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コドクトリップ  作者: 上野羽美
始まりの地、鹿島・香取神宮
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第二話「小説家になりたいからお参りしたらひまわりで煽り運転in香取神宮」

 場所を変えて茨城県は鹿島市から千葉県香取市へ。地図上では割と近そうで実際近いのだが、車で約一時間かかる。ただここまでの運転で普段の距離感は失われているので、もはやどうでもよくなっていた。


挿絵(By みてみん)


 鹿島神宮、息栖神社、そしてこれから向かう香取神宮は東三社と呼ばれる神社で、はるか昔、平安時代まで遡ると神宮と名のついた神社はこの鹿島神宮と香取神宮、そしてあの伊勢神宮のみだったという。今まで聞いたこともなかった。


 息栖神社に関しては時間の都合上スルーさせて頂いた。しかし、この東三社に関しては東三社巡りなる言葉があるくらいの定番コースなので、いずれかの神社を参拝した際はついでに寄っていくとご利益がすごそうだ。


挿絵(By みてみん)


 香取神宮はいきなりそこそこ広い無料駐車場があって、参道へ続く道には茶屋やお土産屋さんもある。こじんまりとはしているが、なんとなく鹿島神宮よりもゆったりしていて好きだ。


挿絵(By みてみん)


 香取神宮もまた、鹿が眷属の神社であり、鳥居をくぐった後のゆるい勾配に鹿が彫られた石灯籠が並んでいる。


 砂利を踏みつけながら歩いていく。


 そういえば神社の参道は大抵砂利道だ。

 一度「神様に祈りに愚民どもがやってきたよ」って神様に砂利の音を立てて知らせているのかもとぼんやり思っていたが、この神社に敷かれた『玉砂利』が『御霊』を連想させるというありがちな理由や、着物がメインファッションだった昔に、着物が汚れぬよう水捌けの良い砂利を敷いているだとか、割とエゴイズム全開のがっかりする理由など様々あるようだ。


挿絵(By みてみん)


 参道の傍には趣深い池があって悠々と鯉が泳いでいる。鹿島神宮でも泳いでいた。そういえば御手洗池では現在も池に浸かる行事があるそうなのだが、その時、中で泳いでいる鯉はどうするのだろう。別の池に移されたりするのだろうか。


挿絵(By みてみん)


 本堂を見た時、こういう場所では言葉としてはあまり似つかわしくないのだがかっけぇと思った。

シックなブラックにゴールドが映える。高級感あふれる本堂は他の参拝客曰く「今年も塗り直したんだろうね」と言っていたのでむちゃくちゃ綺麗だった。


 二礼二拍一礼。日々の感謝を想う。

 毎日を生活するのは自分の多岐にわたる選択の上だが、毎日を生きるのは、それこそ神懸かり的な確率のもとだ。文字通り天文学レベルの確率で宇宙が生まれ、その中で地球という生命の息づく星が何事もなく長い長い時代を繰り返し、やがて何十億という精子の一つから僕という命が先天的にはなんの病気もなく生まれ、成長の過程で事故や病気で死ぬことなく、僕がこうして香取神宮にお参りに来たことはもはや奇跡とも呼べるだろう。


 ここに来れたことに喜びを感じ尊ぶ。それが参拝という行為に繋がるとは思いませんか。僕は今考えました。「色々とありがとうございます」と祈るのが現地での精一杯だった。


 せっかくなので本日二度目のおみくじを引いた。初詣ですらおみくじを引かない僕にとってこれは異例中の異例の出来事である。


挿絵(By みてみん)


 はい。


 極端すぎる。

 この大吉をどう解釈すべきか悩んだ。鹿島神宮にお参りしたことで運気がものすごい成長を見せたのでこれをそのまま受け取るべきか、間をとって吉ということにすべきか。もしくは鹿島神宮の神、タケミカヅチに「負け犬に用はねぇぇぇんだよぉぉぉっ」と嫌われているかの三択を選ぶべきだ。


 一番最初にしよう。

 鹿島神宮のタケミカヅチ様、香取神宮のフツヌシノカミ様。私に運気を授けてくださいましてありがとうございます。


 さて、この香取神宮にも前述した要石がある。鹿島神宮の要石が大鯰の尾を抑えているという話はしましたよね?で、こちらの香取神宮の要石が大鯰の尾を抑えていると。鹿島神宮と香取神宮は大体の距離から大きさを測定すると大鯰の大きさは一万七千メートルになります。そりゃ大地震起きるわ。掘りかえさなくてよかった。


挿絵(By みてみん)


 鹿島神宮の入り口近くから急勾配の坂を登り、要石はひっそりとそこにある。鹿島神宮より黒光りしている。誰か磨いてますねこれは。

 また鹿島神宮の要石付近でも見かけたのだが、スズメバチ注意の看板がある。

 八月に入ってから低山に行かないのは暑いのもあるし、スズメバチが活発なのも理由だ。なんなんすかねあいつらの凶暴性。バーサーカーかっての。絶対巣を守る以外の理由で生殺与奪を楽しんでるよ。


挿絵(By みてみん)


 割と見逃しがちなので注意が必要なのだが、奥宮は香取神宮に入る前に入り口がある。鳥居前の広いスペースの左側に奥宮の看板があるので、ぜひ立ち寄ろう。


 舗装された急勾配の坂は人の往来が少ないのか、蜘蛛の巣が張ってたり、草木が枯れ落ちていたりする。奥宮のイメージはこっちだ。

 急勾配の坂を登りきったところで何やらデカイ虫が飛んでいた。蜂ではなさそうだったので近寄ると、


挿絵(By みてみん)


 タマムシだー!かがやいてるね!

 初めて見たのだが、まぁ綺麗です。この色は多層構造色と言って、何層にも重なった羽が光を反射させることで緑の中に虹が見えるということだ。

 ただ飛び方は汚かった。体が重いのかなんなのか、体が下を向いたままものすごいよろよろと飛んでいた。


挿絵(By みてみん)


 その奥にある奥宮は今度こそひっそりと佇んでいる。ここがパワーの源泉。ここを寄らずして鹿島神宮を参拝したとは言えまい。


 そうしてタケミカヅチ、フツヌシノカミという強大な力を持った神の力をその身に宿した僕は世界の終焉を目論む破壊神の下へと赴くわけでもなく、テレビで見頃だと言っていた筑波山のお膝元のひまわり祭りへと赴くのであった。



 一応帰る道ではあるのだが、車で二時間かかった。茨城→千葉→茨城とあまり考えていない人の行程である。

 筑波山は標高八百七十七メートルとあまり高くはない部類なのだが、平野部にあるためなのかやたらと大きく見える。高尾山から筑波山が見えることがあると言うくらいなのだからまぁ、大きくて当然だ。

 入道雲が山の後方に覆い被さるようにして停滞しているのを見て、筑波山が筑西市を雷雨から守るために身を呈しているというアツい妄想にまで至った。


挿絵(By みてみん)


 そんな筑波山のお膝元ではあけのひまわりフェスティバルが約一週間限定で行われている。だが売店の終了時間に間に合わず、フェスティバルには参加できなかったので写真を撮るだけになった。惜しい。


挿絵(By みてみん)


 しかし、場内はそこそこ人がいて写真を撮りまくっていたので暑いのが嫌だったら少々寂しくなるがこの時間帯に来てもいいのかもしれない。

 写真下手くそな僕でも綺麗に撮れるのでかなりフォトジェニックなスポットと言える。

 ひまわりの特性上しょうがないのだが、筑波山をバックにした写真だったらこちら側を向いて欲しかった。ひまわりに言ってもしょうがない。


 帰路につく途中、本日最大の事件が起こってしまった。

 茨城県は古河市の長い道路を走っていたところ、いきなり覆面パトカーがサイレンを鳴らし、こちらの前へ出てくると案の定、止められてしまった。


 何をやらかした?


 慣れない道で何か標識を見落として致命的なミスを犯したかもしれない。速度超過?五十キロ道路を六十キロで走っていたはずだ。ネズミ捕りなら捕まることもあるかもしれないが、覆面パトカーに止められなければならないほどの速度超過ではないはずだ。

 パトカーから降りてきたおじさんは「茨城県警です」と警察手帳を見せてきた。そんなドラマチックなシーン初めてみた。


 結論から言うと違反はしていなかった。

 どうやら後ろの車が車間距離をむちゃくちゃ詰めていたので煽り運転だと出動したらしい。

 煽り運転を取り締まる際、車間がむちゃくちゃ詰まっているので煽られている側の車も止め、状況確認のために調書を取るとおまわりさんから説明があった。


 煽られていたのか。言われて気づいた。


「大丈夫でした?」と聞かれたが、大丈夫も何も煽られていることに気づいていなかった。車間距離が近かったのは言うまでもないのだがそれがイコール煽り運転だということも知らずに呑気に走っていた。


 茨城県の道路は信号が少なく、直線の道路が続くことが多い。僕が煽られた道では110番通報がたくさん入るほどに煽り運転の聖地であるらしい。

 茨城県出身の芸人だかが「暴走族めちゃくちゃいる」と自虐していたが、そのまま大人になってしまうと煽り運転が日常茶飯事にはなりそうである。


 昨今の事件から煽り運転の取り締まりが強化されているのは明白だ。これを読む読者のみなさんは車間距離を空ける側の人たちだとは思うが、何卒注意していただきたい。自分も他人もゆとりのある運転ができる道路を作っていこう。


 ……綺麗にまとまってしまった。鹿島神宮と香取神宮に寄っておきながら最後の最後煽り運転のまとめに入ってしまった。なおかつこれ以上はないほどの綺麗な決まり方だ。こればっかりはどうしようもない。


 さて、今の僕は秩父鉄道に揺られながらこの話の後半部分を書いている。

 行ってきました三峯神社。朝も早よから自転車で。

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