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スノードーム
毎日が大嫌い
人も物も汚くて
嘘と悲鳴しか聞こえない
目に映るのは無知と欺瞞に満ちた笑み
耳には哀咽と嘲笑が響いて
心には何も届かない
闇が薄まり朝がくれば
光と物音がまた壁を揺らす
もう何も見たくないのに
これ以上嫌いにさせないで
唯一落ち着くのは
一定のメロディーと灰色の景色
ガラスを滑る雨粒が好きで
葉っぱに光る露が好きで
目を背けなくても霞んで見える
この光景が好き
色とりどりの傘が歩く街には
余計なものは見えない、聴こえない
ふと窓を流れる雫を見ると
歪んで映る大嫌いな世界
あぁ…私の好きなこの光景も
世界があってこそなのだと初めて気付いた
だからといって
すぐに気持ちの切り替えは出来ないけれど
スノードームのようなこの小さな世界から
少しずつ好きになれたら
少しずつでも壁を壊していけたらと
そう思った自分に驚いた日
雨音の静かな響きを聴きながら
悪くないな、と呟いた