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コドクトリップ  作者: 上野羽美
随時更新、東京十社巡り
18/35

「随時更新予定!東京都十社巡り5/10」

 おそらくお待たせなんてしていないであろうけど、おまたせしました。


 現在なん山で展開中の瑞牆山〜金峰山から帰ったその翌々日が10月12日だった。何が言いたいかはお分かりでしょう。そう、台風19号が列島に猛威を奮った日です。


 僕がよく使う国道140号、国道299号はものの見事にぶっ潰れ、これから行こうと思っていた地域に甚大な被害をもたらした。心から復旧を願い、お見舞い申し上げる。


 こういう災害があった時にはこんな言葉を聞く。


「被災地を思うのなら自粛することを自粛しろ」


 確かに場所によってはそれどころでない場所もある。なん山的には日原地区などはまだまだ大変な生活を強いられている。

 だが、道路の被害も少なく、観光業としてやっていける状態の観光地に行くのすら自粛してしまってはいけない。


 そんなこんなで10月は三峯神社に二回ほど参拝してきた。


 三峯神社へと続く国道140号線を、通行止めが解除された翌日に行ってきたのだが、土砂災害の爪痕は生々しく残っていたし、なんなら強い雨が降る中の参拝、遠くの方から岩が高所から落ちたような音さえ聞こえた。

 おそらく人も通れない場所での土砂崩れだったのだろうが、正直あの音を聞いた時は生きた心地がしなかった。


 さて、今回はそんな三峯神社ではなく、東京十社巡りの続編である。脈絡って知ってる?


 前回は王子神社、神田明神、亀戸天神と参拝してきたわけだが、王子神社の御朱印をもらっていないため、二社を巡ったということになる。


 埼玉県側から行く場合、北区にある王子神社が起点になるだろうが、今回は午後からの出発ということもあり、一回行った王子神社は最後に回るという勝手な取り決めをし、早速勝手に起点を失った。


 もうなんでもいいや。とりあえずアクセスしやすい場所にしよう。とりあえず地下鉄を使わないとこから始めよう。


 京浜東北線浜松町駅で降りて向かうは芝大神宮。駅から10分ほど歩いた場所にそれはある。

 どこで切るかは知らないが僕の中では芝・大神宮だった。ビル群の中の巨大な境内、それを囲むような樹林というイメージがあった。


 実物はこうだ。


挿絵(By みてみん)


 鳥居があって、階段を登れば本殿があって、そのすぐ隣に社務所がある。片田舎の、毎朝老人が一人お参りに来るような神社の方がまだ広い気がする。だいたいそういう神社って謎のジャングルジムあるし。


挿絵(By みてみん)


 手水舎に関しては本殿左の植え込みの中だ。

 二礼二拍手一礼。あれ?なんか忘れてない?そう、手水である。いきなり本殿なので忘れがちだがきちんと清めましょう。


 そんなものすごく狭い境内の芝大神宮だがその歴史は古く、創建は1005年。御祭神はアマテラスとトヨウケビメである。


 アマテラスといえば、今年の天皇陛下ご即位式ではもう神様がいるとしか思えない現象が起きたと話題になった。Twitter上ではたくさんの神様の名前が並び、あの日は誰もが神様の存在を実感する日であった。


 僕はあの日、秩父にいました。あっちの方でもひどい雨が急に止んで、晴れ間がのぞいていたのを記憶しています。


挿絵(By みてみん)


 御朱印をもらうと参拝記念にしおりっぽいお守りと生姜の飴がもらえる。なんで生姜の飴?


 もちろん由緒正しいものだ。


 芝大神宮が鎮座したころ、周囲では生姜がたくさん収穫され、それを御供物にするのが定番だったからという理由である。ありがちだなぁ。


 毎年九月にはだらだら祭りという活気もクソもなさそうな祭りが行われるが、だらだらと祭りをするのではなく、だらだらと祭りをするのだ。


 ……んん?


 だらだら祭りは一週間以上、11日間かけて行われる祭りであり、この長期間をだらだらと称しているのだ。決して法被を着崩し、「えーっさ……ほーっさ……うっわ……だる……えーっさ」の掛け声とともにたまに御神輿を落とすような、不良が行う体育の授業みたいなものではない。

 このだらだら祭りでは生姜をあちこちで販売するそうだ。生姜は良いよね。僕は一時期お味噌汁におろし生姜を入れるのにハマっていた。冬は体を暖める効果もあるし、アクセントとしてちょうどいい。皆さんにも是非試していただきたい。


 閑話休題。


 ここからは先に話した通り、参拝しやすい順路を描いた地図に倣い、京急新馬場駅で降りて品川神社へ。


 品川神社は駅からすぐとアクセスがいい。大通りに面した鳥居をくぐれば長い階段が待ち構えている。


 御祭神はアメノヒリメノミコト、ウガノメノミコト、スサノオノミコトである。アメノヒリメノミコトって言いづらい……言いづらくない?


挿絵(By みてみん)


 境内は至って普通だ。何も語ることがない。これがいい。これが好きだ。


 創建1187年、歴史ある神社だ。アメノヒリメノミコトは海上交通安全にご利益がある。ビル群で見えないが、東京湾からはそれほど遠くない。


「昔はここから海が見えた」


 そう語っていたのは参拝客のお爺さんだった。なんでも品川富士を探しているそうだ。

 そう、ここ大都会港区にも富士山がある。それが品川神社の鳥居をくぐって左手にある山だ。


挿絵(By みてみん)


 御丁寧に登山道と書かれた石から階段を登って登山。品川でも登山ができます。

 さらに一合目、二号目とこれまた御丁寧に富士山をなぞらえている。


「ここにある石は富士山から拾ってきたって聞いたねぇ」


 確かに黒く、所々空気の抜けた後と思しき石は火山岩のそれだ。これが頑に品川富士と言い張る理由かもしれない。主要時間二分ほどで登頂。


 山頂では外国人の方が休んでいた。その傍らには漫画みたいな食べ方をされたリンゴの芯があった。たぶん丸かじりしたのだろう。ワイルドがすぎる。


挿絵(By みてみん)


 そうして眺める品川の町並み。とはいっても品川駅から少し離れているのであからさまな高層ビルは見えない。


 その帰路でお爺さんに尋ねられる。


「今日はどちらからいらしたんですか?」


「埼玉からです」


「……あぁ」


 5ちゃんねるの埼玉ネタで定番になっているのがこれだ。

 出張や旅行で遠方に訪れた埼玉県民が「どちらからいらしたんですか?」と聞かれた際、正直に埼玉からと言ってはいけない。「東京の方から」というのが正解だ。


 遠方の人にとって埼玉というクソど田舎の知名度は少ない。また、埼玉近辺の都県でも「埼玉から来た」という返事はどうしても会話が広げづらい。


 故に「あぁ……」という反応が返ってくる。これは必然だ。


 なので遠方に行った埼玉県民は「東京の方から」というべきである。「東京から」とは言っていないので嘘はついてない。

 埼玉近辺の都県に訪れた際はもうどうしようもないので「アゼルバイジャンから」とか適当なこと言っとけばいい。たぶん「あぁ……」って言われる。


 閑話休題。


 午後からの出発ということもあり、時刻は15時40分近くを回っていた。社務所は大抵17時で閉まるので次が最後になる。


 銀座線で赤坂見附駅へ。


 ご存知の通り、ここら一帯はエリートやマダムの街だ。誰も皆ジャケットやコートなど羽振りの良さそうな格好で街を練り歩き、都民の風景として溶け込んでいる。

 埼玉生まれ埼玉育ち埼玉在住の底辺はというとマムートの上着にモンベルのパンツだ。登山服はいいぞ。基本的に快適だ。


 一歩間違えれば浮浪者のような地味すぎる格好で降りた赤坂見附は、高層ビルやとてもじゃないけど身の丈に合わないショップばかりで完全に気圧されていた。

 なんならファミマさえ高級店に見える。


 赤坂見附から十分ほどで鳥居が見える日枝神社。その入り口からしてエリートがすぎる。


挿絵(By みてみん)


 というのも階段の脇にエスカレーターが完備されているのだ。東照宮の時に登りやすい階段とそうでない階段といろいろ言及したわけだが、究極を言えばこれだ。


挿絵(By みてみん)


 さらに手水舎ではセンサーに反応して水が出るようになっている。これについてはどこかで見たような気もするが、いずれにせよ全ての神社において標準配備ではないことは確かだ。格が違う。


挿絵(By みてみん)


 日枝神社は大山咋神(おおやまくいのかみ)が御祭神になっている。名前の通り、赤坂だけど山の神様だ。


 Twitterでも目にする機会があったのだが、御眷属が猿になっている神社だ。立派な狛犬が鳥居の脇にあるが、中に入ると猿一色。


挿絵(By みてみん)


 大山咋神が山の神様であり、猿もまた山に深い関わりを持つということから御眷属として祀られているらしい。


 お守りも猿を模したものが多く、子供守りや安産祈願、ビジネス守り、勝ち守りと都内の激しいビジネス争いを生き抜くエリート一家に重宝されそうだ。


 ここでも御朱印をもらうとしおり風守りともう一つお守りがもらえる。500円で幸せ。都内は羽振りいいねぇ。


 そんなこんなで十社巡りの半分を終えた後、時刻が17時と早い時間だったので赤坂〜青山〜渋谷区間を歩いてみた。


 完全に場違いだった。


 大通りの店舗はお手本のようなディスプレイが立ち並ぶ高級店ばかり。ランボルギーニ、ボルボ、テスラといった外車の店がここぞとばかりに並ぶ様はまさにエリートの町。パジェロミニのって喜んでる貧乏人には絵空事だ。いいもん。ランボルギーニじゃ悪路走れないもん。


挿絵(By みてみん)


 それにしても東京は良い。改めてそう思う。


 八ヶ岳や上高地もどの構図で撮っても画になると思ったものだが、東京もまたどの構図で撮っても画になる。

 それら全て自然の魅せる妙技でなく、全て人の魅せる景色だ。


 高層ビルがあれば、そこで働く人の毎日を思う。駅に並んだ人々の行先を思う。

 鞄を下げて忙しなく歩くスーツ姿のサラリーマンにその人の生活を思う。


 人口の数だけ生活の数がある。生活の数があればそこに人の思いの数がある。


 何を気に留めるでもなく撮った写真の中に、いったいどれだけの人々の暮らしや思いがあるのだろう。


 そうした暮らしの中にひっそりと神社は佇み、人々の安寧を願っている。


 ゆえにどうしようもない不安に襲われた時、急に静かな時を過ごしたくなった時、神様がそばにいることを僕たちは忘れないほうがいい。


 日本人の生活は否が応でも神様とともにある。かつて全ての人が神様に平穏を願い、供物を捧げ、それで毎日を生きてきたように、僕たち現代人にも目に見えるほどの御利益はどうあれ心の平穏が訪れるのは確かなのだから。


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