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晩餐会13

そうして、いよいよ新たな勇者達の旅立ちを祝う晩餐会の時間がきた。


旅立ちの面々の紹介の際に、司が今回の旅への同行を伝えるというのを事前に聞いてしまったので、何だから私までドキドキしてしまっていた。





大きな大きなホールに、ドレスで着飾った人々、テーブルに並べられた沢山の美味しそうな食事、煌めくシャンデリアのような照明に、音楽を奏でる音楽隊。まるで物語で出てくるような、王子様とお姫様の世界のパーティーだ。


ポカンと立ち尽くしていると、くくっと笑う声が聞こえた。


「口空いてるよ、楓ちゃん」


ハッとすると、両手に飲み物の入ったグラスを持った司が笑いを堪えるようにしていた。


「凄いパーティーだね、改めて別世界だわ〜」

「口開けて目輝かせてキョロキョロして可愛いね。はい、これジュースだよ」


くくっと笑いをかみ殺しながら、司がグラスを渡してくれる。


可愛いって、どうゆう可愛さよ。


だが、そんな小さな事を気に留めてられないほど、場の非現実感にのまれてボーっとしてしまう。


ただの高校生だった私がこんな豪華なパーティーに参加するだなんて。

ピンクのドレスを着せてもらったが、ドレスに着せられてる感満載で、堂々とその場に馴染んでいる人達と比べて自分が場違いのように思えた。


司君もいつもはラフな格好をしてるのに、今日は正装で王子様みたいでカッコいい。

スーツを着るとカッコ良さ五割増しのように、正装もいいわぁ。割とぴっちりめ服が、体格とか、キュッと引き締まったお尻のラインとか男の子らしくて惚れ惚れしてしまう。


司君は目の保養になるな。


「紹介されるまでは、ここら辺の物でも食べて時間潰してなよ。俺が側にいてあげられたらいいんだけど、たぶん呼ばれるからな」


ニッコリと笑う司は、今日は髪型もセットまでしていて、いつもに増して輝いていた。

女どもが騒ぎそうだが、でも司君はアレなのよね。


そこへ、体格のいい騎士かな、というような男が司へと話しかけてきて、その耳元でコソコソと話しだした。


お?おおっ!歳上の勇ましそうな騎士さんと司君。

これまで何とも思った事なかったけど、これはこれで中々いいんじゃないでしょうか。

こうゆう世界もあるのね……………。


うっとりと2人を眺めていると、手を振って騎士が去って行った。

と、同時に私を司が睨む。


「ちょっとその目止めてくんない?外の警備について話しただけだから」

「いえいえ、私の事などお構いなく」

「あーもう。楓ちゃんに話したのは失敗だったかな」


司は眉をしかめ、ため息をつく。


その時、音楽が変わり、人達の騒めきと共に階段の上の所に誰かが現れた。


たぶんあれが皇帝一家だ。人より高い所から見下ろしーの、こんな登場の仕方は皇帝一家以外有り得ない。


いかにもって感じの貫禄ある髭もじゃの皇帝に、若めのキツそうな皇后、そして、この2人から産まれたとは思えない、可憐で可愛い皇女の3人だ。


皇女は上から誰かを探すようにキョロキョロとしている。

その視線が1点で止まった。


えっ私!?………なーんてね、お目当てはお隣の司君でしょう。


目標を発見した皇女は急ぐように階段を降りてこちらへと向かってきた。


目を輝かせて息を切らしちゃって、一生懸命な姿が可愛い。

歳は私と同じくらいかな?


「ツカサ様!」


頬を染めて、嬉しそうに笑う可憐な笑顔がもはや眩しい。


「フレシア皇女様、そんなに急いでは危ないですよ。呼んでくだされば、こちらから行きましたのに」


微笑む司に、皇女は更に頬を赤らめた。そして伏せた目を上げ、チラリと司を見る。


五割増しの司君にメロメロだ。目がもう見惚れてるもん。

分かる。今日の司君とびきりかっこいいもんね。

ああ、恋しちゃってるな〜。こんな可愛い子に好かれて、美男美女でお似合いじゃない。


って、司君男の人が好きなんだった!

はわわわ、こんなに想ってるのに、これが叶わぬ恋だなんて神様って残酷!でも司君のせいではない!だけど、こんなに恋焦がれる女の子の姿見ちゃうと、切なくなっちゃうよ〜!

せめて、司君がイケメンでなかったら、世の女性の期待を裏切らずに済むのに!それも司君のせいではないけど!


「楓ちゃん、顔気をつけてね」


司は顔はニッコリと笑っているものの、目は睨みつけるように私を見てきた。


顔?顔が何?そんな出てる?本当に?


「皇女様、両陛下の元へ戻られますか?私もお側におりますので、一緒に行きましょう」


司が皇女へと手を差し伸べる。

そうして、エスコートされながら皇女は司と共に行ってしまった。


隣りに異世界人の私いたんだけど、完全に眼中になかったわね。

恋は盲目。

それなのに女というだけで脈はなし。本当に罪な男ね、司君。




司が行ってしまってからは、料理を適当につまんだり、人間観察をしながら隅っこの方で過ごしていた。


同じ世界から来た、あの2人はいつものごとく案内役の女性とその他数人の女性をはべらしていた。


大吾なんて、堂々と腕をまわして肩を抱き寄せてほっぺにブチューなんてしちゃってるし、あー気持ち悪っ。

この前会った時なんて、俺が世界を救うとか言ってたけどあれ本気かしら?馬鹿?ただ単に女にカッコつけたくて言ったってのが正解なんだろうけど、皆んなにチヤホヤされて気分良くなって、最近凄く調子に乗ってる。

こんな奴と一緒に旅するのは不安だったけど、司君が同行してくれるようになって、本当に良かった。

はしゃぐ大吾を見ながら改めてそう思った。



そうしてるうちにいよいよあの時が来た。

今回の魔族討伐に向かう英雄、もとい生け贄のお披露目タイムだ。


ホールの少し段差がある壇上のような場所には、王座が3つあり皇帝、皇后、皇女が腰掛けていた。


その前に、大吾、竜也、私の3人が並べられ、司会役の偉そうな貴族のおじちゃんが、この度、この世界を救うために異世界から来た英雄がとかありきたりな口上を声高らかに喋っていた。

そして、この見せ物を見ながらコソコソ話す壇上の下のこの世界のお偉方達。


おじちゃんの話は無視で、下の人達のコソコソ話に全神経を傾けると、今度の奴らはどこまでやってくれるか、せめて暗黒大陸までは辿り着いてほしいもんだ、上級魔族を倒せる実力か?などなど好き勝手話している。


他の世界の人を呼び寄せて勝手に戦わせて、この他人事発言。

お前らが行けっての!!


そう思ってると、おじちゃんが演説は終わったのか、皆様、旅立ちを祝う為集まった者達に手を振ってやって下さいと言われた。


こんな見せ物にされて、好き勝手言われて誰が手なんか振るか!と思ったが、隣りでは大吾と竜也が照れ笑いをしながら手を振っていた。


プライドはないんかい!こいつら絶対英雄なんか思ってないよ!


拍手が巻き起こる中、突如、司が私の隣りに立った。


一連の流れから一転、何だ?というように拍手が止む。


「報告漏れがありました。今回の旅立ちには、私、立野 司も同行し、4人のメンバーで出発致します」


その言葉にホール内がザワザワと騒めいた。

大吾や竜也も初耳で、はあ?という顔をしていた。


「この世界に呼ばれ、3回の旅立ちを見送り、この帝国に残り皆様の為に尽力して参りましたが、成果を上げられない今の現状を打破するべく今回の旅への同行を決意致しました」


司は騒めく人々を気にも留めず、手元の紙を見ると更に続ける。


「現段階では勇者C ランク、戦士B ランク、聖女Bランクとこれまで以上のメンバーが揃っています。ですので、更に勇者Sランクの私が参加する事により今回は皆様の期待に添えられる結果を残せると約束します」


そう言って、締めくくりのように司はニッコリと微笑んでみせた。


おおっ、カッコ良く言い切った。

度胸あるなぁ。拍手してあげたい。


「ツカサ様っ!」


その声に振り返ると、皇女が青ざめた顔で立っていた。

血の気が失せたように真っ青で、今にも倒れそうである。

先程までの薔薇色に頬を染めて、幸せそうに司を見つめていた彼女とは別人のようだ。


司はゆっくりと彼女を見て優しく笑う。

それから皇帝達の方を見て一礼した。


「今までお世話になりました。他の者と同じように、私がこの世界に呼ばれた義務を果たして参ります」


そんな司へと駆け寄り、皇女は司の腕を掴む。


「いいえ、ツカサ様はここへ残ってこの帝国をお守りください!」

「もう決めた事です」

「嫌です!これまでの者たちのようにツカサ様が死んでしまうなんて、そんなの…………!」


すると、皇帝が立ち上がり皇女の腕を掴んだ。


「よさないか、フレシア!皆の前で見苦しいぞ。これまで尊い犠牲があったのは事実だが、ツカサ殿がこの世界の為に立ち上がってくれようというのに不吉な事を言うものじゃない」

「お父様、ですが…………!」

「決意が固まってるのなら、心良く送り出してあげようではないか」

「嫌です!ツカサ様が行ってしまわれるなんて!」


その時、そんな2人の前に1人の男が立った。


はい?川上 大吾?なんであんたがそこに?


「なあ、皇帝さんよぉ。好き放題にしてもいいとはいえ、そんな危険な旅に行かされるのは割に合わねぇな」


大吾はニヤリと笑い、皇女を見た。


「俺が帰ってきたら、この可愛いい皇女様と結婚させてくれよ。そのくらいの褒美がないとやってらんねぇな」


うわ〜っ、このクズ!ゲスいとは思ってたけど、発言もクズ過ぎる!そりゃこの世界の奴らも酷いけど、やっぱこいつ最低!


皇帝は一瞬不快そうに眉をひそめたが、すぐに口の端に笑みを浮かべた。


「そうだな、生きて戻った時にはその願い叶えよう」

「お父様!?」


皇帝の言葉に、皇女は動揺を隠せずにふらつきよろめいた。


っていうか、皇帝生きて私達帰ってくるとは思ってないでしょ。これまでの人達の前例をみても。


「ツカサ殿は生きて帰られたら望みはあるか?」


皇帝がそう司へと質問をした。


そうか、これで司君が自分も皇女様と結婚したいと言えば、2人の求婚者に対し皇女様が司君を選んで………あれ?でも司君は男の人が好きなわけで……………。

いや、でももう帰るつもりはないし、ここは皇女様を立ててあげるでしょ。


「私の望みは何もありません」


司は真っ直ぐに皇帝を見て言うと、ニッコリと笑った。


その言葉にショックを受け、その場に崩れ落ちた皇女を近くの近衛兵が支える。


あわわ、皇女様……………。

司君も元の世界に戻るか、生きて帰ってこれないかもしれないんだから、嘘でも皇女様を望むと言ってあげればいいのに。

あれだけ慕われてるのに、皆んなの前であの発言はないでしょう。可哀想だ。


その後は、侍従の者に連れられ皇女は退場し、司はこの世界での知り合い達に、お前もとうとう旅立つのかなど取り囲まれていた。


こうして、晩餐会は司の新たな旅立ちの報告も受け入れられ、問題なく終わりを告げた。



――


でも、何だかしっくりこなくて、翌日司を問い詰めてしまった。


あの場で皇女様を傷つけるような発言をしなくても良かったんじゃないかと。大吾の発言もふざけてたし、曖昧にしてあげといた方が皇女様にとって良かったと抗議したところ、司は分かってないなと鼻で笑った。


〝それだと俺を思っていつまでも待っちゃうだろ。振る時は、未練が残らないようキッパリと振ってあげなきゃ、次に進めないじゃないか〟


曖昧に濁して期待を持たせる方が残酷だと司は言う。


この帝国に留まって感じたのは、この世界の人達にとって自分はどこまでいっても異世界人なんだということだと司は語った。

見かけは同じでも、特性は魔族と同じで生まれながらに魔法を使え、遥かに秀でた身体能力を持つ自分は、彼らにとっては同じ人類ではなく、別の種族だったと。

そんな環境の中で、フレシアの純粋な想いに救われたのは紛れもない事実で、だからこそ曖昧にして彼女をこれ以上傷つけたくなかったと言った司の表情は柔らかく、愛情ではないにしろ、彼女を想う気持ちがある事は分かった。


目に見える事や言葉だけで、全てを分かったように考えがちだけれど、その深いところまで私は分かってなかったし、考えようともしてなかった。

安易な自分を反省すると共に、これからの教訓にすることにした。


司君は歳も1個しか変わらないのに、ずいぶん落ち着いていて、考え方も冷静で参考になる。

一緒に旅をするようになったら、師匠と呼ぶかもしれない。



それからは、旅立ちの日まで司といろいろと話した。これまでと違って、旅の仲間として堂々と話していても怪しまれないから楽だ。


警戒と皇女様との事があるから、司と話してると今まで城の人達に、チラチラ見られてたし。


旅についての計画もコッソリと煮詰めていった。

竜神湖では魔法が使えなくなるので、船が必要な事や、人里のない暗黒大陸での食材の確保に、アヴィが異空間みたいなとこにしまっていて便利そうだった事を話したところ、そういった便利アイテムがある事が判明した。


見た目は皮の布袋みたいなものなのにで、中は1メートル四方の空間になっており、そのサイズでも家が5,6軒買える費用がかかるそうだ。

だが、司は暗黒大陸に行ってからの食糧や衣服、薬に、寝具にと、かなりの量の荷物を請求し、空間も10メートル四方以上の特注品をリュック型で作ってもらっていた。


こうして旅立ちの日まで着々と準備は進んでいった。

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