第20話 楽しい学院生活編 その6 闇の迷宮を攻略し、先生をゲットしよう
”クエスト”における、熱い殴り合いを経て、特Aクラスの友情が深まってから1週間。
オレは焦っていた。
なにしろ、この最強幼気可憐リリ様が、いまだに一人も攻略できてないのである!!
なぜかというと……
(あっ……特Aクラスの皆様ですわ…………うう、眩しい……近づくだけで、魔力酔いしそう……)
そのいち……他のクラスと実力差があり過ぎ、もともと畏怖される存在であるため、女子が近づいてこない。
「どっせーーい! どうしたんですの!? それでも誇りあるメルゼブルク魔法学院の生徒ですのっ!? (綱引きでけが人大量発生)」
そのに……無駄に、やる気天元突破の体力バカにより、体育の合同授業中止。
(まあ! リリ様よ!……あれが短期留学生の……なんとかわいらしいのでしょう……)
(……いけませんわ……彼女はヨーゼフ家のかた。 アスマン家の子女と魂の殴り合いをしたとか……半端な者が近づくと殴られますわよ)
そのさん……クエストでの熱血友情ごっこが、オーバーに伝えられ、すっかり怖がられているオレ。
「なんてこったあああああ!!」
バキイッ!
「まあまあ、リリ様……フラグを立てた直後の、某艦長さんみたいなことを言いながら、机を破壊しないでください。 さらに女子に怖がられますよ」
ああ、そうだった……真っ二つになった机を魔法で再生しながら慰めてくれるサナ。
……サナの再生魔法、机まで再生できるのかよ……いよいよ反則だな……
「それに、クリスちゃんとは親密になれたじゃないですか……もうすぐベッドインできるのでは?」
ベッドインとか言うな!
……う~ん、なんというか、アイツとは拳と拳で語り合う、強敵と書いて友と読む……みたいな関係になってるのだが……
「それよりも、わたしも困ってるんです……なにしろ……」
「えへへ……! さっなっちゃーーーーん!!」
むぎゅう!
「あ、やん! は、ハンナちゃん! いきなり抱きついてこないでくださいっ!」
「すりすりすり~、ああ、手触りぷにぷに~。 ねえねえ、また回復魔法掛けてよ~、ギンギンにしてよ~」
ははあ、なるほど。
先日のクエストで、サナの回復魔法で命を救われてから、ハンナはすっかりサナのとりこになっているようだ。 サナの腹肉の手触りは最高だから、しかたないね。
「リリ様!? わたしが”ブーデー”だと勘違いされそうな言動は慎んでいただけませんか!? って、ハンナちゃん!? のおおおお!?」
ハンナに逆レされそうになってるサナは置いとくとしてだ……このままではオレのムラムラがリミットブレイクして爆発するじゃないか!
なんとか今週中にイレーネ先生ぐらいはゲットしないと!!
ガラッ……
「あー、おまえら、揃ってるか? 特に臨時教官補佐のリリ、サナ、おまえたちに頼みたいことが……」
きたっ! ターゲットきたっ!
「はい! やります!」
ムラムラでおかしくなってたオレは、内容を聞かずに、面倒事への参加を承諾していたのであった……
*** ***
ノーウェイトで承諾したオレに、最初は戸惑っていたイレーネ先生だが、すぐにいつものペースを取り戻し、現在は今回の”特別クエスト”の内容を説明してくれてるところだ。
「メルゼブルク魔法学院は、500年前から続く伝統校だが、おまえらも知っているように、神話時代の遺跡の上に建てられている」
「普段学生がトレーニングで使っている練習用ダンジョンも、地下に広がっている遺跡を改修したものだ」
練習用ダンジョン。
オレにとっては、目をつぶって逆立ちしても、右手一本でクリア可能なレベルではあるが、この学院の地下には、全20層からなる練習用ダンジョンが整備されている。
レベルDの初級クラスから、レベル特Aの最上級クラスまで、様々なレベルの魔導士に合わせた、最適なバランス調整がされているため、本職の冒険者も使用料を払ったうえで、トレーニングに訪れるほどだ。
「ニーズの高い、中級レベルのダンジョンを去年拡張工事したんだが……ちょーっと、(ウチが)発破魔法をミスって、謎の暗黒ダンジョンに繋がってしまったんだよね☆」
あっ……思わず察してしまったが、原因はこのアル中教師だな……だからオレたちの面接のときに、あんなこと(”手伝ってくれたら、何でも言うこと聞いたげる”)言ったんだな……
だが、これはチャンス! ここで先生に恩を着せてしまえば、夕暮れ迫る、誰もいない教室で……幼い生徒と女教師の禁断の愛が……良い! ヤル気出てきた!
「んんっ……我々教師陣は、”混沌の深淵”と呼んでいるんだが、中にはSクラスのモンスターが蠢いていて、なかなか手が出せないんだ。 しかも、定期的に瘴気があふれ出し、風下の街や、畑に無視できない被害が……」
「公国から、特A級魔導災害に認定されちった……特A級認定は、30年ぶりらしいぞ! はっはっはっ!」
原因作った人が、笑ってるぞ……
「と、いう事で若人たちよ! ウチの快適な晩酌……もとい、地域の安全のため、”混沌の深淵”を攻略してくれ! 評定スコアは3,000だすぞ! ういっく」
欲望をダダ洩れにしながら、ラム酒を煽るイレーネ先生。
いよいよダメな大人だな……
「さんぜん!! それだけあれば、今年の進級は安全圏! うおおお! ハンナ、やりますっ!!」
「わたくしが特A級魔導災害を解決すれば、アスマン家の名も上がりますわね……いいでしょう、やりますわ!」
「……なんか、皆さんヤル気みたいですが、Sクラスのモンスターですよね? 大丈夫でしょうか……」
湧き上がるクラスメイトとは対照的に、少し心配そうなサナ。
まったく、サナは心配性だな。 オレは、サナの髪とケモノ耳を優しくなでてやる。
「んっ……」
「最深部には、ちょい手ごわい奴もいるかもしれねーが、ドラゴンの力を発動させれば、問題ないな……今回は絶対に守ってやるから、安心しな」
「ああ! やっぱり、リリ様は素敵です!」
オレは、ちらりとグスタフを見る。 まあ、いざとなったらメイン盾を使えばいいか……
「??」
グスタフが不思議そうな表情をしている。 盾役の男は、どうしてもそういう扱いになるのだ……許せ……。
その後、先生から2、3の注意事項を聞き、オレ達は”混沌の深淵”に挑むことになった。




