恋の終わる音。
亮に会えない2週間は私に色んな事を考えさせた。
相変わらずメールも電話も来ない携帯を見ながら私はため息をついた…
「元気ないみたいだね、どうかしたの?」
そう言いながら私の顔を覗き込んだのは由紀子さんだ。
由紀子さんとは親子と言うよりも友達に近い感じで接してきた。
由紀子さんをお母さんだと思うのは母への裏切りになるからと自分で決めた事だったが、由紀子さんには本当に感謝しているし、これからもその思いは変わらない。
私は亮の事を彼女に相談してみた。
すると彼女は一言、
「あなたは人間よね?」
そう聞いた。
「…?それ以外に見えるの??」
驚いてそう答えた私を見て少し笑った後、彼女はこう言い出した。
「人間なら同じ失敗は繰り返さないと思うの。本当に失いたくない物は恥をさらしても絶対に手放しちゃだめ!失敗から学ばなくちゃ。」
「本当は分かってたんだ。でも誰かに背中を押してもらいたかったの…ありがとう。」
そう言うと急いで亮の会社に向かう支度を始めた。
電車を乗りついで30分もすると亮の働いている会社が見えてくる。
駅から早足で会社に向かう途中で丁度亮が歩いているのが見えた。
2週間ぶりに見る亮は、なんだか別人のようだ。
「りょ…」
彼を呼ぼうとしている口を急いで押さえた。
彼の隣には可愛らしい女性がいた。
2人は楽しげに笑っている…時より女性が彼をじっと見つめ照れているのがはっきりと見えた。
遅かった…彼は私以外の人を見つけていた。
もう手遅れだと思うと悲しいのに泣くことも出来なかった。
その場から動くことも出来ずにしゃがみこむ。
(あの人すごく綺麗…亮とお似合いだ。)
「…悠か?」
彼が私に気付いて驚きながらこう言った。
「こんな所で何してるの?」
「あ…あの亮に会いに……」
そこまで言うと、涙がぽろぽろと私の目から落ちた。
私が泣き出すと亮の隣にいた女性は、忘れた書類を取ってくるからと足早に会社に戻っていった。
私達は、こんな事で終わるの?
私達の7年間はこんなにももろかったの?
そう言いたかったが言葉にならなかった。
泣き止まない私を落ち着かせようと亮は歩きながら話そう…と言ったが私は首を横に振って、その場を後にした。
ふらふらと力なく歩き出すと同時に、石につまずき転んでしまった。
パキッ!
履いていたミュールのヒールが折れて踵にぶら下がっている。
私はこの時恋の終わる音を聞いた…。