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憧憬
感動と共に失ったのは
少しの水分
世界が端から滲む中
一秒でも長く焼きつけようと
ただただ前だけを見た
一気に熱があがり
だけどどこか冷静で
音、映像、匂いに感情
感覚の全てをもって
この瞬間を全身で記憶する
周りは見ない
目の前の対象と自分の感情が全てだった
今この場に立ち会えたことが嬉しくて
なぜ自分はあの輪の中にいないのかと悔しくて
そして
その人がこの世に存在していることが純粋に嬉しい
勝ち負けが全てではないということを
頭だけでなく心で理解できた日
何かが変わる音がして
世界が少し 眩しく見えた