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コドクトリップ  作者: 上野羽美
温泉に入りたかっただけなのに、奥飛騨温泉郷
33/35

「温泉に入りたかっただけなのにin上高地」

 いよいよ寒さが厳しくなってきた今日この頃、いかがお過ごしだろうか。


 関東平野では毎日寒い寒いとはいえど、霜だとか雪だとかの目に見える冬はまだ訪れず、市街地では紅葉が真っ盛りだ。


 そんな秋の深まる中で、一足先に冬をこの目で見てきた。久々更新のコドクトリップはなん山で既に紹介済みの上高地をお届けする。






 今現在も続くコロナ禍で、マスクの着用など、生活様式が変わる中で、旅というものにも変化があった。


 それこそ、言わずもがなのGO TO トラベルキャンペーンである。


 宿を予約した際にもらえるクーポンを使えばお土産代が大きく浮くほどの金額がクーポン券で貰える。

 国民一人一人に貰える訳ではないので、これは行かないと損だ。


 さて、何処に行こう。


 コドクトリップでは御朱印やらなんやら、一応は自分で学ぶ機会を設けるために始めた企画だ。何かしらの目的を持った方が書きやすいというのも事実。


 だが、多くの旅先はこのキャンペーンのおかげで宿も埋まりまくっている。新幹線?乗れるわけねぇ。


 そこでなんとなくで決めた行き先が飛騨高山だった。


 なんというかもう学ぶ気などさらさらない。もう完全にお気楽旅行に行っている。あの伊勢での思い出が忘れられない。温泉が、宿が、食事が…。一年に一回ぐらい、ああいった手放しの旅行に行きたい。許せ。


 そして飛騨高山より長野寄りにある奥飛騨温泉郷で宿を取り、どうせならと奥飛騨温泉郷の裏っかわにある上高地に再訪することにした。



 さて、標高2〜3000メートルくらいある地域になると冬季は閉山というケースが多い。

 上高地もまさにそれで、毎年11月16日〜4月27日を閉山期間としている。

 この間、上高地に行く唯一の手段であるバス…とタクシーは運行しない。行った日が14日なのでちょうどよく滑り込めたという訳だ。


 土日ということもあり、混むだろうと深夜十二時に出発。深夜二時三時に行くよりも流石に高速は堪える。


 上高地マイカー駐車場到着が六時前。

 なん山に書いたかどうか覚えていないが、さわんど大橋という区域からマイカー規制になる。ここからいくつか点在する駐車場に車を停めてバス、タクシーに乗り換え上高地バスターミナルや大正池に向かう訳だ。


 頭の中では満杯ではないだろうが多くの車が止まっていると見たのだが、実際の所、一番乗りに近いものがあった。


 明け方、というかようやく空が黒から濃紺に変わる時、風は穏やかで、そばを走る車のエンジン音すら静寂に聞こえる時間。


 近くの表示板に示された気温は氷点下だった。


「寒い」


 ダウンを新調して良かった。しかし三枚も重ね着した下半身は寒かった。


 タクシーで大正池へ。


「ここが実はベストポイントなんですよ」


 そう言って運転手さんが大正池のバス停より少し前の駐車スペースで止める。


 降りた先に広がった見覚えのある絶景。いや、一度見た風景だが違う。そこには一足先に冬を迎えた穂高岳の姿があった。


「大正池まで行くと、手前の森が邪魔になるんですけど、ここで止めると遮るものもないんですよね」


 夜が明ける。日が昇る。その姿は見えなくとも、穂高岳がそれを告げる。

 赤く染まる山嶺、モルゲンロートである。


挿絵(By みてみん)


「特にこの時間だと、風もないから水面が波立たないんですよ。鏡みたいで綺麗でしょう」


挿絵(By みてみん)


 一応前回の大正池から撮影した穂高岳も上げておく。気象条件という側面もあるが、その違いは一目瞭然だろう。同じ山に見えない。


 この場所はタクシーで止めてもらうか、大正池のバス停で降りて少し歩いて戻るくらいしか行く方法がない。ただ、絶対に行った方がいい。


挿絵(By みてみん)


 実際、大正池で降りると結構な人数が三脚とカメラを携えて穂高岳を撮っていた。

 かくいうこちらはベストスポットかつ穴場で撮ってきた身だ。優越感すら覚える。


挿絵(By みてみん)


 こちらは焼岳である。半年くらい前、結構な頻度で火山性地震が確認された。山頂部から静かに煙が揺蕩(たゆた)っていたが、あれからどうなったのだろうか。


 大正池から河童橋へ進む。


 歩いてみてわかったことが一つ。髪の毛が凍る。ダウンに何故か氷の塊が付着している。

 そう言えば北海道、北陸、北関東以外の人にも寒さが伝わるだろうか。


 もう一つ、この時期のこの時間だからこそ見れる現象がある。


 霧氷である。


挿絵(By みてみん)


 霧氷は凍った水蒸気が小枝にまとわりつく現象だ。朝日に照らされるとこれがキラキラ輝いて見える。


 雪こそないものの、これはもう白銀の世界ではないか。静謐と寂寥を霜が彩る。もちろんただの霜なので日が昇り次第溶けてなくなる。束の間の絶景だ。

 流石に昼時にもなると、観光客で溢れる上高地だが、この時期にこれを見ないでどうするんだと昼時に訪れたのんびり勢に小一時間問い詰めたい。


挿絵(By みてみん)


 河童橋に到着。ここまで来ると霜が溶けて白銀の世界は緑に変わる。谷間なのでなんだか暗い。


 このコロナ禍の影響もあり、外国人観光客の姿はない。河童橋もどこか賑わいが薄れていた。


 河童橋から明神池へ。


 寒さもいくらか和らいで、歩きやすい。見上げれば冬期の深い青が広がり、雲ひとつない。最高のハイキング日和である。

 天候は文句のないコンディションだが、頭には一つの考えしかなかった。


 眠い。


 考えというか、ぼーっとしてしまってどうしようもないのだ。ひたすらに眠い。視線は足元に集約されて、意識しなければ景色も見ない。

 最悪である。


 河童橋から明神池は3kmほどある。長い。眠い。若干辛かった。


挿絵(By みてみん)


 それでも明神池に辿り着くと不思議と気持ちも張り詰める。波立つことのない水面と正面の明神岳は言われずとも神聖な気持ちになる。


 二礼二拍手一礼。

 この池のように澄んだ心でありたいものだ。


挿絵(By みてみん)


 河童橋へ戻る際に雪だるまを見つけた。

 雪はないとは言ったが、深夜ごろに降った雪が残っているようで、山の斜面にあるこの場所は雪も溶けにくいのだろう。


 再び河童橋。


挿絵(By みてみん)


 おお。

 ここから見える景色が誰が何で撮ろうと絵葉書のような写真が撮れる。被写体の持つ力だけで良い画が撮れるのだ。


 個人的な話だが、最近秩父観光課の写真コンテストに入選した。作品はお世辞にも出来がいいとは言えないが、まさに秩父が好き!という気持ちが表れた写真だった。入選理由はそれだけだろう。


 最近は調子に乗って、花や紅葉などここに書くまでもないような写真を撮りに出かけている。


 閑話休題。


 朝の6時からこの場所にいるのだが、なんだかんだで時間は13時を過ぎている。なんで?いつそんなに時間食ったの?


 寝落ちしながらタクシーで再び駐車場に戻り、今回のお宿である奥飛騨温泉郷へと足を進めた。



 …いいのか?こんな感じで。今度こそただの日記だぞ?

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