10話:天使
何も見えない。ただ単に、目の前に広がるのは青い色。俺は何が起こったのか考えてみた。
手が青く光だし、その光が大きくなって、今俺を包んでいる。
…んー、わっかんないなー。
と、そんなことを思っていると、次第に目の前の青が薄れていった。
そして終いに俺から見えた景色は、全体が白く包まれ、とても大きな建物。宮殿だった。
俺は、周りにレオとカッコイがいないことよりも、いる場所が変わったことに驚いていた。
周りを見渡すと、地面も白く、遠くにある天井(?)までもが白くなっていた。そして宮殿を取り囲むようにして、虹色のオーラ(?)らしきものがメラメラと、高い場所まで燃え盛っていた。これが結界というものなのだろうか。その結界のせいで、俺はいつの間にか宮殿の領域に入ってしまっていた。出るのは恐らく不可能だろう。
それなら…「中に行ってみるか……それしかないしな。」
俺は宮殿の入口らしきものから中に入った。
中は、いや中"も"白1色で覆われていて、殺風景なものだった。
そんな場所を歩き続け、数分たっただろうか。その数分で、ここがそれほどに広い場所だということが理解出来た。
そんな時、「『天使』様、『悪魔』のあの言葉…どう思いますか?」
「んー、やっぱり本気なんじゃない?」
「それでは…!」
というような会話が聞こえてきた。
俺は盗み聞きが嫌いなため、すぐその声の主の方に向かっていった。
すると、そこには3人の男女がいて、1人の女は偉そうに大きな椅子に座り、もう2人の男女はその男に、椅子の近くで跪いていた。
俺はそんな彼らに近づき「あのー…」と話しかけた。
が、「そだね、私もそれなりの対策はしようかな。もうすぐ死んじゃうし。」
彼女は俺のことを見もせずに会話を続けた。まるで俺が見えていないかのように。
ていうかこれ、見えてない…?
俺はそう思って、ふと自分の光っていた方の右手を見てみた。すると、その光はまだ薄く残っていて、俺の手のひらを照らしていた。それに、手が少し透けていた。それは手のひらのみに関わらず、体全体まで透けは広がっていた。
俺は少しの焦りと戸惑いを感じながらも、
『もしかして、ほんとに見えてない…?』
と、そんな考えが俺の頭によぎった。
今喋っている彼女は、先ほど、跪いている男に『天使』様と呼ばれていた。レオからの説明では、天使は人類を統べる者、だったはずだ。そして同じ人物が言っていた『悪魔』は魔類を統べる者。2人は互いに敵対関係。
だけど…天使はもう死んだって言ってたよな…?
だったらなんで今………もしかして、これは過去の出来事なのか?いや、彼女が偽物の可能性だってある。まずまず、なんで俺はこんなものを見ている?なぜ手が光った?謎は深まるばかりだ。
…考えても仕方がない。まずは見えるものを見ておこう。考えるのはそれからだ。
天使と思われる女性は続けた。
「私だって、タダでは死ねない。だから、『後継者』を作ろうかな~って思ってさ。」
後継者…?
俺はそう思いながらも、彼女らの会話を聞き続けた。
「後継者…ですか……しかし、天使様が直接悪魔を倒せばいい話では…?」
跪いている女は天使と思われる人物にそう聞いた。
天使はそれに、「ん~、私じゃ悪魔は殺せないと思うんだよね~。」と答えた。
「…!」2人はそれに驚いたようだ。
その後で男が続けた。
「…ちなみに、その後継者には何を後継してもらうのですか?」
たしかにそうだな。気になる。天使は俺らの疑問に表情を変えずに答えた。
「『青色』だよ?」
青色…?
初耳だな…天使特有の能力だったりするのだろうか。
俺は至って普通の表情のまま彼女の答えを聞いていたが、跪く2人は違うようだ。
「そんな…!」
「なぜです…!」
これ以上無いと言っても過言ではないほど驚いていた。
そんなに大事なものなのか…?一体誰が受け継ぐんだろう。
そんな俺の疑問に答えるように、天使は2人に言った。
「後継者の名前は『蓮河蒼太』。後の『ルア』さん、ね。」
…えっ、今俺の名前言った?しかも前世の……は?えっ…どゆこと?
予想外の人名に、俺はひたすらに戸惑っていた。
そんな時、俺の右手がまたもや大きく光だし、俺の体を包んでいった。
そしてただひたすらに青。
それは次第に薄れていった。さっきと同じだ。
一体この光は何なのだろう?俺は自ら出そうと思って出してるわけじゃないし…
それに俺が、天使がもつ能力(?)の後継者?そんな自覚は無いし、いつ俺が、その『青色』を天使から受け継いだのかもわからない。
それはそうとして、俺は本当にその能力を使いこなせるのか?少なくとも使いこなすのは難しい。何せ、人類の統率者、天使の能力なのだから。そう易々とは使うことさえできないだろう。
俺から見える景色は、次第にナースのマリさんの顔へと変わっていった。
俺は彼女に尋ねる。
「あれ?俺今までなにしてました?」と。
すると彼女は
「あなた急に倒れたのよ?今は寝といてね。」
「えっ…?」
マリさんに言われて、俺はベッドで寝ていることに気づいた。
「ところでレオとカッコイは?」
周りに2人の姿は無かったのだ。
「2人はレオさんの家にいるわよ?…行ってみたら?」
レオの家に…?
「そうですね…向かってみます。」




