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夕暮れ時が迫る中辺りを夕焼けが包み空を鮮やかな紅に染めていた。美しい空中の様子とは裏腹に眼下には見渡す限りに積み上げられたゴミの山が広がっている。ゴミとゴミの間には狭いながらも通り道のようなものがある事から、人の往来自体はあるようだが日暮れが迫る現在は人の姿はほとんど見られなかった。だがしかし、その薄暗く狭い道を駆ける少女が一人。やせ気味な体に汚れた服、表情は恐怖に歪んでおり何者かに追われているようで、しきりに後ろを振り返りながらゴミの間を懸命に進んでいる。
その時進行方向から男が一人現れる、少女と同じく薄汚れた格好をしているが最低限武装しており手には整備不良に見えるが銃を持ち何かを探すようにキョロキョロと辺りを見回していたが、少女を見つけると下品な笑みを浮かべ駆け寄ってくる。
少女はその男を見つけると小さく悲鳴をあげると脇道へと方向を変える。男は周囲の仲間を呼び寄せるように声を上げながらその後を追いだした。その気になればすぐに追いつけるはずだが少女を甚振るかのように距離を保ちつつ追い続けた。
男の周りに散っていた二人の仲間が追い付いて来た頃には少女の足取りもかなり重くなり、逃走劇も終わりが近い事を告げていた。限界が近づく身体を懸命に動かして逃げ続けてきたものの、少女を待ち構えていたのは途切れた道と立ちふさがるように目の前に現れたゴミの山だった。それでも少女は諦めずにそのゴミ山を登ろうと試みるが、少し登ったところでゴミ山が崩れてしまい登ることは出来そうにない。そうしているうちに男達が追い付いて来た。
「お嬢ちゃん鬼ごっこはここまでだ、痛い目見ないうちに噂のブツの隠し場所を教えな」
武装した三人の男に囲まれた少女は恐怖に震えながらもこぶしをぎゅっと握りしめ、恐れを振り払うかの様にそんなものは知らないと叫んだ。その返答に男たちは顔を見合わせ大声で笑いあった。
「お前がスラムの露店商のおっさんに買取の依頼をしてるところを俺たちは見てるんだぜ?今更そんなウソが通じるかよ」
「知らないものは知らないんだ!知っていたとしてもお前たちみたいな情けないやつらには教えないッ」
恐怖から涙が零れそうになるのを耐えながらキッと男たちを睨みつけながらそういう少女にカチンと来たのか一人の男が手を振り上げるバシンッと頬を打たれた少女は地面に倒れこんだ。
「こっちが大人しくしてたら付け上がりやがってこれ以上痛い目に遭いたくないならさっさと隠し場所を吐け!」
そう凄んでくる男を見上げる少女は頬を打たれた衝撃で切ったのか、口の端から血を滲ませ震えながらも口を真一文字に結び教える気は無いと精一杯の虚勢を張る。その様子に痺れを切らしたリーダーらしき男が他の男たちに指示を出す。
「やせっぽちで鶏ガラみてえだがそいつだって女であることには変わりはねぇ身体に聞いてやったらどうだ。」
その言葉に嫌らしい笑みを浮かべ男たちは少女ににじり寄っていく、怯えるように少女が後ずさっていくがすぐにその身体はゴミの山に当たり逃げ場を無くしてしまう、最後の抵抗としてぎゅっと目を瞑り耐えようとしたその時、辺りを眩い光が包みその直後、少女のが背にしていたゴミ山の上の方で何かがドサッと落ちてくるような音が聞こえた。恐る恐る目を開あけると、自分に掴みかかろうとしていた男たちも光に目をやられたのか目を閉じてまぶしそうにしていた。先に目を瞑っていた少女の方が立ち直るのが早かったようだ。
先ほどの光は何だったのかと辺りを見回してみると先ほど音が聞こえた上の方で先ほどまでは無かった人影のようなものが動いているのが見えた。不安定なゴミの上で立ち上がり歩き出そうとしたようだがバランスを崩し周囲のゴミと一緒に滑り落ちてきた。
少女から少し離れた場所に転がり落ちてきたその男は落ちるときにぶつけたのかお尻をさすりながら立ち上がった身長は少女を囲んでいた男たちよりも頭半分ほど高く鍛えられた体格をしていた、その男は少女と男たちの顔を交互に眺めボサボサなった長い金髪を困ったようにボリボリとかきながら言った。
「あー取り込み中に邪魔して悪いんだが、ここが何処だか分かるか?」