4話:魔法
コク…コク…
彼は俺が来てから数分経っても、まだ寝ている。寝不足なんだろうか?
まあいい。彼が起きるまで、何か暇つぶしでもして待っていよう。
『コネクト。』俺は心の中でコネクトに話しかけた。無論、『はい。』と、コネクトからの返事はすぐにきた。
『魔法ってどうしたら使えるの?』
俺は魔法について一応予備知識として知って起きたかったのだ。これでも一応、高校のテストではちゃんと復習したりと、真面目な方なのだ。成績は悪かったけど。
『魔法というのは"イメージ"の具現化です。なので火をイメージすると、火魔法を放て、風をイメージすると風魔法が使えます。ですがイメージした魔法を使うには"魔力"が必要です。』
『魔力?』
『はい。魔力というのは空気中に漂っている『世界の魔力』と、自らの体にある魔力があり、魔法は体の中の魔力を使います。』
『へぇー。ちなみに魔力はどうやって外に放つの?』
『そうですね…なんと言ったらいいか……』
コネクトは少し沈黙を挟んで俺に言った。
『ルア様、重力って知ってますか?』
『え?バカにしてる?さすがにそれは知ってますよぉ~。』
『重力は物体が天体の地面に寄せられる力のことです。』
あれ?知ってるって言ったのに説明された?
その後、コネクトは続けた。
『その力よりも強い力を加えると、重力に逆らうことができるのです。一時的にジャンプしたりなどと。』
『つまり、それがどう魔力の放出に繋がるの?』
『魔力放出は重力に逆らうことと同じようなことなのです。普段魔力は体の中に引っ張られてるのです。』
『え~?』
わからん。心の中でそう呟いた。
『つまり、手から魔力を出す場合、体内にある魔力を自ら引き出す必要があります。』
『それはどうやって?』
『簡単なことです。手の平に力を入れるんですよ、重力に逆らう時のように。』
『え?それだけ?』
『はい。…1回やってみてはどうです?』
『…そうだな。えーと…イメージするんだっけ?』
『はい。主な魔法の種類は、風、火、水、雷です。』
『ありがとう、コネクト。』
『はい。』
イメージね~。俺、高校生の成績表、美術2だったぞ?イメージできるかな…
俺はそんな心配事があるが、物は試しだ!そう思って、火をイメージした。メラメラと燃え盛る火を。そして言われた通り、手の平を上に向けて力を入れた。
そして驚いた。
俺の手からは、高さ20mほどあるこの場所の天井にぶつかっても尚、止まらないような大きさだった。
「うわぁ…」と、思わず声が出るほどに。
「どうしよ。」
魔法を消す方法を知らない俺は、とりあえず入れていた力を抜いてみた。
すると手の平から出ていた魔法は、シュン。と、勢いよく消え、その真上の天井を見ると、かなり焦げていた。
うわ~、あれ直すお金とか請求されたらどうしよ。とか思ってる内に、コネクトが話しかけてきた。
『やりましたね、ルア様。』
『うん、別の意味でやってしまったかもしれない。』
『この調子でどんどん試してみましょう。』
『え~、物壊すのやだよ~?』
俺がそう言ったら、その解決策を教えてくれた。
『では威力を小さくしてみましょう。』
『どうやって?』
『力の調節ですよ。上手い具合に調節してみてください。ルア様は魔力量が人よりも数十倍多いようなので、ものすごく弱い力を入れて、魔法を使ってみてください。』
『ん?数十倍?』
『はい。』
『お~、俺にもそんな才能があったのか~。』なんか嬉しいな。
『はい。』
『そんじゃ、やってみるわ。どうも~。』
力の調節ね…さて、やるか。俺はさっきと同じように、火をイメージした。そして、本当に微量の力を手に入れる。
すると、さっきよりもはるかに小さく、ハムスターぐらいの大きさの火が、手の平に現れた。
俺が大きさのことでハムスターをイメージしたせいか、火はハムスターの形になり、やがて自我を持って動き出した。
「えっ!?」
俺は思わず声を上げて驚いた。
そして、すぐさまコネクトに尋ねる。
『コネクト!これどういうこと!?』
その間も手の平の上で、火で形作られたハムスターは動き続ける。
俺がそんな中、テンパっていると、コネクトは静かに答えた。
『ルア様がハムスターをイメージしたためです。そのため、火はハムスターの形を作り出し、それが意思を持って、今動いているのです。』
『え~…またわからん~。これ、消せるの?』
『はい。力を抜けば、です。』
俺が力を抜くと、手の平にいた火のハムスター消えた。少し名残惜しいが、ここにいても仕方ないのだろう。
「……消えたな。」
俺は消えたことに、声を出して反応した。
すると、その声で、今まで眠っていた彼が少し体をピクつかせた。
その瞼はゆっくりと開き、そして俺の方へと彼は顔を向けた。彼は俺をまじまじと見ると、やがて口を開いた。
「お前、いい体してるな。」
…は?いや、人を見た第一声がそれ?
「えっと…」
俺は少し戸惑ったが、彼が言葉を続けたので、その戸惑いはどうでもよくなった。
「ミオの所から送られてきたようだが……もう教えることは無さそうだな。よかったよかった。これでまた寝れるよ。」