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コドクトリップ  作者: 上野羽美
随時更新、東京十社巡り
17/35

「随時更新予定!東京十社巡り2/10」

 秩父三社巡りと日光社寺、この二つの失敗点は道中車だったために面白い発見もなければ、手痛い失敗もなかったことだ。

 通常の旅で言えば成功なのだが、こうやって旅行記にするのなら出来れば美味しいところがあるといい。


 以上の理由から、というわけではないのだが、東三社巡り、秩父三社巡りとやってきたのだからなんたら巡りがしたくなって検索をかけてみた。


 出てきたのは東京都十社巡りだった。


 そもそも東京都十社とは大政奉還によって江戸が東京に、慶応が明治になった際に明治天皇がこれからの国民の安寧を祈願するために定めた神社のことである。

 内訳としては、王子神社、神田明神、亀戸天神、富岡八幡宮、白山神社、芝大神宮、日枝神社、品川神社、氷川神社である。順不同すぎる。

 昭和五十年に天皇即位五十周年を記念して、この東京都十社巡りが企画された。


 東京都十社巡りには専用の御朱印帳や地図、各社でもらえるミニ絵馬が用意されていたりと何かと手厚い。


 慌ただしくなるそうだが一日でも回れるらしいので是非やってみよう。ということで今回の東京都十社巡りに至ったわけである。


 さて、この東京都十社巡り。別に一日で周り切らなくてもいいしどこから始めても良いとされている。一応地図には線が引かれてあり、始めたところから右回り、或いは左回りに行くと参拝しやすいそうだ。




 午前九時、京浜東北線の王子駅から徒歩数分……なのだが方向音痴なのに地図を見ないで歩いたので十数分かかった。線路もビルもすぐそばの公園内に王子神社はある。


挿絵(By みてみん)


 境内に入った瞬間に周りの喧騒が遠ざかって、久々の人の群れというものに半ばざわついていた心もすっかり平穏を取り戻す。


 東京都十社のうちの一つなのだが、人はまばらだ。参拝者の中にはこれから出勤か、外回り中なのか、スーツ姿の男性が手を合わせて早々と去っていくような光景も見た。

 神社が忙しい都会の人の心の拠り所になるというのは納得がいくというものだ。


 東京に住んだことはないが、もし住むようなら僕はこういった静かな場所を探し続けるのだろう。


 王子神社の御祭神はイザナギ、イザナミ、アマテラス。いきなりすげぇの来たよ……。


 二礼二拍一礼。神社は心静かにお参りするものというが、心静かにお参りってどういうことだろう。神社参拝のブログなどを見ると、ある人は無心でお参りすると書いてある。無心で。なるほど。


 手を合わせて無心で祈りを捧げてみた。眠くなった。


 社務所でまずは件の東京都十社巡り専用ご朱印帳を貰いに行ったが、人の気配すらなかった。一応時刻としては一般的な社務所の開いている時間だ。だがやはり人の気配がない。


 御朱印帳を貰わなければ、東京都十社巡りが始まらないんだよ!!

 嘆けば社務所が開くのなら、何度だって嘆くよ。それでも開かないから王子神社を後にした。今日一日で巡り切るくらいの思いでいたのだがいきなり心を折られた。


 お次は順路で行けば根津神社になる。JR路線ではないので少々アクセスが面倒だが早速行ってみよう。

だがここで更なるアクシデントが起こる。


 ふと手を入れたポケットの中、確かに入れたはずのSuicaが消えている。唯一の鞄であるショルダーバッグの中にもSuicaがない。


 落とした。


 救いなのは今日一日分使うお金を入れなかったことだろうか。だが思いもよらぬ落し物に時間を潰し、この調子ではとてもじゃないが周りきれないと判断した僕は、計画を変更。根津神社ではなく、一個先の神田明神に向かうことにした。理由はない。気づいたら南北線ではなく、京浜東北線に乗っていた。計画ではない。慌てただけだ。


 午前10時、秋葉原駅。

 もはやホームと言っても過言ではない。そんな方もいると思う。僕もよう通った。

 故に迷うこともない。神田明神がどの辺りにあるかをパッと見て、地図内にあるよく知った店の名前を頼りに向かうことにした。


 迷った。


 なんでですかね。地図を見たら真反対に行っていた。誰かこの方向音痴を救ってくれ。


挿絵(By みてみん)


 秋葉原と御茶ノ水の間、やはり都会の喧騒から一歩離れた場所に神田明神はある。

 神田明神といえばやはりあのアイドルアニメの聖地として有名だろう。僕もファンだ。


 中でも先輩アイドルがメンバー内で虐めを受けて泣き出す主人公アイドル達に恫喝するシーンが好きだ。

「アイドルがキラキラしてるですって!?冗談じゃないわよ!!あたしらねぇ!ドブ水啜ってアイドルやってんのよ!!綺麗なままでいたいのならとっとと田舎に帰りな!!」

 数々の障害を乗り越えた先輩アイドルだからこそ、あの厳しく重い言葉が視聴者にも突き刺さる。


 最終回は特に良かった。主人公とその親友がライブ前に口論になり刃傷沙汰に発展。ラストの獄中で意味深な表情を浮かべる主人公の作画の力の入れようは凄かったし、ファンの間で物議にもなった。最早、社会化現象にもなったあのアニメの聖地である。


 すいません、本当は観てないです。


 上記は1mmもラブライブを知らない僕の持ちネタだったのだが、去年辺りに実際のアイドルでもっと酷い事件が起こったので最早ネタとして使えなくなってしまった。あの業界なんとかならないんですかね。


 まぁ、いいや。神田明神です。


 御祭神はオオクニヌシ、スクナビコナ、平将門である。神田明神は縁結びの神として知られ、境内の絵馬には……す、すげぇ。

 いや、個人のお願い事だから写真も撮ってないけどさ。一時期の鷲宮神社みたいなことになってる。好きな人は絵馬を見ているだけで一日潰せると思う。


 平日午前中ということもあり、ほとんどの参拝客が老齢の方だったのだが、その隣にごちうさの旗がはためいてるんだからシュールだ。


 さて二社目ではあるが、王子神社では御朱印も何もなかったので実質一社目になる。今度こそ御朱印帳を買って御朱印も貰ってきた。


挿絵(By みてみん)


 んん……?あれれ。これ普通の御朱印帳だな?ご丁寧に別売りのカバーまで買っちゃってヨォ。


 神田明神の御朱印が筆書きでなくて良かった。これが筆書きだったらまた参拝しなおしだよ。もう帰りたいなぁ。ぐだぐだじゃん。


 実際もう帰りたかった。個人的に失敗の限度を超えていた。地図通りの順番じゃないしSuica落とすし御朱印もらえないし御朱印帳買い間違えるし。

 基本的に短距離移動なら切符を買うよりSuicaの方が安い。短距離移動が続く東京都十社巡り故にSuicaの紛失が痛い。


 もう、次で最後にしよう。


 秋葉原から総武線に乗って亀戸駅で降りる。今度こそ地図を見ながら行った。

 駅を降りると昔ながらの商店街の並びが続いている。この辺好きだなぁと思いながら歩いていく。亀戸天神までは歩いて十数分ほど。めんどくさがりはバスを使用してもいい。大きな道路を曲がった先に亀戸天神はある。


 亀戸天神は菅原道真を祀る神社であり、学問の神様としても有名だ。受験シーズンはさぞかし賑わうのだろう。


 神社に入るとさっそく大きな池と橋が目に入る。亀戸の名から取っているのか定かではないが、亀が大量にいる。あと鯉もいる。通常境内にいる亀や鯉の数とは比べられないくらいにはいる。


挿絵(By みてみん)


 橋の上から亀を眺めていた。

 亀にとって甲羅干しは非常に大切なものである。亀は変温動物であり、体温が直接外気温に影響するのだ。故に水に浸かりっ放しだと体温が下がり動けなくなるので日当たりの良い場所で体温を上げる他にない。

 なので同じ石に亀が群がる。満席になったとしてもその上に亀が乗っかる。

 その拍子でぼちゃんと音を立てて二匹の亀が池に落ちた。乗った亀はともかく、乗られた亀の心境はいかほど。


挿絵(By みてみん)


 橋の上からは割と間近にスカイツリーが見えた。ここ、亀戸天神も例に漏れず都会の喧騒の中にあるのだが、本当に静かな境内だ。


 ゆっくりしたいな。なんか、そんなことすら思った。こんなに静かな場所があるのだから何も考えず心静かに参拝したい。一日で回ってしまおうなどと思わずに一つ一つ心静かにお参りすべきだ。


 午前中、耳には足早な足音が聞こえた。車のエンジン音がやたら激しく、急いでいるように聞こえた。

かくいう僕はせっかくの休日、そんなに急いでどこへ行くというのだ。

 こんなに静かな場所がある。暖かい場所がある。心静かにお参りする場所があるではないか。何を急いでいるというのだ。


挿絵(By みてみん)


 二礼二拍手一礼。学業の神様に祈ることはあまりない。ただ生涯学習という言葉がある。勉強しよう。流石に今から大学目指すという気も志もないが、それでも学ぶことは多くあるはずだ。


 うろうろ境内を歩いていると「ネコに餌を与えないで」の看板があった。つまりこの境内にネコが現れるのだ。

 どこかにいないかな。


挿絵(By みてみん)


 いた。

 この発見までのスピードは2コマ漫画に相当する。伊達に猫好きやってない。しばらくネコとにゃあにゃあ言い合った後で向こうがどこかに行ったので、僕も先に行くことにした。別れはいつも突然だ。


 社務所で今度こそ御朱印帳を買う。


挿絵(By みてみん)


 買えた!東京都十社巡り専用の御朱印帳だ!この御朱印帳はそれぞれのページに各神社が割り当てられているのでだんだんと埋まっていく様が堪らないのだ。


 買えた喜びもあってかベンチに座ってしばらくぼんやりした。時は流れる。一度これで落ち着こう。たぶんこのまま続けたら神社に行って手だけ合わせて御朱印もらうだけになってしまう。少なくとも僕にとっての参拝はそういうことじゃない。


 神社の空気が好きだ。都会という喧騒の中でも静謐がある事を知ればなおさら好きになった。ここだけはゆっくり時間が流れている。忙しい時の中でさえも。


 帰ろう。心安らかのうちに帰ろう。時間なんていっぱいあるんだ。いつか埋まればそれで良いじゃないか。


 かくして僕は家に帰った。まだ日も高くって電車もガラガラの時間帯に帰宅した。後悔がないから納得がいったはずだ。


 ともかく東京都十社巡り2/10が終わった。次回がいつになるかは分からないがとりあえず王子神社は土日に出向いてみよう。


 あっ、そうだ。

 亀戸天神にはお犬様がある。これはしっかりと情報を得てから行った。お犬様と聞いて見ないわけにはいかない。


挿絵(By みてみん)


 社務所付近の神楽の裏手にお犬様がある。初見では見つからないようなすごくわかりにくい場所だ。お犬様の上に乗っているのは早すぎた積雪ではなく、塩だ。どうやら塩を刷り込んで祈願するらしい。

 残念ながらこのお犬様の由緒は不明だ。なんでも戦火の後の瓦礫から見つかったもので、亀戸天神の摂末社のうちのどれかの狛犬だったらしいのだが、やっぱり確定されてない。

 そのため、亀戸天神の公式HPにも由緒不明なので載ってもいない。

 見たところ、狛犬ではなく垂れ耳の犬っぽい。お犬様なのは間違いないだろうが、これが三峯を中心とした狼信仰と結びつきがあるのかどうかというとそれはこじつけっぽい。


 それでは次回をお楽しみに。

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