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プロローグ
まさか書き終わった数十年後になって加筆と修正、そしてプロローグとエピローグを書くことになるとは思いもしてなかった。
というのも、本来この小説はたった1人に読ませる為だけに書かれたものであり、こうして誰かに読まれることなんて想定していなかったからだ。
それがこうして……って、こんなところでこの小説が書かれることになった経緯を長々と説明してしまうと、この小説を読んでもらう必要がなくなってしまうな。
とりあえずこの話の続きはエピローグにでも置いといて、まずはプロローグを始めようと思う。
目を閉じると今でもあの時のことを鮮明に思い出す事が出来る。
その日は季節の変わり目で少し肌寒いと感じる日だった。
あの時の僕もまた、小説を書いていた。
まだ色付いていない緑の葉が生い茂る木々が並ぶ神社の境内の中で、ただひたすらに、無我夢中でさ。
そんな僕にクラスメイトの女の子が声をかけてきて、そして彼女は突然こんなことを言い出したんだ。
私のことを小説に書いてよ――って。
その一言が全ての始まりだった。