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異世界革命 Rewrite  作者: 夜野 海
1章:異世界への転生
2/13

1話:1%に満たないその転生

──ピピピピッ、ピピピピッ──


朝の光が外に降り注ぐ頃、静寂な部屋に目覚ましの騒がしい音が響いた。


「ん…」


俺はその音で目を覚ました。そして、目覚ましを止めてベットから起き上がる。


今日は金曜日、高校だ。なので制服に着替え、リビングへと向かった。


「おはよう。」


俺は親にそう言った。


「おはよう。」

母は軽く俺に挨拶を返す。


「ご飯作っといたから、食べて行ってねー。」


そう言った母は、そそくさと家を出た。母は仕事で忙しいからな。


俺は言われた通り、母が作ってくれたご飯を食べてから身支度をして、家を出た。そして俺は高校に歩き始める。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

俺は蓮河 蒼太れんかわそうた。16歳で、ごく普通の高校生だ。


人より優れた能力も無ければ、頭脳もそこそこ。バトルで言えばすぐに死ぬ雑魚キャラだな。


歩いた末に辿り着いたのは、もちろん高校だ。


俺が通っている『小鳥高校』は、他と何ら変わりない高校。教室も、授業内容も。俺はそんな高校の中に歩き出した。


階段を登って教室までの道のり、そこで聞こえてきたのは俺を呼ぶ声だった。

「蒼太ー!」

俺の親友、小川おがわ 惺佑しょうすけの声だ。その声が後方から聞こえてきたので僕は振り向く。


惺佑はその茶髪を揺らしながら俺の方へ走ってきていた。


一方でその隣では、俺の親友、通称『レオ』というボクっ娘が、歩いて俺の方へと歩いていた。


惺佑は俺の元に着く頃には、息切れをしていた。階段を猛ダッシュしてきたんだろうな…それでも惺佑は俺に言った。

「おはよう。」と。

「蒼太、おはよう。」

「おはよう、2人とも。」


俺は2人と挨拶を交わし、共に教室へと向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

授業が始まり、給食を食べ、また授業をする。


いつもと変わらない日常。


思えばこんな日常があるからこそ、俺は毎日頑張って生きていけるのかもな。


惺佑との会話。レオとの帰り道。母親との会話。


全ての普通に、きっと意味があるのだろう。


高校で全ての授業が終わり、レオと別れ。


そこからだ。


俺の普通は消えた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

いつもの帰り道、俺は1人で歩いていた。人気の無い通り道に差し掛かった時、空から何かが落ちてきた。


それは地面にドン!という音と共にめり込み、周りには砂埃が舞った。俺はそのせいで少し咳き込む。


「なんだ…?」

何かが落ちてきた場所を砂埃の中、見ていると、次第に砂埃が落ち着いてきて、視界が戻ってきた。


見ると、そこには白い布のようなもので体を覆った人が立っていた。


…なんだ?この人。


…てか、空から落ちてきたけど大丈夫か?「あの…」

俺が話しかけようとしたら、彼の姿は消えた。

「えっ…」

俺は思わず周りをキョロキョロと見渡す。その姿は俺の後ろに移っていた。


…一瞬で移動したのか?

…いや、そんなことありえない。人間には不可能だ。でもコイツはやってのけた。


意味がわからない。

…人間じゃないのか?


コイツはずっと黙っていたが、ようやく口を開いた。

「…悪い。」


悪い…?

「どういう…い…み……」


彼に尋ねようとしたが、俺はすでに彼に心臓を拳で貫かれて殺されていた。

「本当にすまない。」

そんな声が、俺の意識が無くなる寸前に聞こえた。


死ぬ直前、俺は走馬灯のように、ある人の声が頭に駆け巡った。


『蒼太。命を大切にして、長く生きろ。』

これは父の声だ。父は俺が幼い頃に病死し、母はそれを悲しんだ。もちろん僕も。


これは父が死ぬ直前、病室で言っていた言葉だったな。


…ごめん父さん。約束、守れない…


父の声が頭に響いた時、体は動かなくなり、瞼は重くなって、そこで俺の意識は途絶えた。恐らく死んだのだろう。目の前はとても深い暗闇に包まれた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

くそ…死んだのか…?

体の感覚がない…

やっぱり俺はバトルですぐ死ぬ雑魚キャラだな…


にしてもあいつ…何者だ?


そんなことを考えていると、暗闇の中で何かが光った。それは俺に自然と近づいてきて、言葉を発した。


「蓮河蒼太さん。聞こえますか?」

それは、少し低めな女性の声。


「えっ、あ、ああ。聞こえるけど…」

俺は暗闇の中、光っているものに戸惑いながらもそう答えた。


「良かったです。」

「あのー…」


その光っているものに、俺は聞いた。

「俺って…死んだ?」

「はい。死にました。」


うわあ…どストレートに死んだって言われた…

「えっと…君は?」

俺は光るものにそう尋ねた。


「私は『コネクト』。あなたの世界から異世界『バリアス』をコネクト(繋ぐ)する者です。」

「異世界…?異世界ってあの、漫画とかでよく見るあれ?」

「そうです。あなたの世界で言う『異世界転生』を、これから私が行います。」


なるほど、それでコネクト(繋ぐ)…か。


「んじゃあ頼むよ。このままずっと暗闇の中にいるよりは、異世界に転生した方がましだ。」

「わかりました。では蒼太さんの新しいお名前を考えください。」

「名前?蒼太じゃだめなのか?」

「いえ、べつにそういうことではないですが、異世界に行くとその名前では、浮くといいますか…」

「なるほどね。」


名前……

俺は少し頭の中で自分の名前を浮かべた。


蒼太…あお…青…ブルー…アオブルー…ブルーア…ルーア…ルア…!


「うん、『ルア』なんてどうだ?」

「はい、良いと思います。それではその名前で、蒼太さんを転生させますが……2つ条件があります。」

条件…「…なに?」

「1つは、年齢をそのままで転生させること。2つ目は、あなたにスキルとして私の分身を譲渡することです。」


スキル?

…まあ、いいや。これから異世界だし、そこで覚えてけばいいよな。


「…わかった。その条件をのむよ。」

「ありがとうございます。それでは転生させますね。」

「お、おう。」


いざ転生するってなると少し緊張するな。


「コネクトの名において、蓮河蒼太を『ルア』として、異世界『バリアス』に転生させる。」


コネクトがそう言うと、光っているコネクトが、さらに光を放ち、俺の視界は白い光で包まれた。


そんな中、コネクトの声が聞こえた。

「それでは、異世界生活をお楽しみください。」そして、俺の意識はそこで途絶えた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇「ん…」


目が覚めた時、俺はどこかの草地で寝ていた。服は高校の制服だが…なんか前より小さくなってないか?


いや、それより…「ここが…異世界…なのか?って…あれ?俺の声…どうしたんだ?」


俺は体を起こしながら1人でそう呟く。その声はまるで女の子のように高い声だった。転生する前の俺とは似ても似つかない声。ひとまず俺は草地から立ち上がった。


……にしても、この声…

コネクトに聞いてみよう。確か、コネクトがスキルとしてコネクト自身の分身を譲渡するとか言ってたような…


ということを俺は思い出した。それを考えていると、頭の中で誰かの声が響いた。

『蒼太さん…じゃなくて、ルアさん。聞こえますか?』


頭の中に響く声、それはコネクトのものだった。ていうか俺は今『ルア』って名前だったな。

「おう、コネクト。聞こえるよ~。…というか俺の声、どうなってるの?」

『申し訳ありません。』


再び頭の中でコネクトの声が響く。その声は少し暗かった。

「…えっと…」

『性別を男性として転生させるつもりが…ルアさんを"女性"として転生させてしまいました。』


女……「それは、意図的にそうしたの?」『いいえ。異世界に転生する際、世界の魔力を使用して体を構築するのですが、恐らくそこで何らかの不具合が生じたのだと思います。ちなみに今までその不具合が生じる可能性は0.3%でした。』


別にコネクトのせいじゃないってことだな。まあ、元からコネクトを責めるつもりはないし、今のはただの確認だ。


「…まあ、しゃーない!コネクトのせいじゃないよ!それに0.3%ってすごくない?1%よりも小さい可能性の転生をしたんだよ?俺。」

『…ルアさんはプラス思考で、優しいですね。…ありがとうございます。』

「まっ、これから俺の異世界生活を支えてくれよ?」

『もちろんです!』


うんうん、いい仲間ができたな。そんなことを思っていたら…


ドスン…!ドスン…!


という音がどこからともなく聞こえてきた。


「あれ、これなんの音?」

『魔物…じゃないですか?』

「えっ?」


音は次第に俺の方へと近づいてきて、音が鳴る方向がわかった。

「左…」

音の方を向いたら、30mほど先に人型の、身長5mほどある何かが俺の方へと近づいてきていた。よく見るとその体色は茶色で、その手には鬼の金棒みたいな武器を握っている。その長さは彼の身長と同じぐらいだ。


いわゆるオーク、という奴だろう。


オークは俺の方へとまっすぐ走ってくる。

…あれ?俺、殺されるんじゃね?


そう思って、俺はすぐにオークから逃げ出した。


「うおおおおお!」

そんな声を上げながら。


オークはさらにスピードを上げて俺を追いかけてくる。


おいおい!

異世界に来てすぐに死ぬとかあんまりだぞ!?


『ルアさん…ついてないですね。』

「ほんとだよぉ!」

そう言いながらも俺は全速力で走り続ける。『こんなタイミングであれですが…私に話しかける時は、頭の中で発言すればできますよ!』

「へぇー!そうなんだー!便利ー!でもタイミング!!」

『ルアさん、頑張って走ってください。』「頑張ります!」


コネクトとこんな会話をしている間も、

ドスン…!ドスン…!と地面が震わす音が聞こえる。俺はその音でさらにスピードを上げる。


ちょっと後ろを振り向くと、すぐそこまで5m級のオークが迫ってきている。


足早すぎんだろ!


俺がそれを確認して、前を見ると、少し遠くに集落が見えた。家が見えるから人間のものだろう。


くそ…!あそこの人達を巻き込みたくない。…どうする?……戦うか?…いや無理だ。少なくとも今の俺では。…向きを変える?…それだと変える時に間合いが生じる。その隙に、あの金棒で瞬殺されるだろう。


「くっそ!どうすりゃいい!?」


その時、誰かが俺に言った。

「私に任せて!」


その声は女性のもので、なぜか俺の頭上から聞こえた。


そして彼女は俺の前に行った。その姿はまるで魔女…というか魔女だな。ほうきに乗ってるし。彼女は俺の前方で、ほうきを上に残して着地すると、俺にこう言った。

「私の後ろに隠れて!」

「…わかった!」


俺は彼女を疑いもせずに、助けてくれるのだろうと信じた。彼女は俺が後ろに行ったことを確認すると、羽織っていたローブの中から杖を取り出した。


彼女は迫ってくるオークに怯むことなく、堂々とその杖をオークに向けた。


「があああ!」


オークは声を上げながら彼女に向かって走った。そして彼女の前で足を止めると、その金棒を、野球のバッティングのように彼女へと振った。だが彼女は一向に動く気配が無い。


少し遠くからそれを見ていた俺は、彼女に対して叫んだ。「危ない!」と。

「え?」


彼女は俺の言葉で気を取られてこっちに振り向いた。


そう、振り向いてしまったのだ。


そのため彼女は俺のせいでオークの金棒の餌食になってしまった。オークの金棒は彼女の横腹に直撃し、彼女は横に吹っ飛んだ。彼女は殴られた部分から、大量に血が出ている。「うう…」彼女は横たわりながら、苦しそうに声を出した。


俺はそれを見て、苦渋の表情だ。

俺のせいで…!俺が彼女を救わないと…!『コネクト!』


俺は声で出さずに、頭の中でコネクトに呼びかけた。

『はい。』

『なんか戦う方法とかないのか!?』

『今のルアさんには、あのオークを倒せる方法はないです。…ですが、彼女は違います。あの人は魔女です。なのでルアさんがオークの気を少し引けばその隙に倒してくれるでしょう。』

『なるほど…!ありがとう!コネクト!』

『はい。』


オークの気を引けばいい……

気を引ければ…!俺は拳に力を入れた。そしてオークに走り出す。俺はその全力の拳でオークを殴った。


オークはそのおかげで俺の方に顔を向けた。


「…!」彼女はオークの視線が自分から外れたことを確認し、ほうきでオークを叩くのをやめて杖を自分の傷口に向けた。


すると、傷口は緑色の光で包まれ、みるみるうちに傷は治っていった。


その一方、俺はさっきの彼女と同じように、オークに金棒で殴られそうになっていた。


今はこれでいい。たとえ戦えなくても。たとえ死んだとしても。そのおかげで彼女の手助けをできるなら。

…今はこれでいい…!


俺の体にオークの金棒が触れる直前、彼女がオークの後ろち立っているのが、オークの脇の隙間から見えた。彼女がさっきオークに殴られた傷口はすっかりと完治し、杖をオークに向けていた。


「『水流斬すいりゅうざん』。」

彼女がそう言うと、杖からは水が飛び出した。その水は刃物のように尖り、やがては剣先のような形になって、オークの背中を突き刺した。その後、その水は刺した部分よりも手前で枝分かれし、その枝分かれした水も同じような形になってオークへと刺さった。そしてオークは俺の方へと倒れてきた。俺はそれを急いで避け、オークは地面に倒れる。


「死んだ…のか?」

「うん。」

「はあ~、助かったー!ありがとう!あとごめんね!俺が話しかけて、あんなことになっちゃって…」

「いいよいいよ!別にあれくらい!すぐに魔法で回復できるしー。」


…良かったー、恨まれなくて。


「……君、名前は?」

俺は彼女に名前を聞いた。

「私は『レオ』。魔女の長だよ。」


レオ…俺の親友と同じ名前、か…

それに魔女の長……


気になることは色々とあるが、俺はひとまず彼女に名乗った。

「俺は『ルア』。今転生してきたんだ。」


レオも色んなことが気になったみたいだ。そんな表情をしている。


まあ、とりあえず…

「よろしく、レオ。」

「うん。よろしくね、ルア。」


こうして俺は異世界転生を果たし、レオとの出会いを遂げた。


…これから俺の異世界生活が始まるのだ!

そう考えたら、さっきオークに襲われたことなんてどうでも良くなるほどに、俺の心は踊りだしたのであった。

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