魔導忍者は再始動する
いつまでも過去に捕らわれていたら
悲しんで立ち止まっていたら
前に進むことは出来ない
でも今は・・・
★冒険者生活9日目(午後)★
その夜
雷蔵は私室で、この世を去った26代目の事を考えていた
いつもは何かと理由をつけて雷蔵の部屋にやってくる彼女たちが今日は姿を見せない
出会ったばかりなのに、彼女たちは26代目とすっかり仲良くなっていた
それぞれが、26代目がこの世を去った悲しみと向き合っているのだろう
「本当にいい奴だった」
いつも軽い口調でヘラヘラしているように見えて
裏は、今後の事を考え備えていてくれていた
とても悲しいはずなのに、なぜか涙は出ない
あの時見た不思議な光景のせいだろうか
26代目と歴代の管理人たち
きっとどこかで見守ってくれている
そんな気がする
「バベル 俺が転生してきたとき、26代目の活動時間はどれだけ残っていた?」
「約3か月と16日です」
「やはりそうか」
仲間たちの『魔導骨格』にカスタムメイドの『魔導外骨格』
500体の『量産型魔導外骨格』
『魔導ドローン:アルゴス』の各国の要所を監視するだけの数の『魔導ドローン:アルゴス』の製造
いくら、『賢者の塔』の力がすごいと言っても、数日ですべてを終わらせることは出来ない
「『時だましの結界』か・・・」
「マスターには、秘密にするように言われておりました」
『時だましの結界』:その結界内に入ると、外の世界では時間が止まる
発動するためには莫大な魔力を必要とするが、『賢者の塔』で蓄えられた魔力の総量からすれば微々たるものであるし、この結界を使えば、膨大な時間を必要とする作業でも、実質時間が全くかからない
しかし、結界内では時間は進んでいく
26代目は、約3か月間その中で作業を進めていた
自分の命の残り時間を犠牲にして
そうして彼は、雷蔵たちを最高の状態でスタート地点に立たせてくれた
絶対に無駄には出来ない
「バベル 26代目が居なくなった穴は大きすぎる」
「俺には26代目のような、物事を的確に判断し、実行できる力はない」
「情けない話だが、お前の助けが必要だ」
「俺に力を貸してくれ」
「マスター 私には、計算し考えること以外取り柄がございません」
「こんな私が、マスターのお役に立てるのであれば、最善を尽くします」
「頼りにしている」
「26代目からも、今後の事について指示を頂いております」
「そちらに関しましても、順次実行しております」
「・・・全く、あいつには敵わないな」
★冒険者生活10日目(午前)★
朝になり朝食をとるために、応接の間に集まる
彼女たちも眠れなかったのだろう、顔には悲しみの影が残っている
白玲がうつむきながら、絞り出すように声を上げた
「我は26代目に力をもらった」
「それなのに何の恩返しも出来なかった」
「彼はとてもいい奴だった・・・我は悲しい」
堪え切れず涙があふれだす
戦士として恥ずべき行為
だが、悲しみをこらえることが出来ない
雷蔵が白玲の元へとやってくる
きっと、お前がそんなことでどうすると、叱られるに違いない
そう思っていた
だが彼は自分の頭をやさしく撫でてくれた
「俺も26代目がいなくなって寂しいよ」
「でも、あいつのことで悲しむのはこれで終わりだ」
「俺たちは先に進んでいかないといけない」
「あいつは、自分を犠牲にして俺たちに力をくれた」
「それを無駄にしたくない」
「改めて頼む」
「俺に力を貸してくれ!」
「なあに、水臭いこと言ってんだい」
「この体になった時から、あたいはそのつもりだよ」
いつも強気なイデア
そんな彼女の目にも涙が溢れている
『魔導骨格』『魔導外骨格』
それは26代目が作り出した最高の力
それは鉄壁と呼ばれた彼女に、更なる力を与えてくれた
彼らが長年願ってきた思いを実現させる
それだけが自分にできる恩返しだと彼女は思っていた
「初めてお会いしたのに、ずっと前から知っていたような不思議な方でした」
「26代目のお陰で、私は心も身体も生まれ変われたような気がします」
「この力で必ず、あの方たちの夢を実現させます!」
いつも気弱なイメージがあったジスレア
彼女の目には、涙と共に強い意志の力が溢れていた
「私、私 頑張るよぉ! うえ~ん!」
クリスは只々泣いた
言葉が見つからない、でも言葉なんて必要ない
本当に、誰かを慈しむ気持ちがあるのなら
今は、彼を偲んで、いっぱい泣こう
泣けるだけ泣いたら
「俺達は再始動する!」




