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箱の中身はなんだろな  作者: 赤石じゃんぺい
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第四話 水を操る弓

 

 カエルは武器を出した星乃を警戒した。意識をこちらに向けさせることは出来たが、女性は衰弱しており、相変わらず危険な状態だ。

 

 (余り時間は掛けられない……)


 星乃は頭上に向けて2本の矢を放った。


 『ドルフィンアロー』


 天空へと放たれた矢から水が噴き出し、矢を中心にイルカの姿へと形作られていった。そして、水で出来たイルカが2頭誕生し、空中を泳ぎ始めた。

 

 「行って!」


 空中を漂う一頭の水のイルカがカエル目掛けて突っ込んで行く。そのことにカエルは微動だにせず、頭上から迫るイルカをじっと見つめた。

 

 衝突する瞬間、カエルは腕で地面を叩きつけ、勢いで素早く後ろへと飛んで回避した。避けられたイルカは地面に激突するギリギリで浮上し、さらにスピードを上げ、カエルを追尾した。後ろに飛んだことでバランスを崩したカエルは、正面から攻撃を受けたのだった。

 

 巨大な水の塊が衝突したことにより、カエルは後ろに吹っ飛ばされ、そのまま後ろにあった木に激突した。木がミシミシと音を立てて倒れる。

 

 (よし!)

 

 一撃加えたがまだ安心は出来ない。星乃は緊張した面持ちでカエルの方向を見る。

 

 折れた木の影からカエルが起き上がってきた。その体には傷一つついておらず、苦しそうな素振りすら見えない。


 「嘘 効いてないの…!?」


 動揺により、矢を射るのが一瞬遅れた。

 

 カエルはその隙を見逃さず、地面を両手で思いっきり殴りつけた。衝撃が地面を揺らし、星乃は体勢を崩す。そこに追い討ちをかけるように、カエルは高速で舌を伸ばした。

 

 (避け……)

 

 ズドンと大きな音と共に、カエルが伸ばした舌は星乃の後ろにあった岩を貫いていた。


 星乃は、間一髪もう一体のイルカを呼び寄せ、水の中に自身を入れることで空中へと退避し、舌での攻撃をかわしたのだった。


 (危なかった、あの攻撃は絶対に食らっちゃ駄目だ)


 星乃はイルカを泳がし、弓の届く限界の距離まで離れて水から出た。

 

 (ドルフィンアローは効かない。 だったら……)


 星乃は自らが入っていたもう一体のイルカを突っ込ませた。カエルは、その攻撃が無意味だと言わんばかりに余裕の表情を見せ、避ける素振りすら見せない。

 

 「くっ 舐めないで!」


 イルカは衝突の直前で軌道を変え、カエルの足元の地面に激突した。


 「さっきのお返しよ」


 水の塊の衝突で地面は大きく揺れ、そしてひび割れた。崩れた地面に足を取られると察したカエルは咄嗟にジャンプをした。


 「今だ!」


 星乃は、イルカを突撃させている間に矢に水を溜め、圧力を加えていた。その矢で空中に浮いたカエルを狙い撃ちにした。


 『ウォーターレイ』


 矢はまるで水のビームの如く飛んでいき、カエルの左肩を掠めた。眉間を狙って射た矢であったが、空中にいるカエルが瞬時に舌を近くの木に巻き付け、体を引っ張った為、急所を逸れたのだった。


 カエルは血の噴き出す自身の左肩を見て、怒りを露わにして咆哮を上げた。先程までと打って変わって凄まじい威圧感に星乃は身がすくんだ。

 

 その隙を見逃さず、カエルは星乃目掛けて何かを吐き出した。それは糸のような粘液で、星乃の両足に当たった。


 (しまった!?)


 必死に取り払おうと試みるが粘着力が強く、足に巻きついたまま離れない。ドルフィンアローを打って離脱しようとした矢先、腕も粘液で封じられてしまい、弓が引けず完全に身動きが取れなくなってしまった。


 カエルは動けない星乃にゆっくりと近づいてくる。そして目の前に立ち、星乃を押し潰そうと右手を振り上げた。


 (もう駄目…… お姉…ちゃ…ん…)


 その時、木の影から石が飛んできてカエルの左目に直撃した。カエルは悲鳴を上げ後ろによろめく。


 「何とか間に合ったな」


 そこには黒い刀を持った鴉羽の姿があった。


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