魔導忍者は魔力の深淵を垣間見る 5
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている
魔力の深淵を覗くとき
その先から何が見つめ返してくるのだろうか
亜空間に展開された結界の中
雷蔵たちは輪になって座り、目をつぶる
「む!変わった手法を使うのであるな!」
「大変興味深いのであ~る」
「俺が皆を魔力の向こう側まで連れて行く」
「なるほど! ライゾー殿は他者の魔力の操作まで出来るのであるか」
『吾輩も輪の中に入れてもらいたいのであ~る』
自分だけ仲間外れ感を感じてしまい、ちょぴり寂しくなるメイザースさん
寂しがり屋のリッチなのであ~る!ショボ─(o´・ェ・`o)─ン
雷蔵は自分の魔力のみならず、白玲、イデア、ジスレア、クリスの体内にある魔力を同時に操る
ジスレアやクリスは問題ないだろうが、白玲とイデアは緻密な魔力の操作には長けていない
自力で『魔導力』を覚醒させるには、無理ではなくとも相応の時間がかかってしまうだろう
しかし、雷蔵たちは日ごろの『合力』の相互循環の鍛錬によって、全員の感覚を共有できるまでに至っていた
全員の感覚が繋がり、一度に『魔導力』の力を覚醒させる
『魔導力』への道のりは同じであったが、たどり着いた先の光景はそれぞれ違っていた
雷蔵は、暗闇の中にいた
その暗闇の遥かその先に、かすかな光が見える
そのかすかな光に近づくほどに、光は大きさを増していく
その絶大なる力も
そしてついに、その存在が明らかになる
その姿は、雷蔵が転生する前に禁術を使い招来した、光を放つ巨大な龍
『龍神』の姿だった
「遂にこの時が来たか!」
「久しぶりじゃのう雷蔵よ」
その声は馴染みのある老人の声だった
「師匠・・・なのか?」
雷蔵がそう問いかけると、龍は老人へと姿を変える
その老人は、前世で雷蔵に剣術や忍術を指南してくれた人物だった
雷蔵が伊賀の里でも指折りの忍となれたのも、この老人のお陰と言っても過言ではない
自分自身を『通りすがりの仙人』と呼び、何故に自分にいろいろと教えてくれるのか尋ねても
「唯の気まぐれじゃ」といってはぐらかす、怪しげな人物であったが、雷蔵はそんな老人を師匠と呼び慕っていた
「カカカ! 驚いたじゃろ?」
「師匠が『龍神』だったのか」
「いいや違う」
「わしらが『龍神』だったのじゃ」
「どういう意味だ?」
雷蔵は訳が分からないといった様子で、老人に問い質す
「遠い昔、お主とわしは1柱の神だったのだ」
雷蔵はかつて天界において悪神を祓う、最強の闘神であった
神と悪神の戦いは永きに渡って一進一退を続けていたが、最強の闘神である『龍神』の活躍目覚ましく、ついに神が勝利を収めることとなる
しかし他の神々は常々『龍神』の強敵であった悪神さえも消滅させる、その大きすぎる力を恐れていた
そして、いざ戦いが終わり『龍神』の力が弱まった隙を突き、人間界に封印してしまう
「人間界で人に封印された『龍神』」
「それが雷蔵お主じゃ」
しかし、強大な『龍神』の力が人間の器に収まるはずもなく、その力だけが切り離された
その力を、神々は奪おうとしたが、力に意思が宿りそれを阻み続けた
「『龍神』の力に宿った仮初めの意思」
「それがわしじゃ」
何千年もの間、『龍神』の力は、元の姿に戻ろうと試みた
「お主は転生を繰り返し、その度に『龍神』力を受け取るに相応しい器と成るように鍛えてきたが、何度やってもだめじゃった」
「さすがのわしもあきらめかけたが、その折に今のお主、雷蔵が生まれて来たんじゃ」
雷蔵は、数千年の間に転生を繰り返した器の中でも、類稀なる才能を持っていた
「じゃが器が出来上がる前に、お主は禁術を使うてしもうた」
妻の佳代、そして血は繋がっていないが、本当の家族の絆を感じていた小吉と小春
雷蔵は、その無残な死にざまを目のあたりにして、怒りのあまり禁術を使ってしまったのだ
禁術:龍神招来
おのれの身体に『龍神』を宿しその力を行使できる
しかし器として不完全だった雷蔵の体では『龍神』の力に耐えきれなかった
「一時ではあったがお主とわしは一体となった、そのおかげで、前世の記憶を残したままお主を転生させることが出来たのじゃ」
そして、雷蔵が『龍神』の力を受け入れる器となった時、再び姿を現すことにしたのだ
「わしの役目はこれで終いじゃ」
「さぁ『龍神』の力受けとれいっ!」
「だが断る!」(。-`ω´-)キッパリ!!
「え? 何でじゃ!?」
「俺が『龍神』の力を受け取れば師匠はどうなる?」
「わしはお主が力を受け取るまでの仮初めの意思」
「役目を終えれば、消え去るが運命」
「仮初めであろうが無かろうが、俺にとってあんたは師匠であり恩人だ」
「その恩人が消えてしまうくらいなら『龍神』の力などいらん!」
「馬鹿か! お主に力を返すために、わしがどれほど苦労したと思っておる!?」
「『機神』と闘うのじゃろうが! その時に必ず『龍神』の力が必要になる!」
「だったら、その時に師匠が力を貸してくれればいい」
「なんじゃと!?」(゜Д゜;)
「別に俺が力を受け取らなくても、師匠が力を貸してくれればいいだろ?」
「まぁそう言うわけで、この話は終わりだ」
「・・・勝手に話を〆てしまいおって」
「ああ! 分かった!」
「本当に! お主はこうと言い出したら言うことを聞かん不出来な弟子じゃ!」
「カカカ! 神々が奪い合ったこの力をいらんとぬかすとは、全くお主らしい」
「よかろう この力わしが預かる」
「必要になったら、わしを呼ぶがいい」
「師匠として、弟子の為に何時でも駆けつけてやる!」
「では、またの」
「ああ またな師匠」
老人は再び光る龍へと姿を変える
その光がどんどん遠ざかっていき、雷蔵の意識は現実へと引き戻される
雷蔵が『魔導力』と自分自身の力の根源を手に入れた瞬間だった
その後、辺境の町レスラトガの冒険者ギルドに1人の老人が現れる
龍仙と言う老人はその日冒険者となった
『賢者の主の師匠』と言う二つ名と共に!(゜д゜)!
『ヴィルクスとゆかいな仲間たち』が絡んで首トンされたのは言うまでもない (;^_^A
『龍神』の力を秘めた冒険者の物語が今始まる!?