「未だに風邪が治らないよ、in秩父夜祭・本祭」
秩父夜祭本祭当日。
見事な冬晴れに心躍るも体は病気。
秩父の風は冷たく、刺すように吹く。
そんな僕を置いてけぼりにして、出店は宵宮と比べ物にならないくらい出店していた。青森産うんたらかんたら、宮崎産宮崎牛ステーキ、岩手産牛タンとここは何県ですかと聞きたくなるような出店の他にも、チーズハットグ、ドネルケバブとここはどこの国ですかと聞きたくなる国際色豊かなものまである。
あぁ、分かってる。これは地元の祭りでもそうだよ。
風邪を引いたとのこともあって漂う香りの濃密さに比べて食欲はない。それに初手で脂ギッシュなものを頂く胃の持ち合わせがない。
そこで秩父のホットワインを頂くことにする。
ちなみに酒は飲めない。ワインはもっと飲めない。完全に頭がやられている。
手にとって香りを嗅いだ瞬間に何やってんだかなぁと思ったくらいだ。
とりあえず一口。
……あれ、飲める。
ワインの何が嫌いって、あの苦味と酸味とアルコール臭なのだ。つまりはワイン全否定だ。それがかなりマイルドに抑えられていて、口当たりはまろやか。ワインというよりはぶどうのお酒という感じだろうか。
これなら何杯でもってわけではないが、一杯なら普通に飲める。そう、僕はグラス一杯のワインすら飲めないのだ。
さらなる暖を求めて銘酒、武甲正宗の前に立つ。
ここでは甘酒を販売していた。コップ一杯150円と年々高くなる祭り価格に顔をしかめる僕も思わず綻ぶ価格だ。
風邪ひいた時は甘酒かっくらって寝てんのがいいんだ。決して秩父の祭りに参加すべきではない。
恐る恐る一口。
……あれ。
濃厚な酒粕。あの独特な味が嫌いという人も多いだろう。しかしこれもまたマイルド。甘さが引き立ってすごく飲みやすい。なにより体がぽかぽかする。
気づいたら僕は店内に入って酒粕1キロを購入していた。あんなに美味しい甘酒は初めて飲んだ。
秩父は酒が美味いぞ。みんな来るんだ。僕は飲めないけど。
頭痛発熱咳鼻喉の痛みから一時的に解放された僕は町内をぷらぷらと探索。本祭と言えど、本番は夜からだ。
ここからはモンタージュ形式で秩父市街のスポットをお披露目。
煙草屋。営業はしていない。
初っ端からこれか。不安になるなぁ。
しかし、この煙草屋、夜祭で貰った秩父歩きのパンフに乗っていた。どうやら秩父市街に残る昭和の香りを代表しているらしい。確かに趣がある。できれば再開するなりなんなりしてこの趣深い建物を有効活用してほしいものだ。
秩父公園橋。
あれだ。どのアニメかは知らんが秩父の聖地だ。秩父駅から歩いて行けるが傍目から見るほど近くもない。結構歩く。下には東京都民にもお馴染みの荒川が透明感を保ちながら流れている。
橋は言うほど高くもないが上を見上げると脚がすくむ。
僕は高所恐怖症というわけでもないのだが、高いところから高いところを見上げるのが怖い。下を見てもなんとも思わないのだが、見上げると怖いのだ。
以前からこの感覚の共有を図っているのだが、誰の共感を得ることもなかった。僕私はその感覚分かるよって人は是非ともコメントをしてほしい。
秩父今宮神社。
秩父市の住宅街に位置する神社。秩父霊場三十三ヶ所発祥の地とされるこの神社は江戸の頃には今宮大権現とも呼ばれていた。
権現の名の通り、境内には観音像があったりと今なお神仏習合の名残が強い神社だ。
御祭神はイザナギ、イザナミではあるが神社全体に龍神の名が強く出ている。
樹齢1000年以上とされるケヤキは龍神木の名があり、武甲山の伏流水である龍神池も清流を湛える。
もはやチチブトリップと化したこのコドクトリップの読者はお気づきだろう。
意外と秩父は龍にまつわる場所が多いのだ。
由緒も何もない三峯神社の赤目の龍はともかくとして、武甲山には龍神様がおられるとし、札所十五番少林寺付近の天ヶ池に龍が住み着き、それを封じ込めた秩父神社繋ぎの龍の彫刻。
それぞれが繋がるというわけではないが、ここもまた釈迦の眷属である八大龍王も祀っている神社である。
またこのケヤキの木はアオバズクが毎年住み着く。秩父神社に北辰の梟の彫刻があるが、梟が神格化するのもうなづけるものだ。
立地も知名度も秩父三社には及ばないものの秩父の中心にあり、秩父という土地を体現しているのは確かかもしれない。
秩父神社。
お前前にも紹介したろそれ。
写真もなんだそれ境内ですらねぇじゃねぇか。
紹介はしません。
祭りの中心でもある秩父神社ではやはり限定御朱印を配布していた。妙見様の御朱印である。
妙見菩薩は北斗七星と北極星の信仰が偶像化したものだ。ここで死兆星の名が出てきたら完全に世紀末覇者伝説だった。
あれ、ここ神社ですよね。いくら名残があるからって御朱印に仏様ってどうなのよ。
いいえ、心配いりません。
ここにおりますのは北斗七星と北極星の偶像化である妙見菩薩が神仏習合の考えから生まれ変わった、アメミノナカヌシ様なのです。神様なんです。
もう片方の御朱印には龍神様のお姿が。
武甲山の龍神様、秩父神社の妙見様。一年に一回だけ会える二人の御朱印を貰う。例大祭、ここに極まれり。
そして秩父の熱い夜が訪れる。
分厚いマスク越しに咳をしながらのお祭り。本町、上町屋台があちらこちらへと移動を開始する。
交通整理は渋谷のDJポリスさながら、拡声器を手に歩行者にゆっくり歩くことを呼びかける。当然ながら渋谷ハロウィンほど混沌とはしていないが、人の数はそれに匹敵するくらいにはいる。
それと、笑点でもお馴染みの林家たい平氏も「林家たい平」の行灯をぶら下げて町を練り歩いていた。秩父出身、自ら地元の祭りを盛り上げる気概が感じられる。芸能人といえど根っからの秩父びとなのだ。こういう地元愛を前面に出す芸能人は好感が持てる。
最終的には全ての屋台がだんご坂という急登を登り、妙見様と龍神様が逢引をされると言われる御旅所で打ち上がる花火とともにクライマックスを迎えるらしい。
らしい。
らしい……。
そう。もうこの記事を書くべきじゃないって思ってる。午後6時過ぎ、屋台が広い通りを往来するその時間、僕はカメラを構えていた。その頭がふらつき、息も荒くなる。
風邪がかなり重症になっていた。二週間たった今、ようやく咳が収まり始めたような気がしている状況だ。
あと30分後にクライマックスを迎えるならまだしも、2時間あるとなると、寒空の下にいるのは酷だった。電車の乗車時間も長いし、明日も明日で早い。風邪でふらつきながら電車乗ってみろよ。死ぬぞ。
秩父駅で名残惜しくも宵宮同様変な感覚で打ち上がる花火を見ていた。帰りの客より、これから秩父夜祭に行くために秩父駅で降りる人の方が多かった。
なんだか最近こういうのばっかだな。
来年は宵宮には参加せず、本祭をギリギリまで楽しむ所存だ。今度はしっかりとマスクをして行こう。皆様も風邪には十分気をつけられたし。
次回は東京都十社巡り。まだ行ってないですがクリスマスに東京へ独りで行くという自暴自棄もいいところの計画を立てたので年末か年明けあたりに更新しようと思います。
全然祭りの記事書けなくて申し訳ないとは思ってる。
ごめんなさい




