「コロナに負けるな!秩父三十四ヶ所巡礼の旅2/34」
暖冬の影響で今年は随分早くに春がやって来た。気温はもう5月中旬くらいの気温を呈することもあって、近所の土手は既に菜の花尽くし、黄色いカーペットが出来上がっている。
そんなのほほんとした春の日、皆さまいかがお過ごしでしょうか。わたくしは花粉症です。
いかがお過ごしも何もないよなぁ。
年が明けてからというもの、列島を、いや、全世界をコロナウイルスが蝕んでいる。多くの感染者、多くの死者を出し、休校が相次いで、みんなが楽しみにしてたイベントも中止。僕の好きなバンドが久しぶりにライブやるっちゅうからチケット2DAYSで取ったのに行けなくなっちゃった。
観光地から人の姿は消えて、マスクやティッシュなどの消耗品の買い占め、転売、奪い合いが各地で起きている。
外に出て気分を紛らわそうにも感染のリスクを避けようと思ったら滅多に行けることではないし、僕たちはスマホやテレビを観て、政府の言うことが本当に正しいのか?ワイドショーの専門官の意見は?自分がデマに踊らされているのではないか?と疑心暗鬼の毎日を送っている。
なんとかしたいよなぁ。
そこで!僕はこの全世界の危機を救済してもらうべく!仏さまにお願いをすることにしたのである!
「案ずるな日本国民!この僕が拝み倒してやる!」
まぁ、本当はやりたかっただけです。
今回は秩父三十四か所観音巡礼という巡礼の旅をお送りする。
その前にまず巡礼について解説していこう(ウィキペディアと本を読む)。
まず巡礼と聞いて一番初めに出てくるのがやはり四国八十八か所巡礼であろうか。何か大きな願いを叶えたいとき、自分の決意を打ち固める時、ご利益が欲しい時、禊のため、自分の教え子がテストに合格できなかった罰ゲームとして全国の受験生のために校長自ら巡礼したりとその目的は様々だが、本来は修行の一環である。
もちろん僕はいつかやってみたいなぁとか思ってる。思ってるが八十八か所は車で約一週間、徒歩でひと月以上という膨大な時間とまぁまぁなお金がないととてもじゃないけど行けない。ド底辺の会社員には夢のまた夢である。
四国八十八か所の次に有名なのは百観音霊場巡礼だろう。
この百観音霊場は大きく分けて三つ。
・京都、大阪、和歌山、奈良、滋賀、兵庫、岐阜(順不同)の二府五県に点在するお寺さんを巡る西国三十三か所。
・東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨城(順に悪意はない)の一都六県に点在するお寺さんを巡る坂東三十三観音。
そして埼玉県の秩父郡だけでおさまってしまう秩父三十四か所の三つの霊場を合わせて百観音としている。秩父密集しすぎじゃね……?
もちろん見ればわかる通り、秩父三十四か所は工程が短く済むので歩いて一週間、車で行っておそらく二泊三日とかなり初心者向けの巡礼路であろう。
前々から名誉秩父市民を名乗っている僕がやらないわけにはいかないだろうと思っていたので、主におすすめされる時期である春か秋を狙っていた。今回はそんな感じです。
あっ、車でやらせてください。徒歩はしんどい。
そういうわけで3月11日。めちゃくちゃ晴れて空気も澄み渡ってる中、いつも通り秩父へ向かう。東松山あたりで迷ってちょっとロスした。理由は自分でも分からない。
時刻は午前10時。迷わなければもう少し早く着いたはずだ。ちなみにお寺さんで御朱印を貰う時は午前8時から納経所が空いてるので、もう少し早く行けばもっと回れたはずだ。
秩父三十四か所第一番は四萬部寺から始まる。長瀞方面から140号で秩父入って割とすぐに「札所一番」の看板が出るのでここは迷わず行けるはずだ。僕が迷ってないんだ。行ける。
まずは四萬部寺で巡礼の準備を整えましょう。別にやらなくてもいいんですけど。僕は形から入るんで一式そろえました。
まずは菅笠。
笠ですね。これがあるだけでだいぶ違ってきます。気持ちの問題です。いかにも巡礼感を醸せます。
菅笠には同行二人の文字があります。これはお二人様で巡礼でーすと言う意味ではありません。団体客だろうが孤独な旅路を歩もうが同行二人です。
特に四国の八十八か所では弘法大師にゆかりのあるお寺がセレクトされています。つまり、この菅笠をかぶっている間、あなたは弘法大師様と常に一緒ですよ。という意味になります。
笈摺。
白衣です。これを着るとさらに巡礼っぽいです。
もちろん白には清浄無垢という意味があてがわれますが、巡礼中に死んじゃったらそのまま葬ってもらえるっていう意味もあります。巡礼とは死を覚悟して行うものです。決して軽い気持ちでやってはいけません。死ぬから。
金剛杖。
ストックです。ありがたいことに般若心経が印刷されてます。
輪袈裟。
輪袈裟です。説明に困ります。首から下げます。お遍路感アップです。
納経帖。
御朱印帖です。秩父三十四か所専用のものもあります。各お寺の御詠歌、由緒などが印刷されていて、なんともありがたいこと。当方、語彙がないのでしばらくこの「ありがたい」が随所に出てきます。
経典。
お経のカンペです。開経偈、懺悔文、般若心経など有り難いお経が書かれています。基本的に合掌一礼した後、お経を読むというのが作法になります。一般人の僕には覚えてられないので必要かと。
納札。
願い事、名前や住所を書いて納札所に投かんします。あらかじめ書いておきましょう。
他にも頭陀袋や数珠など必要なものもありますが、僕はこの辺揃えてお値段なんと14000円でした。もっとかかるかと思ってたのに!
さらに四萬部寺には巡礼セットがあります。確か納経帖、輪袈裟、笈摺(上着のみ)、マフラータオル、経典、納札とこれだけあればいいんじゃない?って感じでお寺が用意したセット込々で6000円。これ買っとけばそれっぽさはなくとも間違いはないのでぜひに。
四萬部寺の御本尊は聖観世音菩薩。いわゆる観音様である。
観音様は人々の苦しみの叫びを聞いて助けてくださる仏さまになる。
世界はまさに阿鼻叫喚の最中だ。至る所から悲鳴が聞こえている。祈らねば。世界の声を僕が届けなければ。
宿命を背負う。人々の苦しみのために僕が動く──。
少年少女が泣いている──。
毎日誰かが納得のいかない死を迎えている──。
不眠不休で疫病と戦う人がいる──。
不安に駆られ、毎日を気持ちよく過ごせない人がいる──。
だから祈るのだ──。
「コロナウイルスを収束させてください。あと、作家になってそれだけでご飯食べていきたいんですけどどうでしょうか」
これでおそらく僕は作家になれるはずだ。
冗談はさておいて、二番の真福寺に向かう。
秩父三十四か所ではこの真福寺と五番の五歌堂にはお寺の人が常駐していない。ので二番は光明寺、五番は長興寺が納経所になっているのだ。
二番に向かう前に四萬部寺で二番から五番くらいまでの簡単な道のりを教えてもらった。
それによると二番真福寺への道のりは非常に狭い一車線の道を車で登っていかなければならないらしい。
とりあえず真福寺に向けて出発。山の中腹にあるので一度狭い路地に入ったらぐいぐい登っていく。1車線のままで。先行車が戻ってきたら回避は難しい。離合はまず無理。
そうやって登っていくと看板と柵が現れた。
『通行止』
おい。
僕がしどろもどろになっていると後ろから巡礼者と思われる車がやってきた。
なんとか上手い具合に回避は出来たけど、四萬部寺の住職さん。一番からきた人みんなハマってますよ……?
仕方がないので二番を一時すっ飛ばして三番の巡礼へ。
三番常泉寺。
ここに来て気づいたことがある。
菅笠と金剛杖いらねぇ。
まず菅笠。そもそも車で来てるので運転が大半だ。ってなると着けてるのは参拝寺のみだ。当日はそこそこの風があって紐で結ばないとまぁ取れるとれる。
んで金剛杖。
いらねぇ。そもそもパジェロミニに載せるには少々長い。あと歩いている時間はほとんどないので杖はいらない。見栄えだけだ。あと気持ちだけだ。
何故四萬部寺でセット用品に入ってなかったのかを考えるべきだった。基本車で行くのなら必要ないのである。まぁ仕方ない。これは自分の気持ちを表明するためのものだ。
必ずや結願し、コロナを収束させるのだと。
三番常泉寺。
一番から九番までは秩父市街に向かわず徐々に武甲山に近づいていく形になる。
それにしても見てよこれ。
なんでしょう。のどかだな。裏の林とか、青空も相まって時間を忘れさせる。こういうお寺は本当に時間が止まるよ。神社とはまた違った静謐。時が止まるというか、ゆっくり流れんだなぁ。久石譲が流れてる。夏休みをここで過ごしたい。
金昌寺にて御朱印を受け取ると時間は12時前。
秩父三十四ヵ所では一律12:00〜12:30は休憩時間になるので御朱印は受け取れない。なので僕もご飯タイムにする。
そういえば、ミューズパークって行ったことなかったよなぁ。
そして僕はただの思いつきで秩父ミューズパークに向かった。あの選択が地獄の始まりだった。




