魔女の名前
『ヘンゼルとグレーテル』『逃れの森の魔女』をもとにしています。
甘いあまいお菓子の家の中には
怖いこわい魔女がいる
お菓子の匂いに誘われた
可愛いかわいい子どもたち
魔女は子どもが大嫌い
わがままで乱暴で役立たず
長い間待ち望んでいた魔女は彼らを大いにもてなし、そして直後に豹変した
子どもたちは閉じ込められ、魔女を恐れた
魔女も彼らを恐れていた
やがて子どもたちはお菓子の家を出た
魔女をやっつけたのだ
魔女はどこかでこうなることをわかっていた
無邪気で強い子どもたち
身勝手で無神経で愛しい
どうして彼らを食べることなど出来る?
可愛くて立派な子どもたち
いつかは離れていくと知っていた
魔女が知らなかったのは…
魔女は子どもが大嫌い
どんなに愛してもやがては離れていく子どもたち
例え嫌われたとしても
側にいてくれるだけで救われた
寝顔を見るだけで心が温かくなることも知った
ある日魔女は隠していた金貨や宝石を
わざと目につく場所に出した
いつか逃げ出す子どもたち
その先で辛い思いをしないように
私が怖がらせてしまった分も
幸せを取り戻せるように
彼らにとっては命が懸かっているのだから
逃げる為ならどんなことでもするだろう
私に出来るのは
最期まで怖い魔女を演じきること
「昔々、この森にはお菓子の家があったんだ。そこには怖い魔女がいて、迷いこんだ子どもを食べていたんだってさ。だけどある時、勇敢な兄妹がやっつけたんだ。広場に像があるだろう?彼らの名前は…」