え音が響いていた。
時間は正式に夜に突入した。
光がない六階、半壊した店内で、簡易な携帯用照明が灯っている。
坂井真一とヴェロニカはコンクリートの壁にもたれて休んでおり、前方は広い視界が広がっていて、彼らはいつでも来訪者や状況を確認できるようになっている。
荒廃鬼楼に入って半日ほどが過ぎ、住民に何度か出会ったが、彼らはすぐに隠れ去ってしまった。
だが、その濁った無秩序な眼差しには警戒を怠ることはできなかった。
「坂井、君の理論によれば、荒廃鬼楼は夜になると天の時と地の利を占める。じゃあ、ここに住んでいる人たちは霊に取り憑かれたりしないのかしら？私よりも人の和を保てるとは思えないけど。」
自分への自信をヴェロニカは決して欠いていなかった。
坂井真一は横にいる、もう「先生」とも呼ばなくなった美しい顧客を一瞥した。
荒廃鬼楼に入ってからは心の壁が少しずつ解かれ、彼女は次第に礼儀の下に隠れていた本性を現していた。
「霊に取り憑かれるというのは、単に邪悪に取り憑かれたり悪夢を見たりすることだけではない。」
「どういう意味？」
二人で半日ほど過ごしてきた中で、ヴェロニカは坂井真一が霊について独自の理論を持っていることに気づいて、それは、あるいは知られざる師匠から受け継いだ理論かもしれない。
それが真実かどうかは証明できないが、少なくとも一貫していて説明がつき、未知への興味を完全に引き立てた。
「霊と生命は完全に反対の存在だ。生命は正面を、霊は反面を代表する。君が生きたいと思えば霊は死をもたらし、君が物事を良い方向に進めようとすれば霊は悪い結果をもたらす。」
ここで坂井真一の表情は真剣になった。
「例えば、君が生活を充実させたいと思えば、霊は君をみじめな死に方をさせる。それは善悪に関係なく、単に生命と正反対の存在だというだけだ。」
「だからこそ、君には人の和を維持し、霊に影響されないように努めてほしいんだ。」
ヴェロニカはこれまでの経験を思い返して、悪夢、家族への攻撃、交通事故、そして自殺未遂で、どれも成功していたら、自分を奈落の底に突き落とすに十分な結果だった。
「だからこそ『悪魔の囁き』とも呼ばれるのね……」
ついに霊について専門家の話を理解し始め、彼女はさらに尋ねた。
「じゃあ、ここに住んでいる人たちは具体的にどんな影響を受けるの？」
真剣な問いに対し、坂井真一は疑わしげで少し軽蔑した目で彼女を見た。
「さっき言っただろう、霊は物事を悪い方向に向かわせるって。住んでいる人にとって何が悪い結果になるかなんて俺には分からない。俺は霊能者じゃないんだ。それに、外部からの干渉を避けたいのは変数が多すぎるからだ。」
専門家の悪態に慣れてきたヴェロニカは、選択的に無視しつつ、彼の言葉の中の問題を捉え、さらに興味を持って尋ねた。
「霊能者？本当に僧侶や神父、道士なんかが霊とコミュニケーションを取れるの？」
「分からない。少なくとも俺はそんな人に会ったことがない。深い仏法を持つ僧侶や修行を積んだ道士、信仰心の篤い聖職者に会ったことはあるけど、彼らはとても良い人たちだ。でも、霊を払う能力や霊を見る能力は持っていない。」
それを聞いて、ヴェロニカは少し驚いて言った。
「霊的な専門家って、宗教を全て詐欺だとか、金儲けのための偽善者だとか、そういうふうに思ってるんだと思ってた。ポジティブな返事が聞けるとは思わなかったわ。」
坂井真一は首を振り、非常に不満げな表情を見せた。
「人に善悪があるように、宗教にも善悪がある。」
「一概に全てを否定するのは、ただの自己満足の賢さで、一枚の葉が目を遮っての愚かさだ。」
「大抵、そんなことを言うのは、世間の注目を集めたくてもできず、大声で自分が偉い、特別だと言っているに過ぎない。」
依然として世の中に対して批判的ではあるが、非主流の方向に表現されていて、このような人物は社会に排斥される運命にあるのは明白だ。
だからこそ、彼は常に人を寄せ付けない雰囲気を醸し出しているのだ。
心の中でそう判断し、この認識によりヴェロニカは一瞬の感覚を得り、彼女はまだ短い時間しか一緒にいなかったが、自分がすでに坂井真一にとってサカルル以外で唯一まともに話ができる相手になっているのではないかと感じた。
少しでも常識を逸脱した一面がなければ、坂井真一とまともに付き合うことはできないだろう。
「私……」
「時間だ。天の時がすぐに来る。これから私は離れるが、必要な時には現れる。」
話に夢中になっていたが、要事が優先だ。
ヴェロニカはうなずいて理解を示した。
自分の小さなバックを手に立ち上がると、坂井真一は漆黒の六階を見渡した。
そこはまるで夜の色に染められ、恐怖を呼び起こす幽冷で寂しい世界だったが、彼の表情は変わらず、その中へと足を踏み入れた。
最後に背中が消える前に、彼の声が淡々と聞こえてきた。
「覚えておけ、どんなことでも起こりうる。自身の人の和を保ち、心の平穏を保つことで、最も重要なのは生き延びることだ。」
