心優しき少女
初めまして。魔人100%と申します。
不慣れな小説家ですが。お手柔らかにお願い致します。
この物語は、日本のとある田園地帯にある小さな村で始まる。そこにはごくわずか200人の住民が暮らしており、緑豊かな田んぼがどこまでも広がっている。
穏やかな生活の中で、母親とともに生活する緑髪で華奢な少女がいた。彼女の名前は杉野ムギ。彼女とその母、杉野はなえはとても仲が良く、共に生活を営んでいた。
「ムギ、草木の特徴をしっかり覚えて、有毒なものを避けるのよ。」はなえが教える。
「大丈夫よママ、ムギもう10才だもん。ワレソンとハミル草の違いだって知ってるよ。」ムギが自信たっぷりに応える。
「あら、自信満々ね。…豪華なご飯を作ってあげられなくてごめんね…」とささやく母。
「ムギ、ママの料理が大好きだよ。」ムギが優しく答える。
今日は、ムギの10歳の誕生日だった。しかし、はなえは自分で育てた野菜を販売して生計を立てていたため、裕福ではなかった。
「こんにちは、ダンゴムシさん。」ムギが穏やかな笑顔で触ると、ダンゴムシ三匹が一斉に球体に丸まった。
「あらあら、恥ずかしいのー?」
村のおばあさんが微笑む。「あらあら、ムギちゃん、またお母さんの手伝いをしているのね。それにしても、まだ十歳なのにずいぶん立派に、一生懸命ね。」
ムギは喜んで答える。「ムギがやりたくてやってるのよ。」
ムギの村での生活、人々、そして自然に対する心からの愛が、村の人々にも伝わっていた。
突然ムギが驚く。「ママ!何これ、これすごいにょろにょろしてる!」
はなえは興味津々の表情で答える。「ムギ、珍しい花でもあったの?」
普段から様々な生物と触れ合ってきたはなえも、その黒い生物のようなものを見たことはなかった。それは直径約50cmの黒い円で、地面から突如として浮き出し、もがいていた。
はなえは驚愕する。「これ...何!?ムギ、こっちおいで!」
はなえはムギに声をかけたが、すでに手遅れだった。その黒い生物は突然、触手のようなものを伸ばし、ムギの腰をすばやくつかむ。
「ああっ!ママ、助けて!」ムギが絶叫し、必死に暴れるも、その力では何もできず、そのまま黒い生物に引きずり込まれてしまう。
「ムギ!ムギ-!」はなえの悲痛な叫び声が空へ響く。
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ムギが目を覚ますと、そこには見たことのない景色が広がっていた。
見渡す限り、美しい花が咲き乱れている。
しかし、その場所にはムギが知る花は存在しなかった。「ここはどこ?」
彼女は自分がどこから来たのか、どこへ行くべきなのか思い出せなかった。それどころか、自分の家、名前、そして母の存在すら忘れてしまっていた。
ムギは小さな声でつぶやく。「どうしよう。人を探さなきゃ。」
右も左も分からない。ただひたすら歩くばかりだった。
「あの子、すごく辛そう…」と誰かが言う。
「だよね、かわいそうに。」とまた別の誰かが口を挟んだ。
それはとても小さな声で、だがムギにはちゃんと聞こえていた。「誰?」
「え?もしかして聞こえてる」
「え、まっさか!」
小さな声の主が揃って驚いた。
ムギは相変わらずキョロキョロしている。
そして突然、彼女は素敵な出会いをする。
「…あなたたちは、妖精?」
「いえ、私たちは精霊だよ。」
小さな声の主は、それぞれ青色と緑色に発光しながらムギの膝くらいの高さでヒラヒラしていた。
水の精霊「あなたの名前は?」
ムギ「私の名前は…わからないの。」
風の精霊「家族は?お母さんとはぐれたの?」
ムギ「それも分からないの…。」
ムギ「あなた達は、何故ここにいるの?」
「ここは、僕たちの楽園なのさ。」
水の精霊は、ここが自然豊かで風が美しいのだと教えてくれた。
水の精霊「そうだ、お母さんの所へは行けないけど、人間が住む村には行けるよ!」
ムギ「本当に?そこにはどうやって行くの?」
水の精霊はムギの耳元にそーっと近づき、ささやいた。
ムギ「えっ!そんなこと、恥ずかしくて言えない!」
水の精霊「恥ずかしいことなんて無いよ、みんな言ってるんだから。」
ムギ「そんなわけないじゃない。」
10才の女の子には、とても恥ずかしくて言えないような言葉らしい。
水の精霊「それじゃあ、ここで野垂れ死ぬのー?」
ムギ「もー。ひどーい。」
そして、ムギは1分ぐらい考えてから意を決した。
ムギ「もう!分かったよ。言えば良いんでしょ!」
水の精霊「そう来なくっちゃ!」
そして彼女は大きな声で叫んだ。
「風と水の精霊よ、私を近くの村まで運んで。エーテルリフト!」
突然音もなく現れた水は、あっという間にムギを優しく包み込んだ。
ムギ「すごーい。水に触れてるのに濡れてないよ!」
ムギは初めての感覚に驚いた。
水の精霊「一回でここまで完璧に出来るなんてすごいよ!」
ムギ「精霊さん、ありがとう!!」
体重が突然軽くなったかのように、微風に乗ってふわっと浮いてゆっくり移動し始めた。
水の精霊「元気でね。可愛い女の子!」