第16話 楽しい学院生活編 その2 かわいいロリ教師と、圧迫する面接
「いやー、驚かせてすまんね。 ウチは世にも珍しい、ハイエルフとのハーフでね。 体の成長が遅いんだ」
「こう見えて、教師生活15年のベテランだ。 せっかくうちに来てくれたんだ。 キミたちの留学生活が充実したものになるよう、協力させてもらうよ。 ひっく」
ふう、先程は驚いてしまったが、ハイエルフとのハーフなら納得だ。 そもそも、オレなんか2万3千歳だしな!
いまは、イレーネ先生から、学院の設備やクラス構成といった、基本的なことの説明を受けているところだ。
……それにしても、先生は穏やかで落ち着いた話し方をする女性……なのに基本酒を飲んでいる、というのはどういう事だろうか?
「……ああ、すまんね。 ハイエルフの父から受け継いだ体質で、魔力のキープにアルコールがいるんだ。 決して、好きで飲んでいるわけではない……ふふふ、うーい」
説明しながら、ウイスキーの角瓶を煽るイレーネ先生。
……まああれだ。体質というのは、人それぞれだ。うん。 オレの下僕は足クサ剛毛だしな。
「……リリ様? いまわたしに失礼なことを考えましたね?」
心読魔法を使ったかのごとき、勘の鋭さを見せるサナ。 こいつめ。 付き合いも長くなってきたからか、オレの行動を読みやがるぜ……やるな。
「さて、学院の基本事項はいま説明したとおりだが、配属されるクラスを決めるために、”面接”をさせて欲しい……当学院は、ご存じの通り、魔法学院でね。 なんでもいい。魔法を見せてほしい」
なるほど……いくら推薦があるとはいえ、オレ達の実力を確認しておきたいという事か……そうだな、ドラゴン・アーツを見せるわけにはいかないし、まずはサナから見させるか。
オレは、部屋の中を見回し、観葉植物として、鉢植えのリンゴの木が植えてある事を確認すると、その枝をバキリ、と折り、サナに手渡す。
「ほい、サナ?」
「??」
なにしてんの? という顔をするイレーネ先生。
「はい、リリ様。 これを再生すればいいんですね……ふっ」
パアァア……
サナが目を閉じ、回復魔法を発動させる。
「え? 生物じゃなくて、植物に回復魔法ですって……?」
パキ……パキパキパキッ!
緑色に光る、サナの回復魔法。 その光を浴びた部分が、みるみる再生していく。
数十秒後には、鉢植えと、うり二つのリンゴの木が再生されていた(ご丁寧に、折れた枝まで再現されている)
「な、なんですって……これは、公都の中央魔導研究所で開発されたという、次世代魔法……回復対象の遺伝子情報を読み取り、丸ごと複製するSランク回復魔法……なぜ、アナタが?」
「えっ……? この魔法って、そんなに凄いモノなんですか? サナ、お金がないときに1つのジャガイモを10個に複製して飢えをしのいでいたんですが……」
おお、また出たな! サナの貧乏エピソード……今夜は肉を食わせてやるからな……
「いやいや、これは世界で数十人くらいしか使い手がいない、超回復魔法よ……サナさんだったわね……あなた自力でこの魔法を開発したというの……」
呆然とする、イレーネ先生。 む、これは、生半可な魔法では負けてしまう! 主人が下僕に負けるわけには……くっ……ここで高威力の破壊魔法は使えないし……そうだ!
「じゃあ、次はオレの番だな!」
ガララ……
オレは、応接室の窓を開けると、サナの魔導通信端末を、通話モードにさせる。
そして、目を閉じると、集中する(ふりをする……ホントは、ノーウェイトで出せるんだけど)
フアァァァ……
「え? 白い……光の……翼?」
背中に、光の翼を出現させる……形を調整して、ドラゴンの羽じゃなく、鳥の羽っぽくしてみた。もちろん、尻尾は出さない。
「先生、この翼は光と風の魔法力をつかって構成してます(適当)。 魔法力の位相差でエーテル粒子を捉えることができる(適当)んですよ……オレの意思で自由に動かせるんで、こんなふうにも!」
バサッ!
オレは、開いた窓から大空に飛び立つと、一気に数百メートル上昇する。
「はっ!? 一気にあんなスピードで!? 人類の飛行魔法の高度記録は、105メートルだったはずよ……そんな、馬鹿な」
(あー……、先生、聞こえますか? 試したことないですが、その気になれば成層圏まで上がれますよ?)
「はああああ!? 成層圏!?」
おそらく、高度2万メートルまではエーテル粒子の濃度上、上がれるはずだ。
(そーしーてー! これがオレの攻撃魔法だぜ!)
やはり、派手じゃないと面白くない。 普段はドラゴンブレスが使えるので、めったに使わないけど、SSランクの炎属性魔法!
「フレア・レーザー!」
魔法の発動とともに、直径100メートル以上の巨大な火球が、学院の上空を彩ったのであった。
*** ***
「はああああ……合格というより、キミたちは中央魔導研究所に行った方がいいぞ……首席研究者にすぐにでもなれるだろう……」
「いやー、オレ達、そのあたりにはキョーミないんで……ともかく、これでオッケーってことですよね」
「オッケーも何も、とりあえず、私が担任している特Aクラスに入ってもらうが……とても学生のレベルじゃない……一緒に臨時教官補佐の役職もつけるから、ウチら教員陣をサポートしてくんない? 最近困ったことが多くてさー、ひっく」
うえ、めんどくさい事の予感……女の子攻略に忙しいのに、そんなことをしてる暇は……
「たのむよ~手伝ってくれたら、何でも言うこと聞いたげるからさー……うーい。 何でもいいよ?」
にやり……とロリフェイス(29歳)が、妖艶に微笑む。
……あれ? もしかしてありなんじゃねー……?
「はい! オレやります!」
……あ、しまった!
「……リリ様……いよいよ、守備範囲が広くなってきましたね」
そうして、オレ達の学院生活は始まるのだった。